あまおと、あまあし
あまおと、あまあし
 追難 2002年02月03日(日)

年を新たにするために
古い日々を埋めるのだと
妻は庭を掘りつづけている

──お前
  雪が降るよ
  もうおよし

しかし妻は頑として
膨らんだ腹を苦しそうにかがめ
死んでしまった過去を埋めようと
泥にまみれている

──雪が何もかも
  隠してくれるではないか
  白い化粧を施せば
  見られるようになるだろう
  およし
  もう
  およし

妻が抱えつづけた昨日は
臨月の妊婦でもかなわぬほど
おおきく胎をふくらまている
それは
初詣の祇園社でも
小正月の三九郎でも
燃やすことの出来なかった
……秘密

──お前が見せたくないものを
  私が見たいと望むものか
  お前
  もうおよし
  雪に任せてしまえ
  その胎からしぼりだして
  冷たい大地に横たえれば良い
  雪が隠してくれるだろう
  雪が隠してくれるだろう
  もう
  およし
  妻よ

庭で
妻が穴を掘っている
死んでしまった過去を埋めようと
新しい年を迎えるために



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 著者 : 和禾  Home : 雨渡宮  図案 : maybe