そうるが泊まりに来てくれて。2人で戯れて。 それからちょっとだけ話した。
引退のこととか。そういう寂しい話はしたくなくて。 あえてどうでもいいような話ばっかりしてた。 そういうあたしの気持ちを。そうるが察してたかは分からんけど。 サークル関連の話を全く出してこんかったあたり。 そうるも同じ気持ちやったんちゃうかなって思う。
ナイターの後は疲れてて。さらに戯れで疲れて。 2人してトロトロまどろみながら。話すのは落ち着く。 だいたい先にそうるが。限界が来て寝てまうんやけどね。 2人一緒にいるときに。先に寝られるとちょっと寂しいけど。 「起きてやー。」って。そうるを揺すりたくもなるけど。 でも寝顔を独り占めできるから。あんまり気にしない(笑)。
そうるの静かな寝息が聞こえてきたら。 あたしは閉じてた目を開けて。そうるの方を見る。 暗闇に目が慣れてくるまで。その寝息に耳を澄ます。
あぁ。ただスースー言ってるだけやのに。 それがそうるが出してる音やから。いつまでも聞いていたくなる。 たぶんこれが。電車とかで隣になった人の寝息やったら。 当たり前の話。うっさいなーとか思うんやろうな(笑)。 なんかもう。そうるやったら何でも許せるようなあたしになってそうで。 恋は盲目。まさにそれやなぁって。今さら思ったりする。
窓際に置いたベッドを。月明かりがぼんやり照らす。 そのうち。そうるの顔がだんだん見えてくる。 そうるはいつも仰向けで寝るから。光が顔全面に当たる。 キレイやなぁ。あたしは思わず溜め息をつきそうになる。 でも。そうるを起こしたくないから。息を潜めて。見つめる。
あたしはそうるの顔で1番好きな部分は。瞳。 小さな鼻も。薄めの唇も。もちろん大好きやけど。 そうるの瞳は。あたしの心を一発で射抜く。 それはもう。メドゥーサかってくらいに(笑)。
見つめられただけで・・・むしろ見つめられなくても見てるだけで。 あたしの心拍数は上がりまくるし。心は完全に奪われるし。 そーゆう意味で。あたしは。あの瞳にめちゃめちゃ弱い。 でもでも。そんなそうるの瞳は閉じられてる状態で。 あたしはどうにか落ち着いて。そうるを見つめることが出来る。
小さく開かれた口から零れる息。吸い込まれる息。 そうやって動く唇を見てると。どうしてもキスしたくなるのはあたしだけかな。 欲情かもしれんけど。思い始めたら止まらんし。
あたしは体を起こして。ゆっくりとそうるに顔を近づける。 10センチの距離で止めて。頬にそうるの息を感じる。 生暖かいその息に。あたしはやっぱり酔わされて。 チロっと舌を出して。そうるの唇を嘗めてみる。 それでもそうるが起きないことを確認して。今度はキスをする。 柔らかい唇の感触。あぁ離したくないな。唇。 でもそうるを窒息させるわけにはいかんし。あたしは惜しみながら唇を離す。
そうるは苦しかったのか。少しだけ体を動かす。 (あ・・・起きてまう・・・。)そう思って。あたしはまた横になって。 (何もしてへんよー。)って感じで。寝たフリをして。 そして幸せに包まれたままで。眠ってしまった。
ねぇそうる。これがあんたの知らないあたしの時間。 寝込みを襲ってるような。ちょっと悪いことしてるような。 変な気持ちになるけど。でも幸せな時間やねん。 たぶんそういう状況が。あたしを掻き立てるんやろうね(笑)。 いつもいつも攻められるばっかりのあたしが。唯一そうるを攻める時間。 あんたの寝てるときにやってるあたり。あたしもズルイけどさ(笑)。
ねぇそうる。眠りながらでも。あたしのキスを感じてる? あんたがあたしにしてくれるみたいに。上手なキスじゃないかもしれんけど。 あたしはあたしの最大の想いを込めて。あんたにキスしてるんよ。 あんたの知らんところで。こんなにもあんたを思ってるんよ。
でも内緒。あんたには教えてあげへん。 だってこれは。あたしだけのヒミツの楽しみやもん。
|