いぬぶし秀一の激辛活動日誌

2008年11月01日(土) 正しい事を発言してはいけない国、ニッポン

 航空自衛隊のトップである、田母神幕僚長(空将)が、自身の論文について『政府見解と違う』ことを理由に更迭されたそうだ。ああ、またかの思いと、あの幕僚長らしい『辞め方』だなと、その勇気に拍手を贈りたい。すでに空幕長として在任1年半。来年には退任されるであろうことは周知であった。とすれば、最後に一撃を食らわして、軍人生活を終わろう、と思われたとしても不思議ではない。

 田母神幕僚長とは、前職の航空総隊(在府中基地)司令官時代に、様々な会合でお話をする機会があった。階級を意識しない飾らない『田母神節』には、部内外にファンが多い。私も、部下の『下士官(府中基地所属)』として接したり、議員として接したり、と様々な状況でも、まったく変わらない紳士ぶりはすてきだった。

 彼の発言で極めつけで素晴らしかったのは、今年4月の名古屋地裁の『空自イラク空輸活動一部違憲判決』の際のコメントだ。

『隊員の心境を代弁すれば「そんなの関係ねえ」という状況だ。』

 猛暑と危険のイラクの地で、日本の国際貢献のため、政府の命令で粛々と任務を遂行している輸送派遣部隊隊員には、日本の地方裁判所の判決が出ようと、昨日と変わらず任務にあたるだけ。

 そんな現場の隊員の辛さを、その組織のトップが代弁してくれた。とかく、偉くなる人間は現場に目を向けず、上に媚び諂うことが多いが、この言葉にイラクでは、『トップはわかってくれている』と、士気があがったことだろう。私も、こんな指揮官が直属にいたら、航空自衛隊を辞めなかったかもしれない。

 それにしても、この国はマトモな発言をすると職をなくす、というとんでもない前例が多すぎるのではないだろうか。国家の歴観や安全保障につき正論を唱え職を追われた方々を覚えている限り列挙してみた。

昭和53年 栗栖統合幕僚会議議長(旧海軍法務大尉・陸将)「週刊ポスト」誌上で「自衛隊は首相の防衛出動命令が出るまで動けない。第一線部隊指揮官が超法規的行動に出ることはありえる」と有事法制の早期整備を促す“超法規発言”を行い更迭。

昭和63年 奥野誠亮国土庁長官 記者会見で「第二次世界大戦は日本の安全のための戦いだった」と発言。じ

平成6年 永野法務大臣(元陸上幕僚長・陸将) 毎日新聞に対し「南京大虐殺はでっち上げだ」と発言。辞任。

平成11年 西村真悟防衛政務次官 「週刊プレイボ−イ」誌上にて「日本も核武装したほうがええかもわからんということも国会で検討せなアカンな」と発言。辞任。

 例え正論であっても、マスコミ受けが悪いことや、選挙で票が減るようなことを発言すると、すぐさま退陣を迫る構図は、なんとも情けない。こんなことでは、何も発言しない「いい子ちゃん」だけが閣僚や、自衛隊トップになってしまう。まるで北朝鮮のような言論統制国家だ。

 有権者の耳障りが悪かろうが、国家として必要なことをはっきりと示す気概が政治家に求められる。今のニッポンは、そんな気概を示すと身に「危害」がおよぶ。

 改めて言う。田母神俊雄航空幕僚長の勇気と見識に最大級の拍手と敬意を贈る。


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