あまおと、あまあし
あまおと、あまあし
そうげんの種のおはなし 2004年11月17日(水)

ここに一粒の種があります
種を割れば
水があふれ出るでしょう

種を飲み込むのは
鳥だけではありません
獣たちは季節になれば木の下に集い
待つのです
満ちてくるのを

朝のひかり
日中の風に
枝はふるえ
ときおり種は鳴るのです
ゆるるん、ゆるるん、と

それはいつか生き物の腹に入り
種が奏でる鐘の音です
一足ごとにひろがり
いつか力尽きた獣が
翼をたたんだ鳥が
大地に落ちたその後に
あふれ出る水の音なのです

夜が来ました
今日はもう、種が落ちることはないでしょう


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 著者 : 和禾  Home : 雨渡宮  図案 : maybe