今日は。そうるにいっぱい心配させられた。 そして。ちょっと調子に乗ってるかもしれんけど。 あたしにそうるが必要であるように。 そうるにも。あたしが必要なんやって思えた。
試合会場に着いて。まひろとはつねと3人で着替えながら話してるとき。 試合前の応援メールを。引退した同学年のコからもらったかって話になった。 「あたしは大量にもらったでー。」って得意げに話すはつねに対して。 「1通ももらってへん。」って言うまひろと。「1通だけもらった。」って言うあたし。
はつねはもともと。かなりみんなに慕われてる。てゆーか愛されてる。 頭の回転が速くて。おもろいことをいっぱいやらかすはつねは。 あたしたちの学年では。明らかにムードメーカーやったし。 大量メールはうらやましいけど。はつねのキャラを考えると当然かなって思う。
「まぁあたしは一匹狼ですからねぇ。」ってまひろが笑って。 「じゃああたしは華やかな孔雀ですかねぇ。」ってはつねも笑った。 「うーん。あたしは中途半端やなぁ。」ってあたしが言ったら。 「あんたは狼になりきれへんうさぎやろ。」ってまひろに言われた。 「寂しがりのうさぎは1人じゃ死んでまうからなぁ。」ってはつねに笑われた。
あたしを「うさぎ」って言うのは。そうるの特権やと思ってた。 でも。まひろやはつねにまで言われて。なんか苦笑いやった。 そして。今日は久しぶりにそうるに会えるんやなぁとか思ってたら。 むかつきとか苛立ちとか。とりあえず忘れようかなぁって思えた。 だって会えるんやし。幸せは素直に噛み締めるべきよなぁって思えた。 その後で。それでも話したいと思ったら話せばいい。そう思った。
つくづく思うけど。あたしの心はほんまに都合よく出来てる(苦笑)。
そんな話をしてるときに。そうるは走って現れた。 「すいませんー!また渋滞巻き込まれましたー!」って言ってた。 「学習能力ないなぁ。」「もっと余裕もって出てこんかい。」 まひろとはつねにつっこまれて。謝りまくってるそうるやった。
ちょっと目が合って。「おいっす。」って言われた。 「おはよ。」って言って笑いかけたら。もうそれで幸せやった。 思ってたより元気そうやな。ちゃんと笑ってるわ。よかった。 昨日あんなにむかついたくせに。あたしはまたそうるを好きになってた。 流されてるって思った。やばいなぁって思った。
そんなそうるの異変。あたしはけっこう早くから気づいてたと思う。
アップのときから。しんどいって連発してた。 試合開始前に。すでに赤い顔をしてた。 試合が始まっても。いつもよりベンチにいる時間が長かった。 プレーしてても。ベンチに向かって交代を要求する回数が多かった。
当たり前や。だって久しぶりに動いてるんやもん。 ずっとクーラーの効いた部屋で勉強する毎日なんやもん。 体力も落ちてるに決まってる。それやのにこの炎天下やし。 バテへんはずがない。疲れへんはずがない。
でもそうるは。自分からしんどいって言う性格じゃない。 けっこうギリギリまで我慢する。てゆーか絶対自分を過信してる。 そんな息切らしてるくせに。今にも倒れそうなくせに。ありえへん。 そう思いながら。あたしはずっとそうるを気にしてた。
そして試合終了後。そうるは座り込んで動かんくなってた。 ・・・だから言わんこっちゃない。そう思ってあたしは駆け寄った。 「大丈夫か?」って聞くと。「・・・大丈夫。」って言った。 明らかに嘘やって分かった。どう見たって強がりやった。
浅くて速い呼吸。脈が速くて。赤い顔をしてる。 意識がぼーっとしてるみたいで。かなりしんどそうやった。 手を握ると。いつもはひんやりするその手は熱かった。 軽い熱中症と脱水症状かな。そう思った。
あたしは。そうるを抱えて日陰に連れて行った。 たぶん後輩には。こんな姿は見せたくないやろうと思ったから。 みんなからちょっと離れたところまで歩かせた。 久しぶりにそうるに触れて。大好きな体の重みを感じた。
スポーツドリンクを飲ませる。凍ったペットボトルを腋に挟ませる。 保冷剤を首に当てる。タオルを使って風を送る。 とりあえず体温を下げてあげんと。そう思っていろいろやってた。 ぐったりしたままで。そうるはあたしにされるがままやった。
「・・・あーごめん。」 「・・・ええよ。でも無理しすぎやろ。」 「無理ってゆーか・・・今日暑すぎた。」 「そうやで。そんであんた久しぶりなんやで。」 「確かに。そりゃしんどくもなるわな。」 「分かってるなら心配させんといてや。」 「・・・あい。」
なんか。分かってるんだか分かってないんだか。 ほんまにそうるは。どっちなんだか掴みにくい。 でも。しんどいところに追い討ちかけるのもどうかと思ったし。 これ以上のうるさいことを言うのはやめといた。 目を閉じて。黙ってあたしに身を任せるそうるが愛しかったし。 支えてる感覚は。支えられる感覚以上に幸せやったから。 まぁいいか。今日はいいか。そう思ってた。
ねぇそうる。あんたは何度もあたしに謝ってたけど。 あたしはさ。それは別にいらんなぁって思った。 だって。迷惑かけられたなんてあたしは思わんかったから。
昨日あんなにいろいろ思って。むかついて。 これは一発ちゃんと言ってやらなあかんって思ってたんやけど。 いざ目の前にしんどそうなあんたがおったら。無意識のうちに体が動いてた。 愛してるってのはそーゆうことなんかんもなぁって思った。
あんたのために動くことは。あたしには何の負担にもならへん。 あんたのためやったら。あたしは何だってしてあげる。 しんどいときは助けてあげる。支えが欲しかったら肩を貸してあげる。 別にそんなことで恩を着せたなんて思わへん。だって苦にならんのやから。
そしてふと思った。昔を振り返って思った。 今日。何も言わずにあたしを頼るあんたが愛しかったように。 当たり前のようにあたしを必要としたあんたが愛しかったように。 そうる。もしかしたらあんたも。同じようなことを感じたことがあるんかな。 あんたを頼るあたしを。必要とするあたしを。愛しいと思ったことがあるんかな。 たぶんあの頃のあたしも。あんたに何度も「ごめん。」って言ってたけど。 そんなに謝らんでもええがなーって。あんたも思ったりしたんかな。
なんかそんなことを思いながら。あんたをタオルで扇いでたんよね。 だから顔にバシっと当ててもて。「痛いしー。」って言わせてもたんよ(苦笑)。
幸せ体質やろ。あたし。あんたはきっと笑うやろうね。
↑もうちょっとぐらいしゃべりたかったなぁ。うぅ・・・我慢我慢(涙)。 |