Kozの日記
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2002年08月16日(金) 連弾にときめく心

という訳で、桜の花が咲く頃にレッスンは始まった。

今あるピアノはYAMAHAのCS6xというシンセサイザー
で本当のピアノではない。仮にピアノを買ったとし
てもあの重量のものを置くスペースはなく会社にで
も置こうものならスタッフからどれ程ヒンシュクを
買うか…

これだけの楽器があって、日常的に少し練習してい
ても、スタッフの視線をはずさないと動揺してしま
うくらいだ。

最近はSEの制作があったりするので、堂々とキーボ
ードやドラムを前にすることができる。それは唯一
仕事を楽しめる時間になる。


ところでピアノのレッスンは一応2時間。先生自身
が人に教えたことがないとあって、メドがつくまで
月謝無し!でも罪悪感は否めない。

先生も貴重な時間を割いて、終電ギリギリまでいて
くれるのだから真剣にやる他ない。


この先生。時々本当に24才なのかな?と疑ってし
まう程、落ち着いているし、勉強家だ。

今の仕事をしていると大体20代半ばの世代との接
触が多く、ジェネレーションギャップを感じてしま
うが、先生の前だと感じないのが不思議で仕方ない。

「ピアノはいつから始めたの?」

「小学校から中学校まで」


普通この会話から、「ピアノを習う」お決まりの習
い事のような印象を受けるが…


「先生の得意なの弾いてみてよ」の質問に

「最近弾いてなかったからね」とさらりと流し、

「これ右手と左手の役割が変るのよね…」と言いな
がら指を踊らせていた。バッハの曲。
手とキーボードが一体になっているように見えた。

「それからこれはベートーベン」
僕には早すぎる指の回り。

「あー指が回らない…」

「えっ!うそっ 回ってるやん………。」

「鍵盤の重さも違うし…」


「小学校から中学までの、何年ピアノやってたの?」

「5、6年間かな?」


「5、6年間でそこまでできるの?」

「できるわけないっちゅーねん!」←心で叫んだ。

「習ってたのがそれくらいで、あとは独学…」

僕はこの「独学」という言葉にめっぽう弱い。
独学は努力なしで結果がでないし、それが正しいか
どうか検証するのにも時間がかかってしまうから、
大変だということはホントよくわかる。

近頃類を見ない24才の先生。


で、バイエルのはじまり。

1番からいきなり譜面が読めない。

先生「………………」

僕 「これがドやから…」

先生「ニコニコニコ」

僕 「これがミで…」

先生「ニコニコニコ」


まるで小学1年生の4月にすることと同じかも。

あー大丈夫なんかな?

一抹の不安がよぎる。


それにしても先生の気の長いこと。

今まで嫌な顔は見せたことがなく、いつもニコニコ
している。

その時、右のエクボがかわいく思えた。

先生の書き込むノートには、こと細かくその日の内
容と次の課題が書き込まれているらしい。絶対に見
せてはくれない。

僕も先生の立場で生徒に教えているが、彼女の教え
方は根本的に僕とは違う。彼女は絶対に怒らない。

僕が間違いに気付いて直したら、出来て当たり前と
も思ってなく、良く出来ましたと誉めるのではなく
「ありがとう」と言ってくれる。

なんでありがとうなんだろう??
そんなのはどうでもいい。
正直その「ありがとう」は僕を勇気づけた。そして
その一言を聞きたいために、頑張る自分がいた。

なんて単純なんだろ、男って…。


「本当のピアノ弾いて欲しいな…」
ある日先生がそう言った。

「いやまだまだ」
僕が言った。


「バイエルの他に何か弾いてみたいのある?」

「ビリージョエルの『素顔のままで』」

「じゃ練習しとくね」

「でもムリやん、そんなん」

「ムリっていう言葉つかったらダメって先生がいつも
 言ってることちがう?」

「はい…」

やっぱり彼女には勝てないかも。


先生のひた向きさに、ピアノのレッスンが楽しくて仕方
なくなった。

先生によってこれだけ前向きになれる。

そう言えば中学1、2年の時英語の先生が大嫌いで、英
語が苦手だった。成績はいつも20点とか30点で10
段階評価で2とか3だった。

しかし中学3年の時の英語の先生は、すごくよかった。教
科書通りの授業なんて滅多にしなかった。話が楽しくて、
言ってることがわかりやすくて。だから成績はグングン伸
びた。テストはいつも80点以上をキープしてた。

小学校の頃音楽の先生が好きだったら、今頃どうなってた
んやろ。ちなみに中学の音楽の先生も嫌いだった。

自分も嫌われない先生にならなくては…。


「本当のピアノ」がやけに耳に残る。
翌日楽器屋さんへ行って、「ピアノ」に触れてみた。

鍵盤が重い。音がアコースティックだ。響きが違う。
新ためて「ピアノ」を感じてみた。

「早く連弾ができるといいね」

なぜか胸がドキドキした。


「ブンブンハチが飛ぶー」の練習はゴールデンウィーク前。
かなり遅いペース。

「この曲できたら連弾しようね」と先生。

めちゃくちゃ頑張った。


しかし、そこには重要な問題があった。


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