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2002年11月30日(土) 正統なユビキタスの定義と日本のクルマ

あちこちでユビキタスという言葉が目に付くようになった。
だが、これらのほぼ全ては間違った使い方をされている。
もはや単なる広告キーワード。

ユビキタスを直訳すれば「偏在する」という意味となる。
そのせいか単なる「どこでもブラウザ」のことをユビキタスと称しているようである。
携帯電話経由でどこでもブラウザが使えます、メールが読めます。
ホットスポットでどこでも高速でブラウザが使えます、メールが読めます。
これらはモバイル・インターネットでしかない。
ユビキタスとは言わない。

「ユビキタス」という言葉は1988年にマーク・ワイザーによって生み出された。
生まれた場所はパロアルトにあるゼロックスのPARC。
ゼロックスのPARCは現在のコンピューティング環境の全てを生み出したといっても過言ではない。

ユビキタスとは「コンピュータが全てのモノに組み込まれ、コンピュータがモノではなく、環境となることである」

マーク・ワイザーはこうも言っている。

“最も重要なテクノロジーはテクノロジーが「見えなくなること」である。テクノロジーはどこにあるのかわからなくなるくらいに布のように日常生活に織り込まれる。ペンや電気がどこにでもあるように、まるで目立たず、それらがいかに重要な存在かを日々の生活で忘れてしまうような状況。それがユビキタスコンピューティングとともにある、ということだ“

ユビキタスとはコンピュータが目に見えないくらいに、環境に溶け込み、コンピュータそのものが環境の一部となることである。

様々なセンサーから得られた情報とそれに対する何らかのフィードバック、情報配信やサービスの提供、それがユビキタスである。
ブラウザもメールもどうだっていいのである。

現在のところ一番ユビキタスに近い環境を実現しているのはクルマである。
クルマは既にセンサーだらけだ。
クルマの内部は既にオフィス並みのネットワークが張り巡らされている。
車内の配線は既にKm単位だともいう。

カーナビはもはやGPS衛星により地図上にクルマの位置情報をマップするだけの存在ではない。
道路に張り巡らされたVICSのビーコンにより、渋滞情報や工事情報、駐車場の空き情報を得る事ができる。
経路も渋滞情報の変化に応じて最適コースはリアルタイムに変更される。
携帯電話を通じて目的地の天気予報。
オービスや取締りの情報まで地図上にマップされる。
電話がかかってくれば、相手の名前が画面に出る。
基本操作は音声認識で行われる。

そしてETC。
現在は高速道路の料金所でしか使えないが、駐車上の料金支払いやドライブスルーといったクルマを使用する際の決済手段に発展する可能性がある。

盗難警報装置はPHS内蔵となり、盗難されてもクルマの位置情報を得る事ができる。
事故が起きればエアバッグのセンサーと連動して、携帯電話が自動的に救急通報を行う。
クルマは既に充分ユビキタスである。

先日発表されたホンダ・アコードに至っては、既に自動運転に限りない機能を搭載している。
バックミラーに埋め込まれたセンサーが白線を捕らえ、前方の車両との距離を常に測り、ハンドルやブレーキ、アクセルをコントロールする。
ワザと運転サポートシステムという位置付けにされているが、事実上、高速道路であれば既に自動運転は可能である。

これがユビキタスなのだ。
車両や道路に埋め込まれた無数のセンサー、それらの間では無線により無数のやりとりがなされている。
クルマ単体だけではなく、インフラと一体となったシステムこそがユビキタスなのだ。
ただ、携帯電話会社が目指すテレマティクスは概念的には「どこでもブラウザ」の域を出ていない。
携帯電話各社の目論見など、ユビキタス環境のごくごく一部でしかない。
コンセプトより現実のインフラのほうがずっと先進的である。

どこでもインターネットなんてユビキタスのごくごく一部。
今の日本のクルマ社会で既に実現されているユビキタス環境がこれからは更に発展し、地球上の全てに展開されていくことになる。




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