CYMA’S MURMUR

2005年07月21日(木)   世界の片隅



また、ロンドンでテロがあった。
本当に、際どいタイミングで旅行していたものだと思う。

イギリスでは、イスラム系の人への嫌がらせや襲撃が
既に600件を超えているとニュースで言っていた。

このようなテロは、いつ日本で起こってもおかしくないのだろうと思う。




ヒースロー空港へ向かうタクシーは、
伝統的なブラックキャブではなくミニキャブだった。

スーツケースを積み込むスペースの問題で、
私は助手席に座った。
そのため、ドライバから質問攻めに合い、
にわか英会話教室のようだった。
本音を言えば、放っておいて欲しかったのだけれど。

どこに行ったか、何を見たか、
今まで他にどの国に行ったか、
好きな街はどこか・・・

面倒だったので、適当に答えた。

「Londonも好き。みんな結構親切だし」

「Londonの人が親切なんてことはない。人種差別がある。
 私はバングラディシュの出身だ。
 もちろん日本人に対してはそんなことないかもしれないが」

おいおい、勘弁してくれよ〜。
私はただの通りすがりの観光者なのだ。
こんなとこで、racismについて議論する気はない。

カーナビは日本にもあるか、
免許は持っているか、
持っているのに何故運転しないのか、
日本からここまでの航空券はいくらか、
何時間くらいかかるのか・・・

止むことのない質問。

空港が近づいてきたころ、
カーラジオからテロのニュースが流れた。

「テロ、テロ、テロ!
 どこもそのニュースばかりだ。
 もとはといえば、アメリカがイラクに侵攻したからだ。
 アメリカのイラク侵攻は必要なことだったと思うか?」

あちゃ〜きたよ、微妙な質問が。
大体私の英語力はそういう繊細な問題を扱うレベルではないのだよ。
とりあえず、無難な答え方をする。

「私は、アメリカは侵攻すべきでなかったと思う」

「そうだろう?
 サダム・フセインは確かにいい人間ではないかもしれない。
 でも、あの国の人はみなフセインのもとで、なんとかうまくやっていたんだ。
 それを他所の国が余計な介入をすべきではないんだ」

彼の苛立ちは、なんとなくわかる気がする。
白人の客が相手だったら、
おそらくこんな話はしないのだろう。

彼はまたこうも言った。

「遠くの国からやってきて、
 数日間観光して、そして去っていく。
 そういう人にはLondonは良い街かもしれない。
 でも私のようにずっとここで暮らすものには、
 決して良い街なんかじゃない。
 私はLondonが嫌いだ」

でも、あなたは自分でここで働くことを選んだんでしょ。
とは、言えなかった。

世の中には大小様々な不幸と不条理が満ちている。

でもやっぱり、個々人がどうにかしなくてはいけないことなのだ。

基本の基本では、国家も人種も関係ない。






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