今日で。とりあえずまたひとつ実習が終了。 残すはあと1週間。がんばろう。
今は楽しみなこと(バイク)があるおかげで。気持ちが前向き。 ずっと今の感じが続けばええなぁ。それはそれで難しいやろうけど。 とりあえず前向きなときはひた走ればいい。そう思う。
実習が終わる時間を。だいたいそうるに教えてた。 一緒に新しいバイクを見に行く約束をしてた。 ちょっとだけ実習が延長したから。急いで病院を出た。
そうるは。いつもの場所にいつもの姿でおった。 バイクに横向きに座って。携帯を触ってるその姿は。 やっぱりかっちょよくて。ずっと見とれていたいくらいやった。
そうるのバイク。真っ黒な自慢のバイク。 そこは。あたしが見つけた自分の居場所。 1番安らげる場所で。1番ドキドキできる場所。
あぁ。新しいバイクを手に入れるとはいえ。 あたしは。この慣れたバイクにはもう乗れんのや。 もうこのバイクに乗るそうるは見れんのや。 たぶん今日で最後なんや。
なんかそんなことを思ったら。急にせつなくなってきた。
「おいっすー。」ってそうるに言われて。 「おいっすー。」っていつも通り返すものの。 新しいバイクを見に行ける嬉しさと。愛しいバイクと別れる寂しさとで。 あたしは。自分でも分からんような複雑な気持ちになってた。
でもそれは。きっとそうるも同じやろうって思った。 1年以上乗ってきたバイクなんやもん。 走ることの魅力を。そうるに教えてくれたバイク。 警察に追いかけられたり。ときにはちょっと転んだり。 危ないこともいっぱい一緒に経験してきたバイク。 そんなバイクとも。あたしは今日でお別れ。そうるは明日でお別れ。
いつも通りに。そうるの後ろの席にまたがる。 しっくり体に馴染んだ感覚を噛み締めながら。 あたしは。初めてこのバイクに出会った日を思い出してた。
あれは確か。よく晴れた練習の日やったなぁ。 グランドまでバイクで来たそうるに。あたしは完全にやられた。 バイクに乗るとこも。降りるとこも。走ってるとこも。 メットを脱ぐとこも。愛しそうにポンポンって車体を叩くとこも。 もう全部全部がかっちょよくて。痺れまくりやった。
練習後に。ようやく待ち望んだ場所に乗れた。 体に伝わる振動に。目の前にあるそうるの背中に。 何を今さらと思いながら。ありえへんほどにドキドキさせられた。 「ちゃんとつかまっときや。」って。そうるはあたしの腕をつかんで。 自分の腰に巻きつけさせて。河川敷の上を走ってくれた。
耳元をギュンギュン風が切っていった。 やばいくらいに興奮した。胸が高鳴った。 ちっとも怖くなんかないのに。テンションが上がりまくって。 「ちょー!怖いしー!速いしー!」って叫びまくってた。 そんなあたしの声を聞きながら。そうるはちょっと後ろを向いて。 「何が怖いねん。こんなん安全運転やん。」って笑ってた。 (ちなみに確か時速80キロやった。・・・これは安全?(笑))
あれから1年ちょっと。いろんな景色を見てきたなぁ。 いろんな場所に行って。いろんな時間を過ごしてきた。 あたしとそうるのそばには。いつも大好きなバイクがあった。
ケンカして。心底むかついて。もう知らんって思っても。 バイクで家まで送ってもらってるうちに。頭を冷やすことができた。 冷静になって反省して。ちゃんとごめんなさいって言い合えた。 あたしにとってそうるのバイクは。ほんまに必要なものやった。
でもそれは。もちろんそうるにとってもそうやろうと思う。 あたしが。さっきはごめんって言った後で。 そうるも。うちも悪かったって言ってくれたし。 言葉を交わさずに走って。お互いにいろんなことを考えて。 ちゃんと戻るべき場所に戻れてたのは。あのバイクのおかげやって思う。
あぁ。大事な大事なバイクやった。かけがえのない宝物やった。
店に向かう途中。信号待ちでそうるに話しかけた。 そうるの背中がちょっと寂しそうに見えたから。 あたしの寂しさは。くっつけた体を通して伝わってる気がした。 でも。なんか言葉にして言いたくなった。
「なぁ。やっぱりちょっとは寂しかったりする?」 「そら寂しいわ。ガラにもなく涙ぐみそうやもん。」 「そっか。あたしはかなり寂しい。もう泣きそうやわ。」 「・・・頼むから店先では泣かんといてや(苦笑)。」
あぁそうか。そうるも寂しいんよな。当たり前やんな。 涙ぐみそうやって言葉が。あたしの胸を締め付けた。 そうるには。1人で乗ってた時間もいっぱいあるわけやし。 そりゃあたし以上に寂しくて当然やんね。
そう思ったら。もうそうるもバイクも全部愛しかった。
ねぇそうる。もうすぐ乗れんくなるあんたのバイクに。 あたしは。あんたに捧げる思いと同じくらい。愛が溢れてくる。 そして。あのバイクにもう乗れんのが寂しくてしょーがない。
だって。ほんまにほんまに好きやったんやもん。 あのバイクに乗ってるあんたも。乗せてもらってる自分も。 バイクで走りながら過ごす2人だけの時間も。 あたしは。ほんまに大好きやったんやもん。
でも。寂しがりすぎて。新しいバイクを歓迎できんのはあかんよね。 すぐに思い出に浸って。涙ぐんでまうのはあたしの性格やけど。 でもそれじゃ新しい幸せを満喫できんくなってまう。
あのバイクを愛しいと思う気持ちは。この先も忘れへん。 でも。そうるが新しいバイクを手に入れて。 あたしも。新しい居場所に馴染んでいく。 まだ見えん景色を。これからもあんたと見ていく。 それって。やっぱり幸せなことやなって思うから。
愛しいバイクに。心からの「ありがとう。」を。 そして新しいバイクに。心からの「よろしくね。」を。 あたしはこっそり。胸の中でつぶやいてたんよ。 店の外と中にある2台のバイクを見比べて。 これまでの感謝と。新しい期待とで。胸いっぱいになってたんよ。
寂しいとか言いつつ。あんたは目の前にある新しいバイクに夢中で。 そんなあたしには全然気づいてなかったけどさ(苦笑)。
↑あぁー。早く乗せてほしいなぁ。いつになるかなぁ。 |