2007年11月09日(金) |
拝啓 民主党小沢代表 (産経新聞社 正論10月号より)NO2 |
■小沢イズム実践者としての私の矜恃 自由党解党を受け継承党を立ち上げ
さて、かく言う私も、平成15年9月の解党、そして民主党への合流では、あなたにはついていきませんでしたから、その意味では保守党の人々と同罪と思われるかもしれません。しかし、小沢さん、私は、例え地方議員であっても「政治家」はステイツマンであるべきだ、と信じています。自らの信念を捨て、票や権力に迎合すべきではないと思っているのです。 民主党と合流した理由は「政権交代」という大儀のため、小異には目をつぶるということでしょう。しかし、私には、「地方から日本を変える」という自ら課したミッションがあります。たとえば大田区の職員の服務や勤務問題、業務の民間委託などを提案すると、最も大きな障壁は「自治労」傘下の区職員労働組合です。学校改革のバリアは、やはり、日教組という教員の団体であることは、誰もが知るところです。 信じられないでしょうが、つい数年前まで、区職員労組や日教組は、『教員や職員が名札を着用することは人権侵害で、各組合の「最重要闘争課題」』とまで言っていたのです。こんな前近代的な、シーラカンスのような意識を持った人々を、我々の税金で養っていては、行財政改革も、教育改革も出来るわけがありません。私は、これからも、たった一人でも、このような人々の意識改革をすすめなければなりません。であるとすれば、この人たちが支持する民主党には、太陽が西から昇ることがあっても、決して合流するわけにはいかなかったのです。おわかりいただけますでしょうか。
合流当時、多くの同志の地方議員が、この問題で悩んでいました。保守中の保守政党、自由党を選び、政策のプロ集団を自認していた志高き仲間たちだからこそ、「はいそうですか」と、あなたについていく決断は出来なかったのです。新生党以来、あなたの作る党本部には「国会議員以外は人にあらず」という企業風土が伝統としてありましたが、実は、政党をささえるのは、志高い地方議員であることは、民主党の地方組織をご覧になって、今ではおわかりになると思います。 私自身の決断は即日でした。自治労、日教組の支持する政党、また、その組織内議員がいる政党には絶対に入らない、これがぶれたら、私が地方議員である意味がなくなってしまいます。そこで、私は何人かの地方議員を募って、あなたの自由党の解散届が提出された後、平成15年12月9日に東京都選挙管理委員会を通じ、総務省に全国団体として「自由党」の結党届を提出し、受理されました。その届に添付した「自由党規約」にこう書かせていただきました。『本党は、小沢一郎氏が提唱した日本一新の理念に基づき、新しい日本の実現のために必要な政治活動を行うことを目的とする』と。
このことは、あなたのホームページの掲示板にも書かせていただきましたので、ご存知かもしれませんが、さぞかし「迷惑な野郎」だとご立腹のことと思います。自由党都連に残っていた、旗やジャンパーは許可を頂き、いまでも私の政治活動の際、使わせていただいています。自由党カラーののぼりに「民主党にはいくもんか!」と短冊をつけて街頭演説をしていると「まだ自由党ってあったんだ」とか「えらいな」という励ましの言葉を頂きます。 いつか、きっと民主党が分裂し、真正保守政党が作られる時、この日本初の近代政党につけられた歴史と由緒ある「自由党」の名前をお返ししようと夢見ているのです。残念ながら、待ちきれない仲間たちは、民主党や自民党に入党してしまい、今では議員は私だけになってしまいました。超多忙なあなたが、最初から最後まで2時間以上も結婚披露宴に列席されていたにもかかわらず自民党の公認候補として去っていった地方議員もおります。淋しいかぎりです。 今年の4月、私も3期目の選挙がありました。選挙管理委員会に提出した「所属党派証明書」は、自らが代表の「自由党」としました。多くの新聞社から「なんじゃ自由党とは?」とずいぶん確認の電話がかかってきました。前回9位、自らのブログの閲覧数も延べ40万人を超え。活動が雑誌やテレビで何度も紹介されるなど、私自身や後援会幹部は勿論のこと、対立陣営すら私の「上位当選」を疑わなかったのです。 ところが、結果は下から4位。選対幹部の唖然とした表情、自分自身の脱力感は、当選はしたものの「落選」に等しいほどのものでした。勿論、戦略ミスもあるでしょう、私の人格に問題もあるのでしょう。しかし、冷静になって考えてみると、前回、前々回ともに私は「小沢自由党ただ一人の候補」だったのです。つまり、2回の選挙で私の獲得した票数のかなりの部分が、あなたを支持する人々のものだったことに気づかなかったのです。その意味では、先ほどお話した勘違い国会議員と同じ過ちを犯していたことに気づかされました。とは言っても、そうであっても、小沢さん、私は今の民主党に入る気にはならないのです。小沢さん、あなたは一体どうしてしまったのですか。
