斜めうえ行く「オクノ総研 WEBLOG」
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2003年02月21日(金) |
四半期決算開示義務化は企業と投資家の対話促進剤 |
四半期決算開示が4月から義務化される。 世界中の主要国で四半期決算開示が義務付けられていなかった国など日本くらいのものだ。 日本でもマトモな会社は既に四半期決算開示は当たり前の事になっている。
たまに「四半期決算開示」ではなく、「四半期決算」についての議論をしている人がいるが、義務化されたのは「四半期決算の開示」。 決算開示の義務化であり、企業内での決算そのものは四半期どころか、月次、週次で行っている時代だ。 企業はそこまで怠慢ではない。 年に一回しか自社の業績を把握していない企業など、あるわけがない。 あるとしたら・・・恐ろしい。 なので、四半期決算開示はIRの問題である。
四半期決算開示が義務化されるということは、企業業績が3ヶ月単位で投資家から評価されるということだ。 米国企業は短期的な業績ばかりを重視して、長期的な視野で企業運営をしない、といわれる。 四半期決算なのだから3ヶ月で結果を出さなければならない。 四半期の決算の結果に投資家は右往左往する。 企業は四半期の決算の数字作りに奔走する。
そこでは季節変動や長期的な視点は排除されがちになる。 1年間というスパンのなかで、帳尻を合わせる、といった経営が困難になる。 だが、企業が3ヶ月ごとに安定した収益をあげ続ける事はなかなか難しい。 業態によっては業績が季節によって変動する場合もある。 例えば、ビールは夏にたくさん売れるだろうし、暖房器具は冬のほうが売れるだろう。
一般的に四半期決算になれば3ヶ月ごとに安定した業績を求められるようになりがちだ。 季節的な要因やビジネスモデルの違いを、きちんと投資家に説明することによって、投資家の理解を得る事もできるけれど、基本的には3ヶ月単位で業績が安定しなければならない。
企業は、業績について定量的な数字を発表するだけではなく、定性的な要因についての詳しい説明を行う必要が生じる。 企業はそのような季節要因や長期的なビジネス計画についてもきちんと投資家に対して説明する義務がある。
例えばゲーム業界。 大作を3年に一回しか出さないゲーム企業があったとする。 3年に一度、収益が大きく伸びる。 それ以外の時期の業績は低い。 この企業は3年に1回しか業績の高い年がないが、それはそのようなビジネス形態なのだ。 それが悪いというわけではない。 もちろん、複数のゲームを並行して開発し、ポートフォリオと業績の安定をめざす必要もあるけれど。
僕は米国的な3ヶ月単位で数字の帳尻合わせをするような企業経営を行う必要があるとは思わない。 3ヶ月単位の数字作りに奔走する結果、長期的な収益を失う事になるとすればなおさらだ。
企業はきちんと投資家に説明(IR)を行えば良いのだ。 企業は投資家に対して、自社の決算結果について、誤解を招く事のない様にきちんと説明すること。 自社が長期的な視点で企業を運営しているのであれば、そのことを理解してもらえるように努力すること。 現在は投資の時期で収穫の時期ではない、ときちんと説明すれば良いのだ。
そこにウソやごまかしががあれば一気に投資家の信頼を失う事になる。 正直に投資家に企業の業績を開示すること。 開示義務のある項目だけではなく、できる限り詳細な情報を開示すること。 四半期決算開示の義務化は企業に更なる積極的なIRを求める。
投資家は投資家で、企業の本来の業態をきちんと理解したうえで業績評価をすべきだ。 短期的な数字だけを見て企業を評価してはならない。 本来の企業の状態を読み取る努力をすべきだ。
四半期決算の開示は企業と投資家との対話促進の起爆剤となるはずだ。
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