戯言。
-
2004年05月16日(日) 074.ベストフレンド[幻水/フッチ&ナッシュ]
ルックが....彼が本当の敵なんだと分かった時。
愕然とした。
あの彼が?
石版の前でしかめっ面をしていた彼。
最初に会ったのは湖の古城、第一声は「何か用?」だった。
面倒くさいと言いつつも結局はいつも付き合ってくれた彼。
竜のくせに木の上から降りられなくなったブライトを何度も助けてくれた彼。
ちょっとからかっただけなのに躊躇せず切り裂きを発動した彼。
その後決まって軍師殿に叱られ、文句を言いながら片付けをしていた。
彼とサスケと一緒に技を繰り出したこともあった。
....何故か自分たちまで切り裂かれたけれど。
他にも沢山思い出はある。
グラスランドでの争乱。
力を貸す、ということはまたあの時と同じ状況になるんだと。
また彼と一緒に戦うんだろうと。
この15年で随分伸びた背で、見下ろしてやろうと。
そう思っていたのに。
長い旅の末辿り付いたかの城に彼はいなかった。
彼が守っている筈だった石版は、城近くの丘にひっそりと置かれていた。
周りには雑草が茂っており、石版自体も手入れなど全くされていないようだ。
この惨状を彼が見たらさぞかし怒るだろう、そう思った。
「お、フッチか。ごくろうさん」
突如降ってきた声に驚いて振り向くと、見知った顔。
「....ナッシュさん?」
やあ、と片手を上げて微笑み、こちらに歩いてくる。
そして自分の手元を覗き込み、驚いたような声を出した。
「へーえ、この石版ってほんとはこんな色だったんだな」
[俺んとこ特に綺麗にしとけよ]などと言いながらしげしげと石版を見ている。
そして俺の横に座り込んだ。
「....どうしてここに?」
そう問うと、少しだけ困ったような顔で。
「たまに、来るんだ」
「そうなんですか」
「ああ。ここを吹き抜ける風は何故か優しい気がするんだよ」
そう言って、空を見上げて目をすがめた。
この人も彼を知っているのだろうか。
そう問うこともできず、隣に腰を下ろし、一緒に空を見上げた。
そんな俺の心境を慮ってか、向こうから問いかけてくる。
「お前さんもあいつを知ってるんだよな」
「俺も....ってことはあなたも?」
聞き返すと、懐かしそうに少しだけ目を細めて肯定した。
「ああ。随分昔にな」
「昔?」
「30年近く前になるか。道案内してもらったんだ」
「....そうですか」
「チビの癖に小生意気でさ」
「彼らしい」
「だよな。その後、デュナンでも会ったっけ....俺はすっかり忘れてたんだが」
「デュナンで?」
「そう。その後久々の再会がこんなことになるとは思ってなかったが」
俺もです、そう言いたいのに何故か言葉が出なくなってしまう。
暫しの沈黙の後、口を開いたのはやはりナッシュの方だった。
「あいつと戦うのが、怖いか?」
そう問う彼の眼差しはいつもと違って真剣で。
それでいて優しかったから、正直に答えた。
「怖い、のかもしれない」
「あいつを許せないか?」
「........分からないんです」
無関係な人々を巻き込んでまで自らの運命を変えようとする彼。
それは許されないことだ。
そう理解っているのに、俺は彼....ルックを憎むことが出来ない。
俯く俺の頭をくしゃりと撫でて、自分の方に引き寄せる。
そして言い聞かせるように、ゆっくり話し出した。
「かつての友人が今は敵....辛いよな」
「...........はい」
「でも、逃げちゃ駄目だ」
「............」
「本当に大事な奴なら、殴ってでも目を覚ましてやれ」
そう言ったナッシュは、寂しそうに笑った。
「俺にも昔はそういう奴がいたっけ。でももう死んだよ、随分前にな」
「....亡くなった、んですか?」
「ああ。後悔したよ、勿論今も後悔してる。何であの時止められなかったんだろう、って」
だからお前には後悔して欲しくないんだ、そう言ってまた微笑む。
微笑っているのに、彼は泣いているみたいだった。
肩にもたれて、頭を撫でられて。
29にもなってこんなことをされるとは思ってもみなかったが、とても心地が良かった。
いつもより近くで聞こえる彼の柔らかな声に、ひどく安堵した。
「なあ、フッチ」
「はい」
「あいつさ....止めてやれるといいな」
「はい」
「でもって説教してやれ、『石版放って遊び歩きやがって』って」
「....はい」
そう答えた俺の髪を、風がふわりと梳いていった。
「この戦いに決着が着いたら、またここに来ませんか?」
「決着が着いたら、か。ああ、いいぜ」
「約束ですよ?」
「ああ、約束だ」
全てが終わった後、ここで彼を見送ろう。
相手が彼であろうと、もう躊躇いはしない。
その勇気を、この人にもらったから。
それでも君が歩みを止めてくれるのを、少しだけ期待してもいいかな?
本当は優しい人だって、俺たちは知っているから。
だから、ここを歩いて去っていく君の背中を見られることを祈っているよ、心から。
*****
ふと浮かんだシチュエーション。
フチナツ....ではない。ナツフチでは絶対無い。
フッチ、辛いだろうなぁ。そう思っただけ。
ちなみにナッシュの死んだ友人=ザジなんでそこんとこよろしく。
それとナッシュとルックの出会いとかブライト云々は捏造。
でもルク→ナツは脳内公式設定だったりする。
でもってオマケのオチ。
「ところでデュナンでルックに会ったんですか?」
「ああ、あの時か?それがいっちょ前に迫られてさ....」
「迫った?」
「そ、『僕のこと忘れてるって言うならカラダで思い出させてあげるよ』とか言っていきなり押し倒されそうになったんだよな....いやぁさすがの俺も自らの貞操が危ういかもとか思ったね」
「ルックの奴....そんなおいしいことを」
「おいおいちょっと待て、なんだその[おいしい]ってのは」
「文字通りですよ。貴方を押し倒すなんてそんなおいしい」
「......ちょっと待て、なんで君の顔がこんな近くにあるんだフッチ君」
「ルックが良くて俺がダメなんてことはないですよね?」
「だぁ〜っ、どっちもごめんだっての!」
わはは、フチナツ妄想が脳内溢れ返ってるぜ....(爆
ナッシュに迫り倒すフッチ、面白ぇじゃねぇの。
その勢いに負けるナッシュ....いいかも(爆
で、ナッシュスキー50Qに答えようと思ったんだが、外伝再プレイしなきゃならんような質問があったのでまた今度(駄目じゃん