斜めうえ行く「オクノ総研 WEBLOG」
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2005年02月07日(月) |
ボーダフォンについて斜めうえから考える |
ボーダフォンの加入者数が約6万の純減、社長交代、と立て続けにニュースが飛び込んできた。 加入者数が月間で6万人減、というのは最低記録。 社長交代は、単にモロー氏のサポートが欲しかった、という経営陣の強化が理由だと思う。 経営責任は関係ない。
で、先日書いた「グローバルマーケットと日本マーケットの乖離 〜携帯電話編」のなかで、苦しんでいる実例がボーダフォンである。
これから2、3年間は日本の携帯電話はグローバルマーケットとは全く異なる独自進化を続けるが、その先は、グローバルとの乖離は小さくなっていく、と僕は考えている。 その中で世界制覇に最も近いポジションにいるのがボーダフォンである。
現実には、ボーダフォンの加入者数はどんどんと減り続けている。 ボーダーフォンはグローバルキャリアの強みと弱みのなかで、もがき苦しんでいる。 日本の独自に進化した携帯電話文化と、グローバルの携帯電話文化の狭間。 うまくやれば、スケールメリットで携帯電話端末の製造コストを下げられるし、グローバルキャリアとして、世界共通サービスを提供できる。 だけど、現在は、日本の携帯電話文化があまりにも独自進化を続けてしまっている。 日本と日本以外の地域での携帯電話文化の違いがあまりにも大きい。
ボーダフォンが年末に発表した3G携帯電話のスペックを見ていくと、日本仕様とグローバル仕様の中間的なモデルであることがわかる。 だが、現在の日本のユーザーからすると、ボーダフォンの携帯電話端末、サービスレベルはともに受け入れがたい。 これは、日本の携帯電話事業が独自進化モデルであり、グローバルモデルから乖離している事から起こってい現象である。 ボーダフォンは、日本仕様とグローバル仕様をミックスさせた端末を出してきた。 グローバル仕様ではなく、日本仕様とのミックス。 それでも日本のユーザーは受け入れなかった。 日本の携帯電話マーケットは、現在、グローバル化ではなく、独自路線を爆走し、先鋭化させている真っ最中だからだ。
僕の読みが正しければ、数年後、日本とグローバルの携帯電話マーケットの乖離は縮小する。 ナンバーポータビリティーの導入に合わせて、日本の携帯電話キャリアは、囲い込み策として、今以上に独自路線の強化に向かう。 ナンバーポータビリティーの導入後は、キャリアの乗り換えを容易にするため、ユーザー側から、端末、サービスの共通化の圧力がかかる。 携帯電話キャリアは囲い込み戦略を取ろうとするが、そこに既存のキャリアではない、別の勢力が台頭してくる。 その勢力は、ユーザーがキャリアを乗り換えても、同様のサービスを継続させることをウリにするだろう。 結果として、携帯電話キャリアは対応を迫られ、キャリア間の端末、サービスは共通化の方向に向かう。 端末のSIMロックははずれる。 携帯電話マーケットは垂直統合から、少しずつアンバンドル化され、バリューチェーンは解体される。 そして、その先にあるものは、グローバルでほぼ共通化された事業構造であり、端末、サービスである。 ちなみにその場合、通話料、通信料は下落するが、端末価格は一挙に高くなる。
その時代、これから数年後の携帯電話マーケットにおいて、最も優位に立つ可能性があるのが、ボーダフォンである。 だが、現在の日本の携帯電話マーケットは、共通化ではなく、各携帯電話キャリアが先鋭化、独自進化を遂げているタイミング。 ボーダフォンの強みが生きてくるのは、これから数年後の世界だ。
数年後のボーダフォンの本来の強みが生きてくる時代まで、ボーダフォンはどのような戦術で戦うのか? 現在の戦況は、ボーダフォンにとって、とても苦しい。 今はボーダフォンにとっては、攻めの時期ではなく、守りの時期だ。 攻めるには、時期が悪い。 ここで攻めてはならない。 あくまでも守りをかためることが重要だと思う。
僕は、今はドコモユーザー。 僕の「占い」が当たったならば、数年後にボーダフォンに乗り換える。 ボーダフォンには、僕が乗り換える数年後まで、何とか持ちこたえて欲しい。
でも、よく考えてみたら、バリューチェーンが解体されたら、携帯電話キャリアは、ネットワーク部分しか持っていないんだよな・・・。
■ボーダフォン、約6万の純減 http://www.itmedia.co.jp/mobile/articles/0502/07/news038.html ■苦境のボーダフォン、社長交代の真相 http://www.itmedia.co.jp/mobile/articles/0502/07/news072.html
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