斜めうえ行く「オクノ総研 WEBLOG」
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2005年08月03日(水) |
道路公団の談合問題を機に徹底調査したら1万人くらいはタイーホされるぞ |
道路公団の談合問題をニュースで見ていて思う。 根本的な問題の解決がなされない限り、談合は永久に終わらないだろう。 政府や公共団体の談合問題を徹底調査したら、1万人くらいはタイーホされるぞ、と。
談合が起こってしまう理由は簡単だ。 道路公団が入札の際に価格しか評価しないからである。 価格以外の価値を評価せず、ただ入札価格のみを判断基準として落札を行うからだ。
付加価値を一切無視して価格のみで評価するのであれば、応札する側の企業としては、いかにして入札価格を下げずに済むようにするかの工作をするしかない。 採算割れまでして入札したくはない。 だけど、落札したい。 と、すると談合するなり何なりして、何とか入札価格が下がらないように工作したい、と考えるのは当然の行為だ。
価格しか評価しない、というのはどこの企業が落札しても提供される製品なりサービスが全く同一、という前提に立っている。 そこでは製品やサーヒスの質は問われない。
以前はコンピュータ業界で、1円入札が問題になっていた。 さすがに1円入札はなくなったけれど、100万円入札は生きている。 コストで数億かかろうと100万円で入札されるようなことは未だに健在。 数億円のコストに対して、1円で入札したらニュースになるけれど、100万円だったら問題なし。 100万円が問題だったら101万円で入札するぞ、と。
政府や公団系の調達情報は公開されているので、チェックしてみると面白い。 あり得ない金額で落札されている例はいくらでもある。 公正取引委員会の怠慢か何かで、問題視されていないだけで、不正金額による明らかな不正入札はいくらでも見つけることができる。 公正取引委員会と公的機関がなあなあでやっていて、いくらなんでもやり過ぎ、という際にだけ指導が入っているだけ。
僕は以前コンピュータ業界にいたので、そのやり口を書く。 まず、コンピュータ業界が1円入札のような極端な原価割れで入札するのは、要件定義フェイズである。 ボッタくるは、そのあとの開発、保守、運用、横展開。 開発を1円で受託している場合は、その後のフェイズ、保守、運用、横展開を見込んでいる場合である。
ボッタくりの手段には知的所有権や機密保持契約が使われる事が多い。 最初のフェイズで知的所有権を応札企業が留保する。 すると、次のフェイズで他の企業が応札しようにも、知的所有権を最初のフェイズを請け負った企業が留保しているので、応札できない。 機密保持契約を交わしていれば更に有利。 要件定義の情報が他社に開示できない。 要件定義書の知的所有権は自社と共有だし、機密保持契約があるので、他社には開示できませんよ。 開発、保守、運用、横展開でボッタくれる。 「握り」とか「紳士協定」ではなく、ちゃんとした契約書に基づいて後でボッタくるように仕込んでいる。
と、いうことで最初の要件定義を採算割れの1円や100万円で応札していても、次のフェイズで確実にボッタくれる。 政府、公共機関もアホではない。 それを理解したうえでの確信犯である。
政府なり公団は価格でしか評価しないので、このような事態が起きる。 これではいくら何でもおかしい、ということで、実際には総合評価方式、という価格だけではなく、価値も評価する方式をとるようにはなりつつある。 だが、その場合も価格点が大半を占めるので、提案内容がクソだろうと提示価格が安ければ落札できる。 最初に安く落札してしまえば、あとはこっちのものなので、応札する企業は公正取引委員会から目をつけられないギリギリの価格で応札する。 コスト割れは当然の行為で、公正取引委員会を怒らせない程度のギリギリの価格で入札する。
それはさすがにマズいので、予定入札価格、というものもある。 極端な安値入札を排除するためである。 予定入札価格を極端に割り込んだ入札は無効とする。 が、それはそれで、民間企業は予定入札価格情報をあの手この手で入手する(どうして民間企業が天下りの役人を受け入れるのかを考えてみればわかるでしょ)。 応札する企業はたいがい予定入札価格の情報を何らかの手段で入手している、と考えていい。 応札する企業の会議室では、予定入札価格の10,000円引きでいくか、1,000円引きでいくか、はたまた100円引きか、10円引きか、1円引きか、で作戦が延々と議論される。 億単位の入札なのに・・・。
これが日本の公共入札。 結局、日本国民の税金が無駄に使われている。 ガイジンには理解しづらいだろう。 なので、僕のように外資系企業にしか勤務したことのない人間は、公共団体との取引は避ける。 最初はコスト割れだけど、後でボッタくれますから、とガイジンを説得するだけのエネルギーが無駄だからだ。
これがニッポンのカルチャーでありますです。Do you understand? イリーガルではないのか? ハイ、違法でありますです。 タイーホされるのではないのか? 運次第でありますです。 I do NOT approve.
