ミドルエイジのビジネスマン
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2003年12月14日(日) 静謐ということ

会社の研修のときに電車の中や休み時間にでも読もうと思って買った宮本輝の「錦繍(きんしゅう)」と「道頓堀川」を読み終わった。

読んでも結論の出ない純文学の小説はこのところほとんど読んでいなかったが、新聞で宮本輝の特集をしていたので目に止まり、昔「泥の河」という暗い映画を見たことを思い出し、あれもこの人が原作者だったかということで何冊か文庫本を手にしたのだった。

大阪や神戸が舞台であるにもかかわらず、騒々しさのない、不思議な静謐さに覆われた世界が展開している。主人公の周りでは人々が騒ぎまくっているのだが、なんらかの不幸を背負っている当の主人公はどんな中でも静かな心の世界を持っているかのようだ。年の瀬ということでもあるまいが、これでもか、これならどうだ、というくらい騒々しい騒ぎに巻き込まれている身としてはまるで別世界だ。

「錦繍」には大事件の後、それが当然のことのように離婚してしまった夫婦が偶然に再会し、当時とその後の10年間の真実を語り合うという物語。離れて取り返しがつかなくなって、初めて深く理解しあうことができることも実際にあるのだろうか。

参ったのは、その主人公たち、今が37歳と35歳で大部長から見れば大変若く、せっかく再会したのだからゴシャゴシャ言ってないでまたくっつけばいいじゃないかと言いたくなった。まあ、会って直ぐ再婚したのでは小説にならないか。お二人には、人生終わったようなことを言わずに、どうか力強く生きて行っていただきたい。

道頓堀川に映るネオンの景色がモチーフになっている「道頓堀川」には喫茶店に住み込んでいる孤独な学生が見る夜の街に生きる人々の姿が描かれている。オカマやお姐さんが登場してかなり騒々しいはずなのに読んでいても不思議と音が聞こえてこなかった。あの貧乏学生は、マスターの喫茶店を譲り受けていまも元気にしているだろうか。

改めて考えてみると、本を読んでも喫茶店でそれについて誰か(女性ならなお望ましいが)と語り合うなどということは、もしかしたらもう無いのかもしれない。




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