レプリカントな日々。

2002年11月16日(土) 「イリーガル・エイリアン」ロバート・J・ソーヤー著 2002年早川書房

 今回の作品は「未知との遭遇」のようなきらびやかなものから「ソラリスの陽のもとで」のような不条理まで、様々に描かれているファーストコンタクトものです。

 「人類は始めてエイリアンと遭遇した。4光年あまり彼方のアルファケンタウリに住むトソク族が地球に飛来したのである。ファーストコンタクトは順調に進むが、思いもよらぬ事件が起きた。トソク族の滞在する施設で、地球人の惨殺死体が発見されたのだ。片足を切断し、胴体を切り裂き、死体の一部を持ち去るという残虐な手口だった。しかも、逮捕された容疑者はエイリアン・・・世界が注目する中、前代未聞の裁判が始まる!」背表紙より。

 ソウヤー氏の以前の作品にはジュブナイルの「ジャンパー」やとてもソリッドな「フレームシフト」等がありますが、今回も実に見事なエンターテイメントに仕上がっています。
 誤解を恐れずに書くなら、彼の作品は内容の高度さよりも読者を楽しませるエンターテイメント性に長けているということになります。
 ミステリー仕立ての今回のお話も、後半のどんでん返し的面白さについつい微笑みつつ睡眠時間が削られてしまうこと請け合いです。
 以前に「ミステリーは眠りを殺す」という特集をダ・ヴィンチという雑誌が組んでましたけど、いえいえSFもちゃんと眠りを殺してくれます。
 実にアメリカンなエンターテイメントだなぁと思わせてくれるのが、登場人物の方々。このあたりは好き嫌いの別れる所でしょうけど・・・エイリアンの歓迎会の出席者にスティーブン・スピルバーグが出てきたり、その他にもSFファンならお馴染の人たちが当たり前に登場してきます。
 そしてまたO・J・シンプソンの判例を元に様々な法廷劇も展開しますので、「LAロー、7人の弁護士」だの「アリーMYラブ」といった法廷ものがお好きなら文句無しに面白いと感じられるでしょう。
 三権分立の良い?点なのか、司法が「エイリアンだろうとなんだろうと、殺人を犯したら裁く」と言いきり、大統領でも口出しが出来ないとするあたりは、現実にそうなったらアメリカはどうするんだろう?と考えさせられるものがありますが・・・。(をいをい・・・マジに考えるなよ)
 エイリアンを裁く法廷の陪審員を選定するために、SFファンやUFOマニアを排除する目的でされる質問が面白いです。
 「ミスター・スポックの父親の名前は?」
 うーむ・・・わ、わかりませんでした・・・。
 常に前作とは全く違うテーマを扱うソウヤーさん、又々「ソウヤーにハズレ無し」の伝説を強固なものにしたようです。

 今作のオヤジ好みのギミックは「モノフィラメント切断器具」
 この道具は「端っこをどうするか?」がかっこよさの決めてなんですが、トソク族は見事に「道具」に仕立てています。過去のSF作品の中では一番かっこいいのではないかと。
 最近では当たり前のようにSF作品に出てきますけど、何度読んでも「欲しい」の一言です。
 暴走族が走る道路に張っておきたいんですが・・・。
 あ、そういえばピアノ線を使ったそういう映画がありましたね。







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