斜めうえ行く「オクノ総研 WEBLOG」
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2003年02月22日(土) |
企業は株価へのインパクトをもっと意識するべき |
パートナーから「今のプロジェクトが失敗したらどのくらいのインパクトがあるのかなあ?」と聞かれた。 「ヘボったら株価が下落して、時価総額へのインパクトは大きいですよね」 「それってどのくらい?」 「株価が10円下がっただけでも、XXX億円くらい時価総額が下がりますね」 「うへーっ」
何らかの企業戦略が失敗して、収益を失う事は当たり前なのだけれど、それ以上に株価の下落が企業に与えるインパクトは大きい。 戦略そのものの成否だけではなく、戦略を市場がどう受け取るか、だけでも株価は大きく動き、企業価値に対しては大きな影響を与える。
例えば、この間のセガのサミーとの合併発表。 合併発表のあど、セガの株価は一気に下落した。 約200円の下落。 時価総額で計算してみると、350億円。 あの発表でセガは350億円の企業価値を失ったのである。
セガ程度のそれほど企業規模、時価総額の大きくない企業であっても、数百億円のインパクトがあった。 これがさらに巨大な企業であれば、数千億円レベルのインパクトも珍しくはない。 昨今の金融機関の奇策に対する市場の反応は凄まじい。 市場はバカではない。
企業が行う不用意な発表や不祥事による株価へのインパクトは時価総額で考えると、予想以上に大きい。 その企業の数年分の利益など簡単に吹っ飛ぶ。 企業トップの発言だけで、数百億円の時価総額下落など日常茶飯事だ。 記者会見での社長のちょっとした一言が簡単に数百億円のインパクトとなって返ってくることもある。
企業の広報、IR担当者はそのことをどの程度理解しているのだろうか。 もちろん株価を気にはしているだろうけれど、自分達のちょっとした判断ミスが簡単に数百億円のインパクトを与えている事をどこまで意識できているのだろうか。 企業の戦略そのものの価値が重要なのはあたりまえのこととして、その戦略の伝え方、企業からのメッセージの発信のしかた、市場とのコミュニケーションの巧拙が莫大な金額的インパクトを持つ。 企業が市場との対話に失敗すれば、そこでは数百億、数千億のペナルティーが科される。
株価の決定要素は基本的に「企業が将来生み出すであろうキャッシュフローに対する期待値」である。 株価が企業の将来の業績予測に基づくものなのであれば、企業は業績予測を正確に市場に伝えなければならない。 企業の業績が事前の業績予測に基づく市場の期待値を上回れば株価は上昇し、期待を裏切れば株価は下落する。 市場はサプライズを好まない。 あっと驚かされる事が嫌いだ。 市場は企業の事前業績予測が、できる限り正確であることを求める。 当初の業績予測を下回れば、株価は大きく下落する。 そして、業績下方修正が続けば、その企業は市場からの信頼を失い、株価は更に下落する。 業績予測のブレが大きいとその影響は数百億、数千億のペナルティーとして返ってくる。
企業は自社の状況をきちんと正直に、かつ正確に市場に知らせる義務がある。 広報、IRの対応は想像以上にインパクトが大きい。 同様に記者会見やメディアでの社長のコメントのインパクトも大きい。
これらの市場とのコミュニケーションの巧拙が企業の収益の数年分にも相当することをきちんと理解してほしい。 企業は、戦略を決定、実行する際にも株価へのインパクト、市場への影響をもっと意識すべきだ。
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