全てフィクションです 【DRESS】 - 2003年12月18日(木)木戸は振り向きもせずに僕を引っ張り そして薄暗いビルの階段を上り喫茶店に入った。 「まったく・・・エレベーターくらいつけて欲しいよ」 と木戸はふーと一息吐いて椅子にドッカリ座った。 その木戸の顔をしみじみ眺めてみる。 なぜ昔苛めていたはずの僕をこんな所に連れ出すのか あれほど馬鹿にしていた女装を、なぜ彼がしているのか 僕は冷静な顔をしながらも頭の中は錯綜中だ。 「久しぶりだな」 そう言って木戸は微笑む。 僕は、実は先日オカマバーで木戸を見かけた事を話した。 すると木戸が あそこの店には自分の父親の友人の息子が居るのだと言った。 小さい頃からの付き合いで、この世界(女装の事だろうか)に入る 決心をつけてくれたのも彼女の存在が大きかったと言った。 多分あの時僕と話していた人だろう。 そして、女装を始めたきっかけになったのが 「藤沢、お前に近づきたかった」 どうして、僕・・・? 「俺はゲイじゃない。ストレートだ。だけど、 中学の頃、なぜか藤沢が好きだったんだ」 え・・・ええっ!? 「好きだからこそ嫌がらせをしたかったのかもしれない。 夜、お前が女の格好をして歩いてるのを見つけたとき、 俺は やった!と思ったよ。 お前の弱みを掴んで、秘密を共有した気になった。 結局周りにばらしちゃったけどな。 藤沢の秘密を知ってるんだぜって自慢したかったのかもな。 ・・・なぁ、今でも怒ってるのか」 中学の頃に酷い目に遭った事を思い出した。 学校中からの中傷、そしてあのホモ野郎に襲われた事。 もう怒ってない、とは言えずに黙っていた。 木戸はそんな僕を構う事無く 自分が女装に嵌まっていくまでを語り続けていた。 僕は・・・上の空だった。 -
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