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男でも女でも関係ない。1人の人間として。
そうるはあたしにとって。かけがえのない最愛の人。

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2002年08月16日(金)あたしの傷。その2。

*今日の日記*

昨日そうるにメールをしました。
故障した足がやっぱり痛くて病院に行った話。
返事を要求する内容じゃなかったけど。
そうるからのリアはありませんでした。

あたしがいけないことは明らか。
きっとそうるは怒っているんだ。
だってあたしはまたルール違反をしたから。
おとといの夜。そうるの彼の誕生日の夜。
用事でたまたまメールをくれたそうるに、
あたしはついつい返事で言ってしまったから。
「今日はデートやったっぽいね。」って。
触れてはいけない彼とのことに触れてしまったから。
暗黙の了解だったルールを破ってしまったから。

あたしとそうるの間にルールが出来たのは、
これから書く決定的な事件の後のこと。
そう、昨日の日記の続きです。



*過去の日記*----------------------------------

そうると彼が付き合い始めてから数週間。
あたしはそうるの前で笑うことも、
彼の話を聞くこともわりと平気になってきた。
慣れっていうのは怖いものだと思う。
あたしは本当は苦しくて仕方なかったけど、
それでも必死に我慢し続けるうちに、
だんだん痛みを痛みと自覚しなくなってきた。

人はこうやって順応していくものなのかもしれない。
忘れられない癒えない痛みを抱えて生きていくなら、
きっとその痛みに慣れていくしかない。
あたしの中の自己防衛機能みたいなのが働いて、
いろんな神経を鈍らせていったんだと思う。
でもそれは一種の麻痺状態のようなもので、
何かの拍子に麻痺が解けた瞬間から、
それまでは全く感じなかった痛みは
激痛となってあたしを襲うことになる。
あたしはまだそのことに気づいていなかった。

あの頃のそうるはそれまでからは想像もつかない、
頭に花が咲いたようなそうるだった。
ピンクのお花畑でクルクル踊っているような、
そんな乙女モード全開状態だった。
そうるもそんな自分のことを笑っていた。
「きもいわー。うち。あほみたい。」とか、
「これはうちじゃないと思って。」とか、
困ったように笑いながら言っていた。
でもそう言うそうるが幸せなんだってことは、
誰が見ても明らかだった。

あたしはそうるを見ているのが辛かった。
日増しにそうるはどんどんキレイになっていった。
愛している人に愛されて幸せなんだろう。
それに引き換えあたしはどんどん醜く歪んでいく。
そんな自分がたまらなくイヤだった。

そうるはあたしのそんな感情に全く気づいていないようで、
彼とのことを何でもあたしに話してくれた。
そりゃ話したいだろう。あたしが逆でもきっと話したい。
そう思ったからあたしは全部受け止めて聞いていた。
本当は受け止められる心の余裕なんて全然なかった。
でもあたしは無理をするのは得意な方で。
最高の友達を演じるために必死になっていた。

そんなある日。3月の始め。
そうるはメールで言ってきた。
昨日友達に首筋のキスマーク見つけられたって。
そんなもんがついてるなんて全然知らんかったって。
あたしの苦しい気持ちなんてまだ全然知らないそうるは、
悪びれもせずにあたしに教えてくれた。
やばかったわーとか言っているわりに、
幸せそうな感じはしっかり伝わってきた。

あたしはというと。
鈍器で頭を殴られたような衝撃だった。
そうるの首筋にキスマーク・・・。
彼によってつけられたそうるへの愛のサイン。
あたしは一人妄想を広げてしまった。
2人はもうそういう関係になっているんだろうか。
そうるはやっぱりあたしよりも彼を選んでしまうんだ。
あたしは結局そうるに捨てられてしまうんだ。
そんなことを考え始めたら歯止めが利かなくなって、
あたしは布団をかぶって頭を掻き毟ってた。

次の日は日曜で。あたしはそうるには会わなかった。
そうるのメールに返事を返そうと思ったけど、
何を言っていいのか分からなくなっていた。
でも苦しい気持ちを伝えたいとどこかで思ってて、
絶対気づかれたら困るくせに少しだけ気づいてほしくて、
あたしは夜にメールを返した。
「ごめん。重症です。返事できません。」
そんなふうなことを送るのがやっとだった。
あたしがメール好きなことを誰より知ってるそうるは、
それこそ心配してすぐにメールを送ってきた。
「何があったん?大丈夫なんか?」って。
優しさを感じた。でもあたしは何も返せなかった。

