...ねね

 

 全てフィクションです

【父との秘密】気付かなかった君が悪いわけじゃない - 2002年07月21日(日)


父と二人、部屋に残されるのがなんだか怖くて
あたしは毛布を体に巻きつけて弟の後を追った。
彼は居間へ行き電話を手にとっていた。

早く、今すぐ帰ってきて。
姉ちゃんが・・・大変な事に・・・

母に電話したのだろう。
これで、何もかもが家族に知られる事になる。
弟にだけは、知られたくは無かった・・・が、助けてくれたのは弟だ。
電話を切って振り向いた弟が、毛布に包まったあたしを見て、また泣いた。
泣きながらあたしをソファーに座らせて一旦いなくなり、
弟のパジャマのズボンを持って戻って来た。

「これ、はきなよ」

まっすぐに弟の顔が見られない。
ありがとう、と言って背中を向けてズボンをはいた。

背後から「今ママが帰ってくるから」と声をかけられ、
うん、と頷いて弟の顔を仰ぐと、彼は泣き出してこう言った。

俺、気付かなかったわけじゃないんだ
もしかしたら、って思う事は何度かあった
こういうの、一度や二度じゃないんだろ?
でもそんな事信じられなくて・・・
まさか本当に家族であんな事があるなんて信じたくなくて・・・

うん、そうだろうね。あたしだって自分がこんな目に遭うなんて信じたくなかった。
ショックな事があると人格が分裂する人もいるらしいけど
そうなれたらどれだけ楽かと考えたこともある。
でも、実際に起きてしまった事だし
弟が気付かないのが悪いわけじゃない。


もうすぐ母が帰ってくる。
それは静かな、長い長い時間だった。



-




↑エンピツ投票ボタン
My追加

 

 

 

 

INDEX
昨日  明日

Mail