斜めうえ行く「オクノ総研 WEBLOG」
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2003年02月14日(金) |
企業合併と株価の関係(セガとサミーを考える) |
セガとサミーの合併が発表された。 http://www.nikkei.co.jp/news/main/im20030213AS3K1303413022003.html
セガはゲームメーカー、サミーはパチスロメーカー。 セガは家庭用ゲームのイメージが強いが、実際にはゲームセンター向けの事業で収益を稼いでいる。 カジノ構想をにらんだ合併と捉える事ができる。
僕はこの合併によってセガの株価は上昇、サミーの株価は下落、と直感的に思った。 財務的にはセガのめちゃくちゃなバランスシートをサミーが泥を被って救済することになる。
しかし、マーケットの反応は違った。 両社ともに株価は激下げ。 合併発表の翌日、セガは-8.44%パーセント、サミーは-7.69%パーセントと大きく下げた。 まさか合併発表の翌日に株価がここまで下がるとは思わなかった。 合併比率がわからないとは言え、少なくとも財務的にボロボロのセガにとってサミーは救世主だと思うんだけど。
セガが下げた理由の推測 ・事実上の吸収合併であると捉えられた ・セガは事実上の解体か?との憶測 ・家庭用ゲームから業務用、カジノ向けに経営の軸足を移すと捉えられた ・97年のバンダイとの合併破談の連想
サミーが下げた理由の推測 ・財務的にボロボロのセガの吸収による財務体質の悪化 ・セガ内部のゴタゴタを背負い込む事による今後の経営への悪影響 ・情に流されたとしか思えない経営判断に対する市場の抗議
サミーにとってセガを吸収することのメリットはセガのブランド力でしかない。 カジノ構想をにらんで、セガのアミューズメント事業の強みを得たい、という理由もあるのだろうけれど。 基本的にはマイナス要因のほうが多いと思われる。
合併比率がまだ不明なのだけれど、セガもサミーも上場企業なので。合併比率はほぼ株価の時価総額で決定される。 そのうえに「のれん代」と呼ばれるブランド代、プレミアム分が加算される。 サミーはセガの時価総額に対していくらかの「のれん代」を上乗せして合併比率を決定する事になるのだろう。
ただ、セガの適正株価、時価総額は企業価値評価の理論からは計算できない。 企業価値とは「将来その企業が生み出すであろう将来の予想キャッシュフローの合計から、金利、リスクを割り引いたもの」である。 セガはずっと赤字が続いており、将来のキャッシュフローの予想ができない。 キャッシュフローを全く生み出していないのだから、企業価値はゼロだ。 株価は「将来」の予想キャッシュフローから導き出されるので、現在、収益を生んでいなくても構わないのだけれど、セガはIRもむちゃくちゃ。 業績見通しをコロコロ修正するので、株価もそれにつられて大きく変動する。 全く信用できないセガのIRに対して、市場は信頼を完全に失っているので、株価は低いほうに収斂している。 極論だけど、現在のセガの株価は事実上、のれん代というか、ブランド価値だけと言ってもいい。 収益を生む本来の企業としての価値はほとんどない、と言ってもいいかもしれない。
最近はM&Aがとても多いのだけれど、企業の合併の成功率は恐ろしく低い。 企業は合併により、両社のシナジー効果により業績を向上させることを狙う。 だが、実際は合併によってシナジー効果を得ることはなく、失速する確率のほうが圧倒的に高い。 多くの場合は合併後の企業の統合に手間取り、結果的に業績を悪化させる。 合併の成功例と呼べるものはほとんどない。
それに対して、株価は合併に向けて上昇する事が多い。 理由は合併比率の交渉を有利に進めるため、両社が株価の向上策を次々と打ち出すからだ。 リストラや財務のお掃除等の株価向上策が次々に行なわれる。
更に日本の企業合併の際の会計処理は、ほとんど無法地帯で何でもやり放題。 合併のドサクサにまぎれてインチキくさい会計処理を行い、バランスシートを一挙に改善させることが可能。 実は日本の企業合併に関する法律ってなあーーんにもない、と言っても良い。 やりたい放題。 三井住友銀行とわかしお銀行のように、最近の銀行のアクロバッティブというか、奇策というか、とんでもない合併が相次いでいるけれど、これらはこの日本の法律の隙をついたものだ。 モラル的には大問題だけれど、違法ではない。 企業合併の際に気にすべきは、せいぜい独占禁止法(公正取引委員会)くらい。
この後、このセガとサミーの株価はどうなっていくんだろうね。 まだ、合併発表の直後で情報がほとんどないので、良くわかりません。
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