ああ、道路公団のトップがタイーホされちゃったよ。 同じ事をやってる人はたくさんいるのにね。
公共入札が価格重視である限り、見せしめのタイーホがたまにあるだけで、状況は変わらない。 公共入札は公開情報なので、誰か暇な人が調査してみれば1万人くらいがタイーホされる事になるに違いない。
公共入札のしくみが変わらない限り、不正は止まらない。 極端な事例とタレコミがあった場合に問題視されているだけである。
日本道路公団のトップのタイーホのニュースを見ながら、ご愁傷様、と思う。 程度の違いだけで、同じ事をやっている人間は万単位。 ただの見せしめ。 見せしめ効果が薄れてきたら、またどこかの公共団体や企業が晒し者にされるだろう。
民間企業が、価格のみでモノやサービスを調達する事などあり得ないのだけれど、政府や公共団体は、調達理由の説明責任がある。 手っ取り早い説明方法が、安かったから、なのだ。 品質が高い、って説明するのは面倒だ。 国民に対する説明責任が、逆に不公正な調達結果になっているのが現状だ。
公共入札のしくみは変わっていないし、今も同じように談合は行われている。 1万人がタイーホされる事態にでもなればこの国も少しは変わるのかな?
どうして僕がこんな事を書くのかというと、これが僕がコンピュータメーカーの営業から戦略コンサルタントになろう、と考えた大きな理由のひとつだからだ。 公共入札の場合、仕様書が示され、それに対して提案書を書き、応札価格を決める。 僕は、コンピュータメーカーの営業時代には、仕様書を元にバカ正直に提案書を書き、応札価格を見積もっていた。 だけど、すぐにそれが茶番であることに気づいた。 だって、仕様書に書いてある「××に準ずる事」の「××」がコンペティターの製品であり、当時僕が所属していた会社の製品では、ハナっから仕様を満たす事ができなかったからである。 仕様書を書いているのは、政府なり公共団体ではない第三者。 入札予定価格を決めている第三者がいる。 第三者からの情報もなしに仕様書が書けるか?下見積もりもなく予定価格が決められるか?
仕様書を書く側、入札予定価格を決める側に回らなくては、永久に僕は政府、公共団体の仕事を落札できない。 暗躍している第三者がいる。 僕は、その第三者が戦略コンサルティングファームだと、睨んだ。 暗躍する側に回ってやる。 戦略コンサルティングファームに移籍すべし。
・・・。
コンサルティングファームでも、外資系は蚊帳の外でした・・・。 コンサルティングファームは、仕様書に落ちるまでの戦略策定や仕様書策定のための企画をしているのは事実だ(役所の調達情報は「公示」されており、誰でもわかることなのでこれは機密でも裏話でもない)。 確かにコンサルティングファームは仕様書策定前の業務を請け負ってはいるのだけれど、そこまで。 プランニングと実行は同じ事業者が落札できないのが原則。 仕様書策定をした企業が、その案件を落札したら明らかに不公正。 調達情報は開示されているので、コンサルティングファームは、インチキレースに参加できないのであった。
無契約の手弁当で、コソーリと営業活動の一環として、仕様書を書かなくては、入札への参加資格が得られない・・・。 僕が子供でした。
談合とか公正取引法違反で、1万人くらいタイーホされればおもしれーのに、と思う。 こういうことって、マスメディアも司法もわかっているはずなのだけれど。 市民オンブズマンみたいな団体も、高値入札はチクるけど、安値入札はチクらない。 本当は安値入札のほうが問題なんだけど。 これがニッポンの官民のあうんの呼吸(癒着とも言う)、ってやつですな。
公共調達が価格重視、もしくは価格のみの評価である限り、談合は未来永劫続くだろう。 予定入札価格を大幅に下回る1円入札に近い応札も続くだろう。 今もどこかで談合が行われているだろう。 国内の公共調達の全てを徹底的に調査したら1万人くらいはタイーホされるだろう。
天下りが続いている時点でおかしい。 天下りの役人の民間企業に天下った後のお仕事は、入札を有利にするための工作活動。 天下りの役人に民間企業は実務能力など認めてはいない。 天下り役人どうしのネットワーク、役所とのコネクションを求めている。 今回の道路公団の事件の場合、天下り役人ネットワークの暗躍が表に出た。
公共調達、公共入札のしくみが同じなのだから、何も状況は変わらない。 談合をなくすために必要なのは、徹底的な調査でも罰則の強化でもない。
価格重視、価格のみで評価する硬直的な公共調達、入札のしくみを見直すことである。
もっと書きたいけど、暗殺されると恐いので、この辺で。
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