土曜日。久しぶりに1日何もない日。 最近ずっと1限があって。実習だらけで。疲れてたから。 今朝はちょっとだけ寝坊して。起きたのは9時。 窓から差し込む光は。寝ぼけたあたしの視界を真っ白にする。
あたしは体を起こすと。手を伸ばしてカーテンを引く。 外は。めちゃめちゃ青空が広がってて。いい天気やった。 あたしは窓を開けて。そのままベランダに出る。 冷たい朝の空気を体に吸い込んで。目覚める。
あぁ。なんていい天気なんやろう。
よく晴れた土曜日は。あたしをウズウズさせる。 だってこんないい天気は。まさしくサークル日和。 あたしの中の走りたい病が。治まらんくなる。
そしてあたしは。いつもみたいに。ぼんやり思い出す。 やかんを火にかけて。紅茶用のお湯を沸かすまでの時間。 意識をトリップさせて。オフ前を思い出す。
シーズン中のあたしの土曜日は。かなり健康的やった。 まず朝起きるのは6時半。これは鉄則。 練習自体は9時からなんやけど。あたしは6時半に起きてた。 それぐらいじゃないと。練習までに体が目覚めてくれへんから。
起きたら朝ごはんをしっかり食べる。 普段寝坊して時間のない朝とかは。やむなく抜くこともあるけど。 練習のある日は。そんなことやってたら体がもたんから。 腹持ちのいい白ごはんを食べるのが鉄則。そして牛乳を飲むのもお決まり。 (食べ合わせ悪いなんて言うのはナシの方向で(苦笑)。)
それが終わったら。顔を洗って歯を磨いて。 練習用のジャージ&Tシャツに着替えて。準備完了。 それからテレビのニュースを見ながら。ゆっくりとストレッチ。 起きたばっかりで固い体の筋を。じっくりと伸ばしていく。
そして。8時になると家を出る。 使い倒してクタクタになったJIBバックに。いつもの荷物をつめこむ。 スパイク、タオル、大量のお茶・・・ひとつひとつ確認して。 それからチームでおそろいのウィンドーブレーカーを着て。 玄関に置いてるラケットもどきを手にとって。出かける。
原チャに乗ってる間。考えてるのはその日の練習のことばっかり。 今日はここをがんばろうとか。このプレーをマスターしようとか。 そんなことをひたすら考えてるうちに。30分なんてあっという間に経つ。
グランドに着いて。集まってくるみんなと言葉を交わして。 9時からアップを開始して。1時までみっちりと練習。 もちろんめちゃめちゃしんどくて。かなり息とか切れまくってた。 いっぱい汗をかいて。いっぱい声を出して。いっぱい走って。 ほんまに全身が熱くて熱くて。どうしようもなかった。 でもそんなにしんどいくせに。仲間と一緒にひとつのことをやってるってのが。 もうほんまにたまらんくらいの充実感で。やみつきやった。
練習が終わったら。みんなで昼ごはんを食べに行ってた。 動きまくった後やから。何を食べてもほんまにおいしくて。 その後でする雑談も。めちゃめちゃ楽しかった。 家に帰る頃はもう夕方で。そこから晩ごはんを食べて。 ゆっくりお風呂に入って。疲れすぎてるからパタっと眠ってしまう。 そんな。ほんまにやりたいことだけをやれてる幸せな1日やった。
そしてそんな幸せな1日が。さらに幸せやったのは。 大好きな人と。そうると。長い時間ずっと一緒にいられたから。
朝みんなと会って話してるところに。バイクの音が聞こえてきて。 振り返ればそこに。バイクを乗り付けたそうるがおって。 あたしは。そうるがメットを外して。頭を振る瞬間が大好きで。 いつもこっそりその瞬間を見ては。幸せになってたっけ。 「おっすー。」「おはよーさん。」そんなふうに言い合って。 さぁ今日もがんばろうーって思ってたっけ。
練習中のそうるは。文句なしにかっちょよかった。 プレー自体もそうやけど。キャプテンとしてチーム全体を仕切るそうるは。 名実ともにうちのチームのエースで。鼻血ブーって感じやった(笑)。
そんなそうるにキツイことを言われたり。放置されたり。 かと思えばウソみたいに誉められたり。丁寧なアドバイスされたり。 そんなひとつひとつのそうるの態度に。あほみたいに反応して。 認められたと思って喜んだり。不要だと思われた気がして悲しかったり。 あたしは。それはもういろんなことを思ってたっけ。
そのときそのときは。いろんな思いを抱えてたけど。 後から思い出せば。なんて愛しい日々やったんやろう。
今日はあまりにもよく晴れた空で。あたしは我慢できんくなって。 午後から出かけるついでに。目的地まで思いっきり走ってやった。 走るつもりで。バッグは持たずにウエストポーチをつけて家を出て。 鈍りきった体を叩き起こすようなつもりで。走り出した。
すぐに右膝がピキっと痛んで。そのうちズキズキしたものに変わった。 でもそれはあたしがずっと抱えてきた痛みで。 そして。最近おとなしくなってた懐かしい痛みで。 その痛みがあの頃と変わらずにあたしの足に甦ったことが。 あたしにはむしろ嬉しいくらいやった。
シーズン中はゼーゼー言いながらも1時間は走れてたのに。 今はちょっと走っただけで。恐ろしいほどに息が切れて。 肩で息をしながら。体力が低下してることを思い知ったけど。 それでもあたしは。体を動かしてることが嬉しくてしょーがなかった。 ただ胸の鼓動だけに集中して。他のことをすっきり忘れることが出来る。 そんな時間は。やっぱりあたしには必要なんやって思った。
じっとしてる土曜が。ありえへんように思えて。たまらんかった。 走りたくて。みんなと一緒に走りまくりたくて。どうしようもなかった。 そしてあの頃の。かっちょよすぎやったそうるを思い出したせいで。 真剣な目をしてた愛しい人に。もう一度会いたくてしょーがなくなった。
ねぇそうる。あんたは今どんな気持ちなんやろう。 あんなにもサークルを愛して。夢中になってたあんたは。 それが生活からなくなって。どんな気持ちでおるんやろう。 あたしと同じように。走りたくなったりしてるんかな。 実験とか就活とかで煮詰まって。動きたくてしょーがなくなってるんちゃうかな。
そうやんね。あたしたち。性格とか好みとかは正反対やったけど。 サークルに対する熱い思いは。びっくりするぐらいに同じやったもんね。 あたしたちだけじゃなくて。それは一緒にやってきた仲間みんなに共通するもので。 だからこそ。かけがえないと感じる仲間なわけやし。
ねぇそうる。あんたには内緒にしてたけど。 あの愛しい日々がもう1度始まることを。あたしちょっと期待してる。 てゆーか。始めようかなと思ってたりする。 引退したけど。今年も残ってやろうかどうか迷ってる。 だってあたしの体は。こんなにも走りたがってるんやもん。 あの熱を。欲しがってしょーがないんやもん。
きっとそうるも。同じことを思ってるような気がする。 それは分かる。だってそれだけ一緒にいたんやから。 同じ思いで。3年間一緒に走り続けてきたんやから。
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