思い出さなくてもいいことがある。 でも覚えていることがある。
忘れたくないことなら。きっと忘れないでいられるんだろう。 でもどんなに忘れたくても。忘れられないことがある。
魂の奥深くに刻まれた。いつかの古傷。
雨の日はキライじゃない。 傘を差して。周囲からの隔離。 賑やかな雑踏の中にいても。どこか独り。 そんな空間は。ウォークマンを聞く感覚に似ていて。 自分だけの世界を作り出せるって意味で。キライじゃない。
でも。何がどう引き金になったんだか。 そんなあたし1人の傘の下で。思い出した。 忘れたいことで。忘れられないことを。思い出した。
途端に苦しくなって。頭の奥が痺れたようになって。 グルグル。グルグル。渦巻いていく何かがあって。 怖くて怖くてたまらなくなって。走って家に帰った。
ねぇそうる。あの日も雨が降っていた。 あたしは独り。泣いていたね。 あんたに裏切られて。置いていかれて。 でもそんなあんたを想わずにはいられなくて。 どうしたらいいか分からなくて。ただ泣いていたよ。
あの日のあたしがいたから。今のあたしがいる。 あの日のあんたがいたから。今のあんたがいる。 分かってるんやけどね。思い出すとやっぱり痛い。 胸を抉られるような痛みで。息をするのもしんどくなる。
ねぇそうる。すべてを受け入れるのって難しいね。 あんたのこと好きやけど。めっちゃ好きやけど。 今でもやっぱり。どうしても許されへんことがある。
現在の優しいあんたを。あたしは信じてる。 でも過去の冷たかったあんたを。忘れられん。
忘れたいのに。忘れられん。 ↑大丈夫。一時的なこと。これもあたしたちの歩みの証。 |