セピア色の思ひ出

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2002年12月04日(水) **「学がある」と日本語の話**

今日はいつもより長い文章です…。
面倒な方は一番下の方だけ呼んでくださると嬉しいです◎
全部読んでくださった方には、感謝感激です!!!

昨日、日本料理屋のバイトで私が付いた部屋は、某医大の事務の方々二十人位の宴会あった。

昨日のお客様達はフグ鍋のコースを注文された。
その座敷には五〜六人用のテーブルが四つあり、鍋は各テーブルに一つずつ。
四人の店員がそれぞれの鍋で具のお世話をしたり、お客様によそって差し上げる。

私は鍋の様子を見ながら近くのお客様数名と世間話をしていると、
何かのきっかけで私は「厚顔無恥」という四字熟語の話題を出すに至った。
「厚顔無恥」とは、恥知らずで図々しいこと。という意味。

けれど、その話題を出したものの、周りにいらっしゃったお客様は誰としてその四字熟語を御存じではなっかた。
そこで、皆さんに
○○さん(←私。店で店員は名札を付けてマス)は学があるな〜
と、ヨイショされた私。
けれど実際は私に学なんかあるわけでなく、偶然今年の夏に少しかじった行政書士試験の一般教養の勉強の中にその四字熟語があって、それを覚えていただけ。
そしてたまたまそのお客様の中に四字熟語を解している人がいなかっただけ。

また、違うお客様に「厠はどこですか?」と訊ねられた。
私は「廊下の突き当たりの左側です。」と答える。

しばらくして、また同じ方に、今度は
「手水場(ちょうずば)はどこですか?」
と聞かれた。
さっきも行った筈なのに、おかしいなぁと思いつつ
また私は「廊下の突き当たりの左側です。」と答える。

そしてそのお客様がお手洗いから戻ってこられるとすぐ、
今度は英語で「Would you (中略。エヘ) restroom?」
と訊ねてこられた。
私は「今行ってこられましたよね?」
と聞き返すと、そのお客様はとても驚いた顔をされて
「あなたは学がある。
さっき私は厠と言っても分かったし、
手水場と言っても分かったでしょう?
そして今は英語でも分かった」
と、おっしゃる。

そのお客様は、私を試そうとしたらしく、同じ内容の質問を、
単語を変えて聞き返してきたのだ。

またまた私はヨイショされたが、でも、厠とrestroomは誰でも知っているとして
手水場は私は知らなかった。
ただ、お客様に尋ねられることといったらトイレの場所位しかないから答えただけ。

しかし、昨日の宴会ではお客様の間で私は「学のある娘」として解されてしまった。
こんな時の否定は、ただの謙遜の響きしか持たない。
だから、とりあえず笑顔を返す私。


最近、若い人々を中心に、確かに古くからある単語や諺や四字熟語を知らない人が多い。
私自身も含めて。
後者のお客様が私を試してこられたのも、今の若者がいかに日本語を知っているかを知るという意を含んでいたんだろう。

語り継がれてきた美しい日本語も、現代人によって死語になってゆくものがこれからどんどん増えてゆくだろう。

江戸でも明治でも…どんな時代でも、確かに一瞬で消えてゆく流行り言葉はある。
けれど、語り継がれてきた、重みと伝統のある日本語たちが消えてゆくのは悲しい。

現代人は、第一次経済成長期時代に次々と作られた工場の、汚い工業用水とともに、私たちの美しい日本語をどこかへ流し出してしまっているんだ…。


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