斜めうえ行く「オクノ総研 WEBLOG」
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2003年02月25日(火) |
ポストITなどと言ってるIT音痴は救いようのないアホ |
最近、IT嫌いというか、反ITみたいな人が増えているような気がする。 世の中がIT、ITと騒がしいので、ちょっと先端を気取ってみたい人は、反ITを装ってみたりする。 ビジネス雑誌でも、ITネタの持込はお断り、の編集部もあるようだ。
戦略系のコンサルタントの場合も新卒や中途でも入社して間がない人間は概してIT嫌いである。 新人コンサルタントには、戦略コンサルタントなんだからシステムのような下流はにかかわりたくない、という妙な意識がある。 プロセス系のプロジェクトやシステムが関係するようなプロジェクトは若者には概して人気がない。 「ザ・コンサルタント」的なピュアな戦略プロジェクトに入りたがる。
曰く、「ITだけで何でも解決できるわけじゃないでしょ」、「システムを入れただけで企業が改革できるなんてことはありませんよ」。 ごもっとも、その通りです。 ITだけでは何も解決しません。
でもね。 戦略を立て、実行する際にはITは不可欠なのですよ。 最初にITありきが駄目なのはおっしゃる通りなのだけれど、戦略を立てた後の実行フェーズに移ったとき、ITを無視して実行できる戦略オプションは少ない。 イマドキのビジネスの実行フェーズにはITは不可欠。
きちんとした戦略を立てる。 そのうえで、戦略を実行するためにシステムを構築する。 ITを抜きにして戦略は語れない。 確かに、はじめにITありきで戦略を立てるような困った風潮が目に余るのは確かなのだけれど。
コンサルタントはITからは逃げられない。 システムの事を全然知らないコンサルタントは、たとえ戦略コンサルタントであったとしても生きていけない。 昨今は戦略コンサルタント凋落の時代と言われるけれど、戦略コンサルタントが凋落している理由はシステムを軽視し、システムの言葉を理解できず、戦略が実行に繋がらなくなったからだ。
IT抜きでビジネスを語れるのであれば。勝手に語ってもらえば良いのだけれど、無理してまでITを避けることはない。 ITに頼るのは安易だ、などという妙なプライドを持ってもしかたがない。 企業の課題が解決されれば、手段は何でもいい。 ITを使わなくても良いのであれば、それでも構わない。 ただ、今やITを抜きに語れるビジネスはほとんどない。
僕は戦略コンサルタントになる前は、コンピューターメーカーで営業をやっていた。 コンピューターメーカーの営業の仕事は、やり方は違えど戦略コンサルタントと非常に近い。 コンピューターメーカーの営業と戦略コンサルタントの異なる点は、システムが唯一の落としどころか、システム以外のオプションがあるかの違いである。
コンピューターメーカーの営業はシステムの売り子としてイメージされるような営業活動が仕事の中心ではない。 コンサルタントと同じように、企業の課題の解決策を考えるのがコンピューターメーカーの営業の仕事である。 課題の解決策として、その企業に最適なシステムを答えとして出すのが、コンピューターメーカーの営業。 今のシステムはコンサルティング抜きでは「絶対に」売れない。 システムの営業はコンサルタントとしての能力がなければ生き残れない。 コンサルティング営業などというレベルではなく、コンサルタントそのものでなければならない。 大企業担当のシステム担当営業は課題解決ができなければ、もはや営業とは言えない。 コンサルティングファームのコンサルタントと同等かそれ以上のコンサルティングスキルが必要。 システムが課題解決のツールである限り、システムを売る営業は顧客企業の課題を解決できるだけのスキルがなければならないのだ。
かつての僕はシステムの営業をやりながら、いつの間にかコンサルティングが本業のようになってしまっていた。 深く顧客企業に入り込めば入り込むほど、営業というよりもコンサルタントになってしまう。 巨大で複雑なシステムを売り込もうとすればするほどコンサルタントになってしまうのである。 僕は営業色が薄れ、事実上のコンサルタントそのものになってしまったとき、コンピューターメーカーを退職し、戦略コンサルタントになった。
退職した理由は、ある日上司から「お前のやっていることは営業じゃない。コンサルタントだ。コンサルティングをしたければ、コンサルティングファームにでも行け」と言われたからである。 今となってはちゃんちゃらおかしい。 僕の以前いた会社はその後、コンサルティングファームを買収した。 しかも、僕が退職直前に所属していた事業部の事業部長が、そのコンサルティングファームの社長。 時代は変わるものである。 コンサルティングなんてどうでもいい、とか言ってたくせによ。
戦略とシステムのハザマにいると、両者のギャップは確かに大きい。 同じように企業の課題解決という目標を持って仕事をしているのにもかかわらず、話す言語が全く違う。 システムの人間はシステムの言語で話すし、戦略の人間は戦略の言語で話す。 システムの人間はビジネスを全て詳細に細かいところまで定義したがるし、戦略の人間はビジネスを抽象化したがる。 僕は両者の間に立って通訳となる。
システムとビジネスのギャップは実は大きい。 IT嫌いの人にはきちんとITの勉強をして欲しいし、システムの人にはもっとビジネスの勉強をして欲しい。 僕は「ITをビジネスの言葉で語ること」が一番大切だと思っている。 ITをビジネスツールとしてキチンと認識したうえで、ビジネスの言葉で語ること。
「ポストIT」とか言って、IT嫌いの先端人のフリをしようとしているアナタ。 アナタは救いようのないアホだ。
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