遠くに崩れかけた城が見える。
…この半年、こんな風景を何度か見た。 そこに走ったことも、そこにいたこともあった。 手が届かなくて、なにもできなくて、悔しかったことも。
知ってる人がいるわけじゃなくて。 周りにハッキリ言うにはちょっと恥ずかしい理由ではあるのだけど。 なによりご本人さまが私を知らないし。
ずっと…「その日」を知らずに迎え、知らずに通り過ぎてしまうほうが、痛みがなくて幸せなのだと思ってた。 辛いものは見なければいい。 蓋をして忘れたふりをしていれば、いつかホントに忘れるだろう。 だけど。 このタイミングで留学を終えていたことも、そのほかのあれもこれも、最後のチャンスをどうするのかって、誰かに選択肢を与えられたような気がする。 直接話せるかもしれないんだよ?って。
気が急いて早足になる。 焦らなくても間に合うから。 でもあそこへ続く安全な道なんてあるのかな? ホントのトコ、戦うのって得意じゃないし。 なんとかこそっと入れる道があると良いんだけど。
ベルヌへ急ぐ道の途中で、見知った顔を見たような気がした。 「・・・まさか・・・ね」 でも本人だったら嬉しい。 思わぬ再会…できるかな?
|