そして次の日は練習で。
あたしはそうると顔を合わせるのが辛かった。
今まで通りに笑っているつもりだったけど、
そうるにはカラ元気だってしっかり見抜かれていた。
そして練習後そうるはまたメールをくれた。
「ほんまに大丈夫か?冗談抜きで心配や。
 うちでよかったら話してや。」
あたしがしんどい原因が自分にあるとは思ってないから、
そうるのメールはちょっと的外れだったけど、
長い長いメールの中で散々あたしのことを思いやってくれた。
そうるなりの言葉であたしを励ましてくれた。

彼の存在があってもあたしも愛されていること。
ようやく少しだけ分かるようになってきた。
そうるはこんなにもあたしのことを気にかけてくれる。
もう十分だ。これ以上望まなくてもいいじゃないか。
これ以上望んで自ら傷つかなくてもいいじゃないか。
そう思えてきた。ようやく、ようやくだった。

でも皮肉なもので、そのメールの最後に。
決定的な言葉がつづられてあった。

 余談も余談。どうでもいい話。
 キスマーク見つけられた時は相当やばかった。
 そして昨日ついに・・・。
 でもあんまりいいもんじゃないってことだけ言っておく。
 ただ普通に抱かれてるほうが絶対心地いい。
 以上爆弾発言でした。

・・・・・・・・・・・・・・・。あたしは言葉をなくした。

キスマークが鈍器で殴られた衝撃なら。
この言葉は鋭器で貫かれたような衝撃だった。
麻痺していた神経がズタズタに切り裂かれた。
一瞬のうちに鈍っていた感覚が戻ってきた。

それは激痛だった。
そしてあたしは狂ってしまった。

ずっとずっと我慢して堪えてきたものが、
せきを切ったように溢れ出してきた。
ぐちゃぐちゃなまま押し殺してきた気持ちが、
後から後から溢れ出してきた。

 そうるのことが好き。どうしても好き。
 彼のことが嫌い。大嫌い。いなくなってほしい。
 そうるに好かれたい。ずっと一緒にいたい。
 そのためには理解者でいなきゃいけない。
 がんばらなきゃ。あたし。我慢しなきゃ。
 辛くても耐えなきゃ。笑い続けなきゃ。

 痛いよ。辛いよ。泣きたいよ。
 あたしそんなにいい子になれないよ。
 もう笑い続けられないよ。

 そんなことないよ。まだ大丈夫だよ。
 そうるとこれからも一緒にいたいんなら。
 もっとがんばらなきゃダメだよ。

あたしの心の中でずっと渦巻いてきたもの。
ドロドロした感情。葛藤。
それが全部全部溢れ出してきてあたしを壊した。


ねぇそうる。心ってほんまに壊れるんよ。
あたしはあの時その音を聞いたもん。
まるでガラスで出来たハートを落としたみたいに、
ものすごい音がしてあたしの心は壊れたんよ。
その後はもうわけが分からんくなって。
体のどこにこんなに涙があるのかと思うくらい、
後から後から涙が溢れてきて。
そしてプツンと何かが切れてしまったんよ。

もうどうなってもいい。
後悔するかもしれないけど。
もう知らない。言ってしまおう。
あたしの気持ちを吐き出してしまおう。
きっとあんたを傷つけるけど。
どうしようもなく悩ませるんだろうけど。
もう知らない。だってあたしは傷ついたもの。
あんただって傷ついてしまえばいい。
あんたがあたしにしたように。
あたしもあんたを傷つけてあげる。

あたしは最低だった。
そして言ってしまった。
ずっとずっとあんたのことが好きだったと。
あんたが思っている以上にあたしは、
あんたのことが好きでたまらないんだと。
聞き分けのいいフリをしてきたけれど、
本当は嫉妬で狂いそうになっていたんだと。
勢い任せであんたにぶつけてしまった。

-----------------------------------------------

・・・やっぱり傷は癒えてはいないみたいです。
思い出すことは傷口を抉るような行為で、
そこからはあの日と変わらない鮮血が流れます。
でもそうるへの愛は絶対に変わらないと、
あたしは言い切ることが出来ます。
だから辛くても書くことが出来るのです。

長い長い日記、最後まで読んでくれてありがとう。
そうるの返事、あたしたちのその後についてはまた明日。





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