告白は喉の奥
L.ニトロ



やわらかな距離


ふわりと近寄る距離。
それ以上縮めることも、上手に擦れ違うことも今やできなくなっていて。

曖昧な気配を感じるだけの距離に立っている。

刺激や変化を嫌って、
やわらかな距離と時間に留まって。

花が枯れていくのを見ている優しさに似ているようで少し、本当は焦ったりもする。


目を伏せて意識的に、もしくは無意識的に
チャンスの女神様が悠々と歩いて去るのを見送っていた。

衰えた脚では一歩、踏み出すのも難しくて、
きっと、
一歩、初めて踏み出すのが一番難しいのかも知れない。


見送るつもりでいた。
枯れ始めた花を急に、慌てて育てるのに躊躇している。

女神様も少し飽き気味で、
あまり、こちらにはお寄りくださらなくなったご様子。

やわらかな距離
枯れ始めの花
触れようかどうしようか迷う自分の指先を少し、
まだ、眺めている。

2005年08月09日(火)
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