■小沢氏の変節への疑問 共産党との連携や安全保障、靖国、イラク特措法まで
小沢さん、あなたは、政策さえ一致すれば共産党とも行動をともにすると語っていらっしゃいました。しかし、その一方で、日本の保守政治の復権をも訴えています。はたして、どちらが本音なのでしょうか。今回の参議院選挙では、相手側(自民党)のエラーとフォアボールで、不戦勝といってもいい勝利を手中にされました。しかし、はたして政策で国民が民主党を選んだのでしょうか。決してそうではありません。年金問題は確かに重要な問題です。しかし、国家の最も重要な命題は、国民の生命財産をいかに守れるか、ということが、本来最大の争点であるべきなのは、あなたほどの政治家がわからないわけはありません。それとも、あえて政権奪取のため、あやふやにしたのでしょうか。 小沢さん、私は閣僚級の政治家で、ご子息を自衛官にした方をあなた以外には知りません。あなたは、奥様に「子供を4人産んで欲しい」と言われたそうですね。3人は陸海空自衛官に、そして残りを政治家に、との想いだと聞き、えらく感激いたしました。お子様は、4名ではなく3名授かったようで、本当にご長男を海上自衛隊の幹部(2等海尉)にしてしまったのは、凄いことだと思います。自らの信念をご子息に具現させること、簡単そうでなかなかできないことです。であるとすれば、なぜ、今回の参議院選挙で国家の安全保障について明確なる政策をお出しになれなかったのでしょうか。
靖国問題についての発言についても、変節が明らかです。あなたは、昭和61年4月2日の国会答弁で「靖国神社には戦没者が祭られている。その追悼という事で誰もが自然な気持ちで行くべきで、私も今までも参拝しているし、これからもするつもりだ」と答えていますね。それがなぜ、突然、A級戦犯の合祀問題を言い出したのでしょうか。この姿は、賛否いずれの側からも、変節と映り奇異にしか思えないのです。さらにおかしな論理は『戦没者を祭るべき神社に、戦犯として処刑された者も祭られている』としたうえで、その戦犯については『戦勝国が敗戦国を裁いて下した「戦犯」というものは認められない』とも指摘されました。正に論理のダッチロールです。成り立たないロジックです。これは、民主党内左派へのリップサービスなのでしょうか。党内左派や反日活動家は、あなたのこの発言に狂喜されたことでしょう。 自由党の時代から気になっているあなたの主張に、外国人参政権賛成の問題があります。新進党であれば、旧公明党の主張への配慮と思えなくもなかったのですが、なぜ自由党になっても、外国人の参政権にこだわられていたのでしょうか。参政権は、国民固有の権利であり義務であります。それを、定住者であれ、外国人に開放することは、国家の基本的なあり方に関する重要な問題、言い換えれば安全保障問題ですらあるのです。ここにも、あなたの主張には、矛盾が内在しています。あなたは『永住外国人のほとんどは日本で生まれ育ち、まったく日本人そのものであり、今後も日本人として生涯生きていきたいと思っている』と述べながら『過去強制的に連行されてきて、帰化の手続きが困難』と、外国人参政権の必要性を述べられています。
ところが、『参政権を認めれば、帰化も促進されるだろう』と結論付けています。この論理をたどると、問題は「参政権」ではなく「帰化手続の簡略化」ということになります。過日、チャンネル桜という番組で、各地の地方議員とこの問題で討論したのですが、多くの若い民主党議員が「強制連行されたのだから可哀想」だの「国際社会では当然」などと、本質を知らない意見を述べていましたが、あなたの理論崩壊も似たり寄ったりです。感情論で語ってはならない極めて重要な問題です。自由党時代に何度か伺おうと思っていたのですが、機会を失ってしまいました。 テロ対策特別措置法延長についての態度も気になります。あなたは「今まで反対していたのに、賛成することはできない」と、反対されることを表明されています。確かに今までは、例え「反対のための反対」であったとしても、それは所詮、社民党や共産党と同じで、国政にとって大した影響はありませんでした。しかし、今回は違います。 あなたは、湾岸戦争において我が国が、130億ドルもの資金援助をしながら人的貢献をしなかったことを痛烈に批判されておられましたね。以下は、あなた自身の言葉です。
