DiaryINDEX|past|will
今日、もう一つの難関に挑戦してみた。
苦手だと思う人への態度。 そう、職場の上司へ話しかけてみた。 他愛のない世間話など絶対にできない人だと決めつけていた。
いつも冷たい言葉を浴びせられる度、 この人には心がないと思ってきたのだ。
相手に望むなら、まず自分から。
いつも、出社してすぐにブラックの缶コーヒーを飲む上司のために とっておきのコーヒー豆で、とっておきのコーヒーを ポットに入れて持って行った。 飲み物には人を癒す力があると私は信じている。 ならば、人と人の縺れた糸をほぐす力もある筈だ。
無粋な顔をして遠慮の言葉を告げる上司を無視し、 カップにコーヒーを注いで目の前に置く。 コーヒーの香りが狭い事務所中に広がって、 上司はやっと口を開いた。
「いい香りですね。」
「でしょう? 味もいい筈ですから。 なんたって、愛情を込めてドリップしましたから(笑)」
とびっきりの営業スマイルで、お茶目に言ってのけた私。 この時点で自分自身に「ブラボー」と叫んでも良いと思った。
少しだけ事務所の雰囲気が変わった。 確かに変わった。 それはいつも無粋な顔をした上司の表情が、 柔らかくなったことを意味していた。
もしかしたら、人はこれをおべっかと呼ぶのだろうか。 自分の心に反した行為。 だけど、私は職場の雰囲気を明るくしたいだけなのだ。 出勤時間が近づくたびに、胃が痛くなるのはまっぴらだ。
故に、私は自分から折れることを選択した。 私が折れて、楽しく仕事ができるならそれも結構。 だけど今のところ(主婦仲間には)賛同者無し。
そしてゆくゆくは、皆が楽しく仕事ができる環境にできるのが理想。 自分だけが良い思いをしようとは思わない。
帰り際、上司に呼び止められた。 「今日はお疲れ様でした。 それから、コーヒーご馳走様です。」
初めて上司の口から聞く「お疲れ様」であると思った。 いつもは声をかけてもチラリとこちらに顔を向けるだけ。
どうぞ、他の人達にも「お疲れ様」と言ってあげてほしい。 口に出さなくとも、行動で示さなくとも、 楽しく仕事がしたいと思う気持ちは一緒なのだから。
心がないと思っていた人から聞く労いの言葉は、 想像以上に嬉しいものだった。 心がないのではなく、心を表現するのが下手な人だったんだ。
相手に望むなら、まず自分から。
実践初日の手応えだった。
|