台所のすみっちょ...風子

 

 

母の願い。 - 2006年02月02日(木)

新年の2日から仕事だった旦那は、もう1日には東京に帰り、

妹夫婦も3日に帰ってしまったため、年明け早々、

私は実家でひとりになった。

新潟は例年にない大雪で、外に出るのも躊躇われるぐらいだったから、

自然と家の中、母との会話も多くなる。


あの日もそうだった。

夕方、母のいる台所に行くと、彼女は、

韓国語教室の宿題を食卓でやっている最中。

私は夕刊を開き、目を通しながら、その真剣な様子にチャチャを入れる。

老眼鏡の隙間から時折上目遣いに、母は私を見、

笑ったり、適当に相槌を打っていたのだが、しばらくして、

突然、何の前ぶれもなく、自分の手の平を私の手に重ねてきた。


私を見る、母の瞳は柔らかだった。

重ねられた手の温もりがじんわりと優しい。

私も静かに母を見つめた。

「お母さん・・」

なんか、そうしみじみ思った瞬間だった。

彼女がゆっくりと口を開いた。

「頼むから、家にいる時も眉毛だけは描いとくれ」



おしまい。


...




My追加

 

 

 

 

INDEX
past  will

Mail