今日は。就職説明会に行ってきた。 駅で学部の友達と待ち合わせて。会場まで歩くこと10分。 夏場のスーツは。肌にくっついて気持ち悪かったし。 慣れないヒールの靴は。あたしの足に小さなマメを作った。
会場にはいろんな人がいて。みんな真剣な顔をしてた。 資料を集めたり。ブースに入って話を聞いたり。いろいろしてみて。 あたしにも。漠然とした危機感みたいなものは生まれてきたけど。 それでもまだ。自分がどんな仕事に就きたいかが見えんかった。
生きていくためには。お金を稼がなあかんのやし。 そうなると。職に就かなあかんのは当たり前のこと。 やりたいとかやりたくないとか。そんなのは所詮キレイ事で。 現実から逃げてるだけのことなんやろうと思う。
でも。投げやりになって仕事を決めたくない。 だってあたしの人生やし。歩んでいくのはあたしやし。 この先どんなふうに生きていきたいのか。見極めていかんと。 考えすぎてもあかんけど。でもちゃんと考えなあかん。
そんなことを思いながら。疲れ気味で帰ってきた。
家に着いて。真っ先にスーツを脱いだ。 縛られてる感覚を取っ払いたくて。床に脱ぎ散らかした。 化粧を落として。まとめ上げた髪を下ろして。 そして最後に。外してたピアスを耳につけた。
そうるがくれたピアス。あたしがいつもつけてるピアス。 それをつけると。やっと自分に戻れたような気がした。
あたしがピアスの穴を開けたのは。1回生の2月やった。 その頃は。試験だらけで。家では親が離婚の危機で。 サークルもオフで。そうるにも全然会えてなくて。 (まだ今みたいな関係じゃなかったけど。) ストレスが溜まりまくりで。ほんまにしんどかった。 そんなあたしは。半ば勢いでピアスの穴を開けた。 そして次の日に。美容院に行ってパーマを当てた。
いろんなことが限界やったんやと思う。 しんどくなると。自分の中で何かを変えたくなるあたしは。 例えば。普段は着ないような服を買って。着てみたり。 普段は読まんような本を買って。読んでみたりするんやけど。 このときは。ピアスの穴を開けてパーマを当てて。自分の体を変えた。
そうるに報告メールをしたのを覚えてる。 「ピアスにパーマか。ずいぶんがんばったもんやな。」 そんなふうに。ちょっと茶化されたのを覚えてる。 「うちはピアスはせーへん。耳に穴が開くのがどうしても許せへん。」 そんなふうに言われて。意外でびっくりしたのも覚えてる。
そして。ちょっと深い関係になってきてから。 そうるはあたしの耳のカタチを誉めてくれるようになった。 「うち耳ちっちゃいからなー。あんまり見せたくないねん。」 「あんたの耳はキレイから。ピアスもいい感じに似合うよなー。」 そんなふうに言って。よくピアスを買ってくれるようになった。
安物からちょっと高価なものまで。いくつかあるピアスの中で。 あたしがいつも選んでまうのは。1番小さいピアス。 控えめで主張してないけど。確かに存在感がある。そんな感じが大好き。
ジルコニアの小さな石から。あんたの愛を感じる。 耳につけただけで。安心して落ち着ける。 たったそれだけのことで。あたしはまた泣きそうになる。
ねぇそうる。今日もあたしはあんた色に染められてる。 あんたが誉めてくれた耳に。あんたがくれたピアスが光ってる。 でもそれを見てくれるあんたがおらんくて。あたしは寂しい。
あんたがおらんところでも。あたしはあんたを感じられるし。 思い出とか。記憶とか。あたしを満たしてくれるものはいっぱいある。 例えばこうやって耳のピアスを触るだけでも。あたしは幸せになれる。
でも。やっぱりすべては。あんたがいてくれてこそで。 あんたのにくらしい笑顔が見えてこそで。 あんたを抱き締めることができてこそで。
それが今は無理やってことは。もう十分に分かってるのに。
なんであたしの魂は。こんなに聞き分けがないんやろう。 なんでこんなにも。あんたのことしか考えられんのやろう。 なんでこんなにも。欲しくて欲しくてたまらんのやろう。
ねぇそうる。やっぱりどうしたって。あんたを求める心は抑えられんよ。 ↑がんばってるんやなぁ。あたしもがんばらにゃ。 |