斜めうえ行く「オクノ総研 WEBLOG」
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2003年08月10日(日) |
携帯電話のインセンティブモデルの廃止されればユーザーもキャリアもハッピーになれる |
地上波デジタル放送を受信可能な携帯電話の試作機の発表が相次いでいる。 KDDI、NECに続いて、三洋が地上波デジタル放送を受信可能な携帯電話の試作機を公開した。 携帯電話は依然として、とてつもない速度で進化を続けているのだけれど、最近は通信トラフィックに関係のない進化が多い。
携帯電話は携帯電話メーカーではなく、携帯電話キャリアから提供される。 P505はパナソニック、N505はNEC、SO505はソニーエリクソンが製造しているけれど、提供元はそれぞれのメーカーではなく、NTTドコモである。 NTTドコモにとって、通信トラフィックに直接関係のない携帯電話の進化はおもしろくない。 携帯電話の製造コストは上がる一方だが、それがトラフィックに結びつかない。 トラフィックが上がらなければ、NTTドコモの増収にはつながらない。 単に携帯電話のハードウエアの製造コストが上昇し、NTTドコモの補助が増え、収益を悪化させているだけである。
一方で、他の携帯電話事業者との競争を考えれば、機能の強化は避けられない。 携帯電話キャリアは自分達の直接的な収益に結びつかない、機能の強化競争に陥っている。
僕らのような利用者にとってみれば、携帯電話の機能強化はありがたいことだ。 しかも、メガピクセルカメラにしても地上波デジタル放送の受信機能にしても、通話料がかかるわけではない。 通話料が余計にかかるわけでもない僕らユーザーにとってはありがたく、通信キャリアにとってはハタ迷惑な機能がどんどん強化されているのである。
日本もそろそろ、アンバンドル化を本格化させるべきだと思う。 アンバンドル化とは、通信インフラ、プロバイダ機能、コンテンツ課金機能、携帯電話端末、といった携帯電話ビジネスの垂直統合されたバリューチェーンを解体することである。 携帯電話のハードウエアは今後、通信とは直接関係のない機能が進化していく。 携帯電話には「持ち歩くと便利な機能」がどんどん付加されていくだろう。 「持ち歩くと便利な機能」は必ずしも通信とは関係がない。 今のところはキャリア間の健全な競争により、通信トラフィックに関係のない機能の進化は続いているが、いつかキャリアはアホらしくなって、通信トラフィックに関係のない機能の追加は止めるときが来るだろう。 今の携帯電話の進化競争は単なるチキンレースでしかない。
でも、僕ら消費者は「持ち歩くと便利な機能」がどんどん携帯電話に付加されて欲しい。 と、なれば携帯電話機器の販売をキャリアから切り離すしかない。 いずれキャリアは、トラフィックに関係のない機能追加を止める時が来る。 そのとき、携帯電話(というかその時はもはや電話つき○○かも知れない)のインセンティブモデルは素直に崩れるべきである。 インセンティブモデルが崩れれば、携帯電話機器そのものの価格は上昇するが、通話料そのものは下落するはずである。 それが、透明性の高い、本来の携帯電話ビジネスのカタチだと思う。
インセンティブモデルは携帯電話の普及初期には有効に機能した。 でも、ここまで携帯電話が普及してしまったら、もはやインセンティブモデルの存在価値は何も無い。 携帯電話機器の販売を携帯電話キャリアから切り離し、インセンティブモデルを廃止すること。 キャリアもユーザーも幸せになれるはずである。
■三洋、地上デジタルTV対応携帯電話を開発 http://www.zdnet.co.jp/mobile/0308/08/sanyo.html
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