今日もガサゴソ
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アイツは幼なじみで、ひとつ年上だったんだ ひらがなで「ゆき」って名前だった 気の強ぇえ女で、俺、よくいじめられたよ ガキの頃はケンカなんかしょっちゅうしてたけど お袋が相手がいくら悪くても女をいじめちゃいけねぇっていうからよ ケッコウ、がまんしたな 小学校に入ったらあんまり遊ばなくなったけれど 学校で行き会うと挨拶代わりにからかわれたりしたな 俺、野郎ばっかの四人兄弟だろ なんとなく女の兄弟ってこんな感じかなって思ったりしたよ すぐ上の姉貴なんてよ、目の上のたんこぶみてぇなもんじゃねぇのか? 口じゃ女にかなわねぇしな
俺が五年生の時だったけど ゆきがM市の医大付属に入院したんだ 肺炎だとか何とかいっていたけど詳しくはしらねぇんだ 気は強ぇえんだけどカラダ弱くてよ 山んなかの小せぇ学校だったからよ アイツがいないとケッコウ寂しいんだ
それで冬休みになってから友達とふたりで見舞いに行ったんだ M市まで汽車で二時間ちょっと 乗り換えもあるしな 鈍行列車でトコトコだもんな
ところがよ、病院に着いたら 「年末は自宅療養です」とかいってよ すれ違ってやんの ガックリ来たぜ しょうがねぇからまたトコトコ戻ってよ 家まで見舞いに行ったよ
ゆきは元気そうだったよ 布団にいたけど身体も起こしていたしな 嬉しそうになんか喋ってよ ホッとして帰ったのさ
そうしたら次の日、容態が急変して夜中にころっと死んだっていうんだ そんなの信じられっか? 昨日、笑って喋ってたのによ
葬式の時、ゆきの友達がいうんだ
あんたあの日お見舞いに行ったよね あの日の夕方、私もゆきのとこに行ったんだ ゆきがあんたのことばっか喋っててさ スゴク喜んでいたんだよ ゆきはあんたのことが好きだったんだ あんたは知らなかっただろうけど 最後にゆきに会いに行ってくれてありがとう、だってよ
ありがとうだってよ 俺はどうすりゃいいの いきなり死なれてよ
ゆきの担任が墓にすがって泣くんだ オメェら勝手に死ぬなよ ゆきみたいに生きたくても死ぬ奴がいるのに テメェの勝手で死ぬなんて絶対にダメだっていうんだ 俺もそう思う そんなに死にてぇなら その命、ゆきにくれてやれって思うんだよ できるわきゃねぇけどよ でもよ 死にそうな誰かのために俺にできることがあるんなら 俺はなんだってやるぜ 何にもしてやれねぇうちに死なれるのは 金輪際、いやだかんな
え? 死にそうだから愛してるって言えだぁ? ふざけんなバカ野郎 くそ〜、ゆきのはなしなんかするんじゃなかった。
おい、泣くな、バカっ!
泣きたいのは俺の方だっちゅーのっ! ったく、女ときたら 俺の純なハートに土足で踏み込んできやがって 暴れていきやがる 俺はもうボロボロです
俺はね、愛してるなんて口が裂けたっていわねぇぞ。 いってどうなるんだ? ゆきが生き返るってんならナンボでもいうぞ。
バカ、泣くな!
わかったから、泣くな な、 俺が守ってやるから 俺はお前を見捨てたりしないから 泣くな
寂しかったら慰めてやる、なんだってするから泣くなぁぁぁぁ! まるで俺が悪いみたいじゃねぇか チクショウ なに頷いてんだよ
え?
俺が悪いのか? ハイハイ、勝手にして下さい あなたがおっしゃる通りの私です 勘弁して下さい では 一度だけいわして頂きます
よっく聞けよ、
いいな?
俺に黙って死ぬな
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