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2003年10月30日(木) 人間ラジコンの事業性評価とビジネスモデル

最近は企業の基礎研究もリストラ続きである。
たまに新聞などで企業経営者の「基礎研究の予算は企業の将来にとっての生命線なので聖域だ」、みたいな記事を見かける。
大ウソである。

確かに基礎研究の予算はなるべく削らないように努力している企業が多いが、実際には研究テーマの選定が厳しくなっている。
いわゆる「基礎研究」の予算は削減され、手っ取り早くお金になる「製品開発に近い研究」に予算を割くようになっている。
「研究開発」の「研究」の予算が厳しくなり、「開発」にシフトしている。
研究テーマの選定の際、将来の事業性を厳しく問われることとなり、商売になりそうもない研究テーマは認められないのである。

なので、僕のところにも、ワケのわからない基礎技術の事業性評価の仕事が来ることがたまにある。
「基礎技術」であって「応用技術」ではないので、一体何に使うのかさえ良くわからないような技術である。
そのワケのわからない基礎技術の事業性を評価し、将来のビジネス戦略を策定して欲しいという。

例えば、「人間ラジコン」みたいな技術である。
「人間ラジコン」とは人間の両耳の後ろに電極をつけ、微弱電流を流すことにより、人間を無意識下でコントロールしよう、という技術である。
「後方からクルマが近づいてきたのをセンサが検知し、これを回避する方向に誘導したり、携帯電話のGPSと連動させることで小さい画面を見ながら歩かなくてもよいようにする」といった応用方法が想定されているらしい。

僕のところには、この「人間ラジコンレベル」の技術の事業性やビジネス戦略の策定の仕事が来てしまうのである。
研究者としては、高い事業性が見込まれ、完璧なビジネス戦略を持ち合わせていなければ、予算が削減され、最悪は研究も中止となってしまうので、必死である。

僕は立場上、「事業性は見込めないので、研究は中止すべし」という答えは出せない。
「事業性の評価」といいつつ、いかにして事業性を強引に高く見積もるか、が求められているのである。
仕事の進め方としては、そのワケのわからない基礎技術を応用した製品やサービスを死ぬ思いで無理やりひねり出す必要がある。
基礎技術は基礎技術に過ぎないので、単体では事業性はない。
よって、ワケのわからない応用製品やサービスをいくつも考え、かつそれらが儲かる、ということを証明しなくてはならないのである。

人間ラジコンの記事を見て、この事業性評価の仕事が来たら困るなあ・・とフト思った。



■人間ラジコン
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/event/2003/10/29/940.html




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