告白は喉の奥
L.ニトロ



呼ぶ声


泣いたり笑ったり、しなくなる理由かもしれなかった。


あなたは私を、変えた人。
あなたは欲望を、思い出させた人。

「だってお前、執着するものなんてあるか?」
そう言って向けられた目つきを覚えている。
「俺も自分が大事じゃないけど、俺は自分が好きだからな」
射抜かれたような見抜かれたような羞恥を覚えている。


逃げている、逃げ続けている、逃げ癖がついている。
そこまでは思い至らなかったかもしれない。
でも、私が知っている。


泣いたり笑ったり、するのは辛い。
幸も不幸も、情けないこの身には重すぎて。

誰かを羨ましいと思う気持ちを、思い出す。
憎むのではなく「そうなりたい」と思う痛みを思い出す。
したかったことをサボっていたのだと、あの人はサボらなかったからなのだと思い知る。

会いたい。会いたい。

2005年07月27日(水)
初日 最新 目次 MAIL


My追加