斜めうえ行く「オクノ総研 WEBLOG」
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2005年03月09日(水) |
「Google」と「MSN Messenger」で武装した集団を前に素手で勝てるか? |
プレゼンテーションやミーティングで話すとき、聞いている人がPCを開いている事が多くなった。
すご〜く話しづらい。
なぜなら、僕の話を聞いている相手は、「Google」と「MSN Messenger」を起動しているからである。 僕が何かを言うたびに、「Google」で僕の言っていることの信憑性、関連情報は検索されてしまう。 話を聞いている人たちは静かにしてはいるが、「MSN Messenger」で僕の話している内容について意見のやりとりを行っている。
人によっては、失礼な行為だと言うかもしれないけれど、僕は、これは良い事だと思う。 結果として、そのプレゼンテーションなり会議の参加者が得られるものが大きくなるからだ。 ボケーっと話し手の話を受身で聞いているよりもずっと良い。
だが、話す側としては、「Google」と「MSN Messenger」を使いながら質疑応答を行うわけにもいかない。 僕は素手なのに対し、相手はネット接続されている。 しかも「MSN Messenger」でつながっている集団だ。 話す側の僕に勝ち目はない。 僕が間違った事でも言おうものなら、あっという間に指摘され、会場内に広まってしまう。 間違いを音声言語で指摘してもらえれば、それで助かるのだけれど、「MSN Messenger」で「もしかしてこの人、バカ?」とかのメッセージが飛びかっていたら怖い。 いや、実際、飛びかっているに違いない。
逆に僕が話を聞く側に回った場合、僕も同様に「Google」と「MSN Messenger」を起動している。 そして、僕は疑問点や興味のある言葉が出るたびに、Googleで検索を行い、話者の話がつまらなかったり、誤認が多いと、「もしかしてこの人、バカ?」といったメッセージのやりとりを行っている。
一方通行のプレゼンテーションであれば、問題はない。 きちんと事実確認も行っているし、話のストーリーも事前に決められている。 でも、質疑応答やディスカッションの場合はそうはいかない。 インタラクティブになった途端にヤバくなるのである。 適当な返事をしてその場をしのぐ、というオヤジワザが通用しなくなった。
「Google」と「MSN Messenger」で武装した集団とのインタラクティブなやり取りは、難しい。 シーンと静まりかえっていても、情報は飛びかっている。
なので、僕は質問されたらやたらと「と、言いますと」といった逆質問をする事が多くなった。 質問した相手は、「Google」と「MSN Messenger」で武装しており、かつ集団だ。 素手の僕より速く答えにたどり着ける可能性が高い。 僕が逆質問をすると、聞き手は検索し、聞き手同士でメッセージのやり取りを行う。 結果的に、僕が答えるよりもはるかに正確に答えが出る。
これは、聞き手としては、検索すればわかる程度の事実確認の質問をしても、もはや意味がない、という事でもある。 質問するなら視点だとか、考え方について質問したほうが良い。 話す側も視点や考え方を中心にネタを提供しなくてはならない。 聞き手は話し手の言っている事がおかしい、と感じたならば、その場で発言しなくてはならない。 そうすれば、プレゼンテーションなり会議の価値は高まる。 「Google」と「MSN Messenger」で武装した聞き手と、知見はあるが素手の話し手が共同でインタラクトすることが大切なのだと思う。
僕の日常会話、世間話では、専門用語が飛び交い、会話に直接参加していない人からは「お前ら宇宙語で会話しとんのか?」と言われることも多い。 これは、Googleで検索しながら会話をしているせいである。 いくら専門用語が飛び交っていようと、自分がわからない用語が出てきたら、その場で検索しながら会話を進めているので、お互いに何の問題もない。
今や情報の較差を埋めるために必要な時間の単位は、「秒」である。 事実上、リアルタイム。 情報の質も量もあっという間に埋められてしまう。 かつてのコンサルタントは情報の質、量、時間較差で商売ができたのかもしれない。 だが、今では情報較差はキーワードを提示した時点でリアルタイムに埋められる。
そうは言いつつも、価値のある視点や考え方は、膨大な情報のうえに立脚するものである。 質、量ともに新鮮な情報を持ち、考えつづけなければ、差別化し、商売になるだけの価値のある視点や考え方にはたどり着けない。 しかも、価値のある視点や考え方を示しても、それらはあっという間に伝播し、共有化され、並列化され、付加価値を失う。 厳しいなあ。 それでも僕は、情報をできる限り出し惜しみせずにオープンにする。
でも、やっぱりPCを開いた集団の前で話すのは怖い。
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