いぬぶし秀一の激辛活動日誌

2011年10月27日(木) 地方自治経営学会研究大会@岩手県遠野市

 今日から所属している地方自治経営学会の研究大会が岩手県遠野市で開催される。この学会の研究大会は、春が東京、秋は地方開催でなおかつ開催都市の地方自治体と共催となる。今回は、被災地支援の最前線拠点として大活躍をされた岩手県遠野市で開催することで、少しでも東北地方の活性化に寄与しようという趣旨だ。

 開会が朝9時50分。一番の新幹線でも間に合わないが、昨晩はたちあがれ日本の党大会があったため、前泊ができなかった。やむなく遅刻承知で出発した。地元の京浜急行の駅を午前5時25分に出発。東京駅発6時4分、新花巻から単線の釜石線に乗り換え、小さな遠野駅についたのは10時9分。


 こんなに遠いのだから、参加者は少ないだろうなと思いつつ会場に入り仰天した。なんと、この小さな街には不釣合いな大会場が満席なのだ。机も足りず、椅子だけの席も満員。かろうじて最前列に席を見つけて着席した。

 最初の講師は当学会の会長でもある片山善博慶応大学法学部教授(前総務大臣・元鳥取県知事)だ。片山教授の話し方は実に心地よく、この方の話だけでこの学会に参加する意義があるとさえ思える。以下、講演のエポック。


防災訓練の日に防災服を着てシナリオ通りの訓練を皆さんの自治体で行っていないか?シナリオ通りの訓練は「文字が読めるか」の訓練だ。

財務省主導の民主党政権は財源がつかなければ復興の補正予算を組まないと言っている。復興構想会議でも「財源だ、増税だ」とやっている。おかしい。今、手術しなければ死んでしまう患者を前にして、家族が医療費弁済計画書を持参するまで手術をしない救急病院があるか。やるべきことは財源があろうがなかろうが、やる、それが政治主導のはずだ。

 第二講は、北海道大学山口二郎教授による「新しい政局とその地方分権」である。

なぜ民主党政権は短命なのか?それは、民主党における政権交代が、自己目的化してしまっていて、政権交代をはたしたらやることがないからである。また、緊急避難(消去法)としての野田政権にも「総理になりたい」という理念があっても、テーマ性が欠落している。平穏無事から問題対応型に変わらねばいけない。

民主政治にとっては、市民に好かれることが政治家にととって重要である。その結果、大衆迎合(ポピュリズム)という問題がおきる。リーダーと市民の適切な距離が求められる。

官僚や役人の陥る落とし穴として擬似目的と本来目的の置き換えがある。例えば教育の本来目的は「子供の発達」であるはずが、擬似目的として「学力テストの点数をあげる」等となってしまう。そして、官僚主義は擬似目的に奉仕する。

大震災の復興支援には地方分権が需要な鍵になる。野田政権が震災復興と地方分権をどのように位置づけるか注目したい。

 まったく納得。地方議員の目的は「住民の最大幸福」のはずが、いつの間にか「選挙に当選する」ことが擬似目的いや自己目的化してしまっている。さらに、議会も「議論」することが求められているはずなのに、「シナリオ通りすすめる」ことが目的になってしまっている。


 次は開催地の本田敏秋市長による「遠野市の沿岸被災地後方支援」。

遠野市は内陸部にあり、地盤も固いため今回の地震での被害が沿岸部に比べて少なかった。そこで、震災直後から以前より国に提案していた後方支援拠点として活動を開始した。震災後14分後(すばらしい!)に遠野運動公園の開門を指示。夕方には岩手県警機動隊、陸上自衛隊など1900名がこの場に集結。

17時52分には第一回災害対策本部会議(警察、東北電力、自衛隊、郵便局参加)を開催。同日深夜、隣町の大槌高校に500名が避難し孤立。食料、寝具がない、との報をもって男性が本部に駆け込んできた。早朝4時50分消防隊員が大槌高校に向け、乾パン500食、毛布250枚を持って出発。

被災後50日間で、遠野市が行って救援物資の主な支援は以下のとおり。

おにぎり(ボランテイアがにぎった)14万食、燃料3500缶、衣類、寝具12万5千枚、米3800袋、水、飲料10万6千本、食料11万箱

 遠野市自らも被災しながらの支援はすばらしい。それにしても、沿岸自治体や遠野市から「後方支援施設」の建設要請の提案書を3年も前に受け取っていながら、放置していた政府の怠慢はなんだ!

 そして最後は、偶然にも8月に視察に行った葛巻町の鈴木重男町長による「再生エネルギー開発先進自治体、葛巻町」だ。内容はすでに視察でうかがっており、この日記でも書いたので省略する。

 懇親会を同じ会場で行うために、しばし別会場で「語り部」と「神楽」を見せていただく。せっかくなら最前列でとずうずうしく空いている席に座ると、なんとお隣は片山前総務大臣(元鳥取県知事)だった。

 そこでさっそく自己紹介(自衛隊生徒4年生の時に、鳥取県美保基地にいた)と名刺交換をし「先生が常々おっしゃっている地方議会はほとんど八百長だ、というフレーズはいつも使わせていただいています」と話かけた。

 すると片山前大臣は以下のように応じられた。

そうなんです、シナリオ通り仰々しく行うことが議会だと勘違いしている事務局や議員が多すぎるのです。先日、被災地に出かけたら、ある役人が「議場が崩壊して議会が開けない」と嘆いていてびっくりしました。

体育館でも、学校の教室でも、どこでも議論は出来るはずなのに、議場という非日常の空間がないと議会ができない、という感覚がだめなんです。

 おおいに納得。そのとおりである。この瞬間だけでも遠野に来た価値がある。



 そして懇親会。いつもながら、まったく知らない全国の市長、町長、自治体幹部、議員と知り合える楽しい時間だ。今回は、福井県高浜町のイケメン町長さんととても親しくなった。ぜひ、町役場をお訪ねしたいものだ。

 宿泊場所が遠野に確保できなかったため、二次会はなしで花巻市内のホテルまで移動。真面目に寝ることにする。明日は7時から被災地、陸前高田に半年振りに向かう。
 


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