嫌なことがあったら。ちゃんとその日のうちに解決する。 それは。けっこうあたしのモットーになってる。 実際は解決なんかできんくて。グズグズと引きずることになるんやけど。 それが分かってるからこそ余計に。早めに解決したいと思ってる。
でも昨日のあたしは。感情を抑えてはいたものの。 ちょっとキレかけてたから。解決しようなんて思いつかんかった。 店を出ても。ほとんど何も話さんまま。バイバイをした。 そうるも特に。何も言ってこーへんかった。
いろんなタイプがあると思うけど。あたしの場合。 むかついたこととかがあっても。ギャーギャー喚いてるうちはまだマシ。 そのうち。本気で腹が立ってくると。喚くことすらなくなって。 ただひたすら黙り込んで。何も言わんくなる。 昨日のあたしは。この黙り込みの一歩手前のとこまで来てた。 無神経なそうるに対して。けっこう本気でむかついてた。
昨日の夜。まひろから電話があった。 「今日はごめんなー。なんか急にお邪魔してもて。」 びっくりして。あたしは言葉に詰まる。 「気にしてへんよ。うちこそ態度悪かったよな。ごめん。」 「いや、態度悪いとゆーか。寂しそうやったから。」 まひろはちょっと笑って言った。 「あんたほんまにあのコのこと好きやな。」 思いっきり核心突かれて。返事に困って。あたしは笑い流す。
まひろはきっと。いろんなことが分かってるんやと思う。 あたしとそうるの関係を。どこまで見抜いてるんかは知らんけど。 少なくとも。あたしがそうるに対して抱いてる感情は分かってて。 そういうのを気にして。こうやって連絡入れてくれた。 こういう思いやりって。やっぱり嬉しい。 トゲトゲしてた気持ちは。ちょっとだけまるくなった。
そして冷静になって。昨日のことを振り返る。 あたしも。知らんうちにぶっちょー面してたんかもしれん。 寂しそうやったとか。まひろは言ってくれたけど。 不機嫌になると。人って顔も怖くなっていくもんやから。 あぁ。関係ないまひろに嫌な思いさせてたんかもしれん。 そうるに対して思いやりを求める前に。あたしもまひろを思うべきやった。 まだまだあたしも人間小さいなぁって思って。ちょっと恥ずかしかった。
まぁそんな感じで。バイク屋事件は。(←事件ってほどじゃないけど。) あたしの中ではだいぶ落ち着いてた。 当事者のそうるとは何も話してなかったけど。 ぶっちょー面してたあたしにも否はあった気がしたから。 まぁええかって感じで。そうるにも特に何も言わんとこうと思ってた。
そしたら。今日の夕方にそうるからメールが来た。 「今大学におる?実験終わったから会いたいんやけど。」 あたしは。昨日のことをちょっとだけ思い出したけど。 「研究室におる。出て行くわ。どこ行けばいい?」って返事した。 そしたら。すぐに返事がきた。 「そこまで行くわ。外出て待ってて。」
マフラー巻いて。コートを着て。あたしは外に出る。 辺りはもうすっかり暗くて。外灯の明かりがぼんやりあったかかった。 年内に読んでしまいたい資料があったんやけど。 もうそろそろ切り上げて帰ろうかなーって思いながら。そうるを待ってた。
5分もしないうちに。そうるはバイクでやってきた。 「遅くまでやってるんやな。まだ残るん?」って聞くから。 「いや。もう帰ろうかと思ってたとこ。」って言ったら。 「んじゃ待ってるわ。荷物とってき。」って言われた。
なんやろ。あたしの部屋に来るつもりかなぁ。 よく分からんまま。あたしはカバンを取りに戻った。
結局そうるは。あたしの部屋に来た。 「なんか食べるー?」って聞いたら。 「じゃあもらおっかな。」って言うから。 あたしは適当にごはんを作った。 残り物しかないから。今日は味噌汁と野菜炒め。所要時間10分。 そうるは。なんか言葉数が少なかった。 昨日あたしが態度悪かったのを気にしてるんかもしれん。 なんとなく気になって。あたしは余計に明るくしてた。
「昨日のことやねんけど。」 そうるが切り出したのは。ごはんを食べ終わってからやった。 やっぱり元気がなかったのは。それを気にしてたからなんかな。 そう思ったから。あたしは洗い物をやめて。部屋に戻った。 「ごめんな。全然あんたの相手せんくて。」 バツが悪そうに。ちょっとうつむいてそうるは言った。
「ううん。もうええよ。あの時はむかついたけど。」 あたしは。ちょっと皮肉もこめて言ってやった。 ほんまに反省してる時。そのことを突かれるのは1番痛い。 あたしもそうるとのことで。それは十分に味わってるから。 なるべく痛くならんように。昨日ここに書いたようなことを話した。
うん、うん、って。そうるは頷きながら聞いてた。 なんや。やっぱりちゃんと通じてるんやん。分かってるんやん。 そう思ったら。いじけた気持ちも軽くなってた。 「ごめんな。あたしも機嫌悪くなってたし。扱いにくかったやろ。」 そう言ったらそうるは。安心したように笑った。 それから洗い物に戻ったら。そうるがあたしに聞こえないように。 「あんたはすごいな。」って。ぼそっと言うのが聞こえた。
ねぇそうる。あたしはすごくなんかないんよ。 実際むかついたしね。キレかけてたしね(苦笑)。 でもさ。あたしはなるべくあんたのことを考えようと思ってる。 あんたのことが大事やから。あんたの気持ちが大事やから。 嫌な思いをさせたくないし。させたら謝らなあかんと思ってる。 それは。根底にあんたのことが好きって気持ちがあるから。 あたしはすごくなんかないけど。もしも何かすごいんやとしたら。 その気持ちの強さがすごくて。そうさせるんとちゃうかな。
あたしが言うのもなんやけどさ。そうる。 あんたは相当愛されてるんやと思うで(苦笑)。 あたし時々思うもん。絶対あんたは今愛されすぎやって。 あたしも実際。ちょっと愛しすぎやって思うしね。
もっとがつーんとキレた方がええんかなぁ。 なんか。あたしちょっとあんたを甘やかしすぎかもなぁ。 そう思うことはあるけど。最後にはこうやって許してまうんよね。 これがあたし流の愛し方やから。しょーがないんよね。
それにしても。あぁ。弱いよなぁ。まじで(涙)。 |