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2003年04月06日(日) 手塚治虫の鉄腕アトムとネグロポンテのアトム

鉄腕アトムの放送が始まった。
見事なレトロフューチャーだ。
鉄腕アトムで描かれている世界は2003年である。

1960年代に夢想されていた2003年の世界。
鉄腕アトムで描かれている2003年の街並みは、僕達の世界と似て非なるものである。
高度成長の夢と冷戦時代の中で描かれた未来。

1980年頃から近未来の描き方は変わった。
リドリースコットの描いたブレードランナーに代表される酸性雨のなかのダークな近未来。
僕にとっては鉄腕アトムの世界よりもブレードランナーで世界のほうがずっとリアリティーがある。
ブレードランナーを初めて観たのは中学生の頃だったと思う。
2003年の渋谷も新宿も秋葉原も見事にブレードランナーだ。
僕はJRの渋谷駅から井の頭線の渋谷駅に至る通路から見えるハチ公前の景色が最もブレードランナーだと思う。
百軒店に行けば「ふたつでじゅうぶんですよ」と言われるに違いない。

鉄腕アトムを見ていて、ふとネグロポンテの「アトム」を思い出した。
鉄腕アトムとは何の関係もない。
1990年代の中頃から今までのテクノロジーはネグロポンテの言うところの「アトム」の世界ではなく、「ビット」の世界で進化を続けてきた。
ネグロポンテは90年代半ばに「アトム」から「ビット」へ、と叫んでいた。
ネグロポンテの言う「アトム」とは原子で構成される、いわゆる「リアル」の世界の事。
そして「ビット」とはいわゆるバーチャル世界。
目には見えない「ビット」の世界。
ここ最近の現実のテクノロジーの進化は「アトム」なリアルの世界よりも、目では見ることのできない「ビット」の世界のほうが進化の速度は速かった。

テクノロジーの進化が人間の機能の拡張であるとすれば、僕達は「手」や「足」といった筋肉組織を進化させることよりも、「目」「耳」「口」そして「脳」といった神経系統を進化させることを選んだ。
目には見えない神経系統。
現在の世界の姿は僕ら自身が選んだ結果の未来。
僕らは神経系の進化を選択した。

ところが、これからは「アトム」の世界の逆襲がはじまる。
新たな未来へのステップは「ビット」から「アトム」への回帰だ。
これまで停滞してきた「アトム」の世界の進化が再びはじまる。
そして、「アトム」と「ビット」の世界は融合へと向かう。

ユビキタスという言葉は「アトム」と「ビット」が融合した世界を指す。
「アトム」と「ビット」が融合したとき、また新たな進化が始まる。
これから始まるユビキタスへの進化とは「ビット」の世界が「アトム」世界へ侵攻することを言う。
アトム(リアル)の世界とビット(バーチャル)の世界は融合する。
ユビキタスとは、神経系統としてのセンサーや肉体としてのアクチュエイターが世界のあらゆる部分に張り巡らされ、ネットワークで接続され、新たなる環境としての世界が構築される事だ。

ロボットの世界のアトムの実現はまだまだずっと先のことだけれど、ネグロポンテの「アトム」の世界と「ビット」の融合した世界ははすぐそこにある。




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