いぬぶし秀一の激辛活動日誌

2008年12月01日(月) 防衛省が条約違反??自衛隊生徒制度

 私はいささか変わった高校生時代を過ごした。それは「自衛隊生徒」というものだ。これは、陸海空の技術陸・海・空曹を養成するもので、中学卒業後4年間教育を受ける。航空自衛隊と陸上自衛隊の生徒は旧陸軍の幼年学校の一部を模倣しており、我々の術科(専門)課程での各コ−ス名の頭には、幼年学校生徒の呼称だった「KD(略称:カデ)」という文字が冠されていた。また、海上自衛隊生徒の制服は、旧海軍の予科練習生の七つ釦を着用している。


 ただ、幼年学校や予科練と違うのは、卒業後である。幼年学校は必ず陸軍士官学校に進学し高級将校への道が、予科練も海軍少尉に任官されていた。が、自衛隊生徒は、3曹(伍長)が約束されているだけだ。

 陸上には現在生徒出身の将官が9名いるが、いずれも生徒卒業後、防衛大学校に進学したので、「生徒」だから将官になった訳ではない。航空自衛隊ではいっとき将官がいたが、人事畑の防大出身者が「生徒」に対して否定的なため、現在は将官はいない。

 ちょっと自慢するが、各自衛隊生徒は中学卒業時の成績が各学校で1ケタ以内でないと入れない。昭和47年当時、東京都で航空自衛隊生徒合格者は3名だった。昨年は大田区から1名が合格したが、日比谷高校に合格したので、そちらにいってしまった。この段階では、実は防大よりレベルは高い!

 さて、その「生徒制度」がついに廃止になってしまったのだ。政府の総人件費削減制度の一環としての措置である。たかだか、年間50名の三等空曹
を養成するために、4年間もかける必要は無い、との官僚判断だそうだ。

 ところが、流石は将官9名いる陸自だけは大反対。いや「廃止」とはとても言い出せなかったらしい。ただ、人件費削減はのもうということで、「非自衛官化」とすることにした。実は、自衛隊生徒は15歳の入校時から「自衛官」なのだ。従って給料は15万円余り、ボ−ナスもでる。これは出しすぎ。

 ところが、防衛大学校学生や防衛医科大学校学生は防衛省の定員外の「職員」という扱いで、年齢は生徒より上なのに「学生手当」は約10万円。そこで、この制度を踏襲して「生徒」を再編しようというのが陸自の思惑だった。

 また「武力紛争における児童の関与・権利に関する条約の選択議定書」なる国際条約を国会で批准したことも関係しているかもしれない。この条約には「18歳未満の自国の軍隊の構成員が敵対行為に直接参加しないことを確保するためのすべての実行可能な措置をとること」と書かれており、現在の「自衛官」たる「生徒」は、法的には「防衛出動」に応じる義務があるのだ。とすると、条約違反となってしまう。

 そして、いよいよ来年4月入校の54期生から条約どおり「非自衛官化」する予定が、なんと「政局」で延期になってしまった。学校名も「陸上自衛隊高等工科学校」と決められ、制服は防衛大学校と同じものに、エンジのラインを入れたものを新調した。

 が、政局により「生徒」の身分変更を規定する自衛隊法、職員給与法、防衛省設置法改正案が審議未了で廃案となってしまったのだ。生徒を含む自衛官募集の最前線である全国の地方協力本部は大慌てだ。新しい制服、学校名のポスタ−、パンフレットを中学校に配布してしまったからだ。しかし、入校する生徒は逆にラッキ−である。自衛官のままだと、給与が月額5万以上多いし、ボ−ナスにも影響する。

 ただ、わが母校、航空自衛隊は、現在の2年生53期生の卒業をもって、53年間の「生徒制度」の歴史を閉じる。最後の生徒隊長は、わが同期の小柳一等空佐(大佐)である。

 最後の卒業式には是非、みんなで参加して懐かしい「生徒隊歌」を歌って送り出したいものだ。嗚呼!!航空生徒隊!


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