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2004年09月03日(金) 確信犯としての偏向映画「華氏911」

「華氏911」を観てきた。
平日の朝イチの回だったせいか、客席は60代以上の老人ばかり。
こんなに老人だらけの映画館は初めてだ。

映画の内容は、「ブッシュはアホでマヌケ」である、というマイケル・ムーアの個人的な視点で描かれている。
ブッシュをいかに「アホでマヌケ」であるか、という点に徹底的にこだわった映像表現。
お笑い的表現で始まり、少しずつシリアスな内容へと話は進んでいく。

映画のなかでは、ブッシュとビン・ラディン一族とのつながりや石油利権について触れられているが、日本人の僕が知らない情報はほとんど何もなかった。
日本に住み、日本語のメディアから得られる情報以上の「ファクト(事実)」は出てこない。
米国の知られざる暗部を暴露する、といった内容ではない。
情報量としては日本のテレビの2時間程度の特集番組とそう変わりはない。
本来なら映画ではなく、テレビで放映すべき内容だと思う。
マイケル・ムーアはなぜ、「映画」というメディアを選択したのだろう?
僕はテレビのほうが訴求力があるように思う。

マイケル・ムーアが本当に描きたかったのは、「反ブッシュ」だけではない。
映画の後半に出てくるブッシュの「持てる者とさらに持てる者」という言葉。
マイケル・ムーアの武器としてのレンズが向かっているのはブッシュだけではなく、マイケル・ムーアを含む全ての富める米国人である。
マイケル・ムーアは「『僕たち』加害者」と言う。

この映画は徹底してマイケル・ムーア個人の視点であり、偏向している。
その偏向した視点を前提として鑑賞するのがこの映画の見方だ。
一応ノンフィクションではあるものの、マイケル・ムーアのフィルターが強くかかっている。
そういった意味で、テレビのような公共メディア(公共の電波を使用している)では描きにくい内容なのかもしれない。

「華氏911」の内容が偏向している事については、それはそれで良いと思う。
そもそも日本のメディアにだって、「客観報道」などというものは存在しない。
記者やディレクター、デスク、スポンサーによって「主観的に編集」されたものである。
全てのメディアはもともと偏向しているのだ。

マイケル・ムーア、「華氏911」は「確信犯として」偏向しているところに存在意義がある。

アホでマヌケなアメリカ白人 マイケル・ムーア (著)
アホの壁 in USA マイケル・ムーア (著)
アホでマヌケなマイケル・ムーア




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