日記をしばらく書けんかった間。 あたしには2つの事件があった。
まずひとつは。昨日の日記で書いたこと。そうるとのこと。 そしてふたつめは。これもそうるとのことやけど。 ある意味で。ひとつめのことよりも衝撃的なことやった。
それは。そうるのバイクで事故ったこと。
久しぶりに2人で出かけた帰りやった。 いつも行くスタバで。2人でいろいろ話してた。 それは。あたしとそうるがぐちゃぐちゃに揉めた次の日で。 泣き出さんように。必死で我慢しながら話してた。 あたしのカプチーノは冷めきってた。 そうるのアメリカンはちっとも減ってなかった。 2時間ぐらい向かい合ってたけど。何を話したかあんまり覚えてへん。
夕方になって。そうるはバイトがあるってことで。 ちょっと急ぎながら。あたしを家まで送ってくれた。 いつも通ってる慣れた道。15分ほどの道。何の問題もないはずやった。 というより。実際そうるの運転は何ひとつとして悪くなかった。
悪かったのは。完全に相手の車やった。
家まであと5分ぐらいのところ。大通りから住宅に入る道。 そうるが右折したところに。信号無視の直進車がつっこんできた。 ぶつかると思って。スローモーションのように時間が過ぎて。 怖い。怖い。やばい。やばい。そう思った直後。あたしは飛ばされた。
そうると気まずくなってたからやろうか。 あたしは。あんまりそうるにくっついてなかった。 いつもなら。強く抱き締めるそうるの背中やのに。 その日にかぎって。シャツを軽くつかんでるだけやった。 だから。そうるはバイクと一緒に転がったけど。 あたしはそうると引き剥がされて。5メートルぐらい吹っ飛んだ。
全身を叩きつけられて。息ができんくなった。 痛いとか痛くないとか分からんかったけど。動けんかった。 混乱した頭では。状況がよく把握できんかったんやけど。 ちょっと離れたところで。バイクと一緒に倒れてるそうるを見て。 あぁ・・・これは事故なんやと思って。大パニックになった。
どうにかバイクを起こして。起き上がったそうるに。 ぶつかってきた車から若い男の人が2人降りてきた。 バイクの左側は大きくへこんでた。地面に擦れた右側には傷がついてた。 そうるに近づいた男の人が最初に言ったことは。 「すみません」でも「大丈夫ですか」でもなくて。 バイクの修理代は全部弁償するとかそーゆうことやった。 かなり動揺してるみたいで。言ってることもしどろもどろやったけど。 社会人なんやろう。とにかく示談にしてほしい雰囲気を出しまくってた。
その態度に。そうるはぶち切れてた。 「ふざけんな。バイクなんかどうでもええわ。」 そう言い放って。あたしのそばに駆け寄ってきた。
「大丈夫か?」って言われて。体を起こされた。 あたしを支える腕は。やっぱり大好きな腕やった。 いたわり深くて。大好きなその目に覗き込まれた瞬間。 張り詰めたものがプツって切れて。あたしは声をあげて泣いた。
気持ちがぐちゃぐちゃやった。壊れそうやった。 事故は確かにショックやったけど。それだけじゃなかった。
最低なそうるやのに。あたしを傷つけるそうるやのに。 いざとなったら。ちゃんとあたしを心配してくれる。 大事にしてくれる。気遣ってくれる。優しくしてくれる。 バイクは傷だらけやのに。「どうでもいい」って言って。 真っ先にあたしのそばに来てくれる。
あんなにもあたしをボロボロにしたくせに。
情けないけど。あたしは泣きっぱなしやった。 打ち付けた背中は痛かったし。擦りむいた足からは血が出てたけど。 体の痛みはまだ我慢できた。気持ちの方がやばかった。
あたしがそんなふうに。どうしようもないもんやから。 警察に連絡したのも。相手の男と話をしたのも。 バイクの後片付けをしたのも。全部そうるやった。 相手の男の人が。病院まであたしたちを送ってくれて。 (「くれた」とか言うのもむかつくけど。) そこでもとりあえず。あたしばっかり心配されてた。 あたしはたぶん。そうるをそこまで思いやれてへんかった。
傷の手当てを受けた後で。レントゲンやらCTやらいろいろ撮られて。 2人とも脳にも骨にも異常はなくて。まずはひと安心。 曲がり角やったことで。あんまりスピードを出してなかったのと。 メットをちゃんとつけてたのが。まだ救いやったみたいやった。
ちょっと落ち着いてきてから。ようやくそうると話せた。 病院で会計を待ってるときに。2人並んでしゃべれた。
「バイク傷ついてもーたな。」 「しょーがない。バイクぐらいですんでよかった。」 「でもあんた的にはありえへんやろ。」 「いや。まじでこの程度ですんでよかったって。」 「・・・まぁそうなんかもしれんけど。」
「てゆーか。ごめん。」 「え。なにが。」 「事故ってもて。」 「・・・あんたは悪くないって。」 「でもまじでびびった。怖かった。」
そうるの声は震えてた。泣きそうになってた。 それを見て。もう抱き締めたくてたまらんくなった。
包帯を巻いた手足。沈んでる横顔。 あたしだけが痛かったはずがない。あたしだけが怖かったはずがない。 運転してたそうるは。あたし以上に辛い気持ちを抱えてるはず。それやのに。 やっぱりあたしは。いざとなると自分のことだけになってまうんや。 そうるは1番にあたしの心配をしてくれたのに。あたしは考えられんかった。
あたしはそうるを裏切ってへんけど。あたしの愛だって不完全やんか。 こーゆう状況においては。そうるの方がちゃんと愛してくれてるやんか。 そう思ったら。なんかあたしも申し訳ない気持ちになった。 そしてそんなそうるを。やっぱり愛しいと思った。
ねぇそうる。ほんまあの程度の事故でよかったよね。 あんたにもしものことがあったらと思うと。背筋が凍る思いがする。 バイクってのは。やっぱり危険と隣り合わせなんよね。 あんたの運転は信じてるけど。あーゆうアホ車もおるわけやし。 ほんま。これからも気をつけて乗っていこうね。
それから。泣いてばっかりおってごめんね。 いろんなこと考えてたら。どうにもおかしくなってもてた。 でも。あんたがいろんなことをちゃんとやってくれて。 あたしのことも気にしてくれて。ほんまに救われた。
あんたは最低なときもあるし。最低なこともやらかしたけど。 あの場所での優しさは。本物やってあたしには分かる。 どっちがほんまのあんたか分からんくなるけど。 どっちもほんまのあんたなんよね。
人間は複雑なんよね。そんな簡単に白黒つくもんじゃないんよね。
そうる。あたしはあんたを許すことはできんけど。 それでもあんたのことを愛してる。それだけは真実。 だから。どんなにあんたに対してむかつくことがあったとしても。 見せてくれた本物の優しさは。ちゃんと受け止められる自分でいたい。
ありがとうそうる。思いやってくれてありがとうね。 ↑まぁ当たり前やけどね。とりあえずよかった。
*ひとりごと* 久しぶりに鬼のような長さ。ごめんなさい。お疲れさま。 そしてあたしも疲れました。思い出すとちょっとしんどい。 |