ミドルエイジのビジネスマン
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| 2004年02月08日(日) |
吉村昭の「海の史劇」を読む |
先週のある日、心が荒れていたので誰かと飲みにでも行こうかと思ったが、みんな忙しそうだった。またひとりで丸ビルに寄った。本当は、美味しいお蕎麦でも食べて帰るつもりだったが、満員で入れなかった。ハンバーガー屋さんでさえ、行列ができる始末だ。
そこで再び本屋さんに行くと吉村昭の「海の史劇」が目に入った。今年は日露戦争開始百年に当たるというのは新聞で読んでいた。以前、別の本で読んだこともあるし、二百三高地の映画も見たことがある。今さら乃木将軍や東郷元帥でもあるまいと大分迷ったが、結局新潮文庫を手にした。
ロシア皇帝に見送られ、フィンランド湾のクロンスタット港というところからアフリカの炎熱地獄を越えて喜望峰経由で極東まで、ようやくたどり着いたロシア海軍の事情が詳しく冷静に記載されていて面白かった。
自分たちは安全な指揮所に居ながら、堅固な要塞攻撃に碌な偵察もせず、面子を重んじて単調な攻撃を何度も命じては犠牲を拡大していく乃木と、歴史的な「大回頭」により、戦艦の戦力での劣勢を接近戦に持ち込むことで巡洋艦等の中距離火力を生かした態勢に持ち込んだ東郷のコントラストも印象的だった。この作戦、本の中では東郷がロシア軍の砲撃の精度や波浪の高さを計算し尽くした上で反転したことになっているが、やはり、大きなリスクテイクをしたのだと思う。
遠い、百年も昔の海の物語が吉村昭の抑えた筆致の中に昨日のことのように浮かび上がる。そうして、百年前の幾多の犠牲の上に今の平和な日本が築き上げられたかと思うと自然に頭が下がる思いだ。
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