自立日記
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気にしないように気を付けて、プレゼントを渡すことに。 N子の好きなモンチッチだ。N子の、25才の誕生日プレゼント。
モンチッチは30周年だそうで。 モンチッチの小さなぬいぐるみ(キーホルダー)を買ったお店のおばちゃんがいうには、 480円のこれが、渋谷だったか原宿だったかで1200円で売れてるとかどうとか。 ヨリ目でこっちを見上げる顔が可愛い。N子も喜んでくれた。
モンチッチは、テントウ虫の着ぐるみを着ている。 N子はモンチッチの服を整えたり、帽子を被せたり外したりして喜んでいる。 自分の携帯に付いてるキーホルダーを見せてくれた。 キツネの格好をしたモンチッチがお気に入りで、小物入れも見せてくれた。 モンチッチって、N子に似てるよ。 やっぱり自分に似てるものを好きになるんだな。
「何も用意してなくてごめんね〜」だって。 チョコレートもなかった……がく。
俺はテーブル越しに、N子の手を触ろうとする。 N子はそれも拒否する。 俺はマフラーを落としたことに気が付いた。 N子は仕事場に忘れたんじゃないの?と意に介せず。冷たい。
エスカレーターで下がる。 俺はもう、無理に手を取って握る。頭を撫でたり髪を撫でたりする。 向こうは嫌がってるので、かなり不自然。 N子は人前でいちゃつくのが特に嫌いだった。 でも頭を撫でてもらって嬉しかったって言ってたことがあった。 後からでも、その時の気持ちを思いだしてくれればと思った。 とにかくその時は、思いの外N子に冷たくされて、 ものすごく焦ったし、たまらなくなってしまった。
N子は自分の好きなCDを買いたいと、ショップに行ってしまう。 なぜ、俺といるのに、1人で行動する? 少しでも時間を無駄にしたくないのに。 俺はきんぎょのフンみたいに、N子の後ろについて歩く。
「N子は何しに来たの?」俺は怒って聞いた。
「だから、愚痴を聞いてくれたお礼に、食事だけしに来たんだって。」
俺はふくれっ面でサッサと歩く。 いつもならN子は走って来て、俺の腕を取って組む。 でもN子は来ない。早足で付いて来てはいた。
本当にもうさよならの時が来た。 駅前のエスカレーターで、俺がN子に抱きついてしまった。
「N子……N子……」
「お願いだから泣かないで。」
改札の前でN子に抱きつく。
「N子、これあげる。」
ティッシュケースだ。 「こんなにたくさんわるいよ……」とか言いつつ、受け取ってくれた。 コレは、N子がチョコレートをくれた時のためのお返しのつもりだった。 でも、後で思い残すことがないように、渡しておいた。 少しでもN子と居られる時間を引き延ばせる。
「じゃあね。」
感きわまって、また抱きついてしまう。 何を言ったらいいか、わからない。 また会う約束をしておけばよかったと思う。 そこまで頭が回らなかった。 とにかく、もう会えないと思った。 泣きそうになる。 N子の名前を繰り返して呼ぶ。 N子は嫌がっている。
俺はトチ狂って、キスをしそうになった。 N子は拒否した。
「今日来たのは、そんなつもりじゃないよ。」
「うん、ごめん……ごめん……」
キスなんてするつもりじゃなかった。 N子は改札の奥に消えていった。 俺は、N子が見えなくなるまでその場に立ちつくした。 N子は一度も振り返らなかった。
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きびすを返して、俺も去る。
人だらけの新宿。
悲しくなる。
心がからっぽ。
気持ちは高ぶっている。
N子は冷たすぎる。なんでこんなことをする……。
外の空気が冷たかったはずだけど、何も感じない。
目の前が真っ暗になる。見えないベールに覆われたよう。
気持ちが、ザクザクに刻まれたよう。
また悲しくなった。
N子と別れて、平気になったのに。
……この2年間で、neoはどう変わった?……
……うん。N子がいなくても平気になった。……
平気になんか、なっていなかった。
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