「日本はアメリカが心情的に思い描いていた「同盟」という概念から離れてしまった。日米同盟を基軸にしていくべき日本にとって、湾岸戦争は大きな「負」の遺産を残したことを忘れてはならない」
■政権奪取のために国家意識を捨てるな 真の小沢一郎への願い
小沢さん、あなたは近代日本の注目すべきリーダーとして、大久保利通、伊藤博文、原敬、吉田茂をあげておられます。そして、この人々がなぜ強力なリーダーシップを持てたか、それは、強烈な国家意識、つまり使命感、それを実現するための権力意思を持っていたことだ、と説いていらっしゃいますね。であれば、今のあなたこそ、強烈な国家意識で、この法律に反対すべきではないのです。国家の安全保障と、我が国の国際社会での地位を「政局」にするなど、過去のあなたからは想像がつかない姿です。 私は、あなたの、お役人にも、票にも迎合しない毅然とした態度が大好きでした。今のあなたは、政権奪取のため、党内各勢力、特に左派に迎合しているように見えてならないのです。それほどまでに、政権交代を果たしたいのだったら、公明党の参議院選挙対策のために新進党を分党した際、なぜ旧民社系、公明系議員に再結集を呼びかけなかったのですか。それほどまで、日本のためを思うのだったら、自自公連立政権からの離脱を小渕総理が通告した時に、少しでも譲歩して交渉できなかったのですか。 小沢さん、世間やマスコミではあなたを「豪腕」とか「強権」「壊し屋」「非情」といったキーワードで語ることが多いようですが、9年間、まがりなりにもあなたの会社(政党)の営業所長(支部長)を勤めさせていただいて、それらは作り上げられた虚像であることを知っています。あなたは、気配りの出来る思いやりのある人です。非情というのは、ただ自分のもとを去る人を追わないだけのことです。壊し屋といわれても、自ら壊したことはありませんでした。過去の解党、分党、政権離脱等いずれもあなたが仕掛けたり、望んだ結果ではなかったからです。強権は、頭の悪い国会議員が多く、あなたの遠謀深慮を理解が出来なかっただけのことでしょう。
まだ、あなたが自由党党首だった時のことです。あなたの秘書さんを経由して、岩手の支援者からの大田区の問題の陳情をお受けしたことがあります。なんとか解決の糸口が見えてきたころ、あなたと党内ですれ違いました。と、その時の言葉、私は今でも忘れません。「お世話になっているようで申し訳ないね」あなたは、このような、仔細なことにまで気配りをして下さる方であり、評価はすべて虚像ということを私はよく知っています。
だからこそ、小沢さん。今一度、真の小沢一郎に戻っていただきたいのです。今あなたのまわりにいる多くの人々は、あなたのわが国に対する理念や政策に共鳴して集まっている訳ではないでしょう。あなたのトップ営業マンとしての能力に、自分たちの就職(当選).をかけているに違いありません。 小沢さん、私は今でも、心のどこかであなたを忘れずにいるのかもしれません。もう一度あの輝いていたあなたに戻っていただきたいのです。今のあなたは、大勝利のためか誇らしげではありますが、なぜか疲労困憊しているようにも見えるのです。人間、自分に正直でないと顔にでるものです。 あなたはよく『両親から弁解やいい訳はするなといわれて育った。他人を傷つけるな。我慢せよと躾けられた』とおっしゃっていましたね。今の我慢は、決してあなたらしくはありません。我慢すべきは、そして、耐えるべきは、新進党分党だったし、自自公連立離脱の時だったはずです。いまの枠組みで耐えられたのなら、以前のほうがまだマシだと、多くの旧自由党支持者は思っています。 働かない公務員の代弁者、自治労出身の候補者が参議院選比例でトップ当選し、日教組出身の議員が6人もいる今の民主党に、はたして公務員改革が言い出せるのでしょうか。教育改革が出来るのでしょうか。はなはだ疑問です。 小沢さん、私は今でも、あなたが出て行ってしまった家(自由党)の看板を守っています。あなたのよき相談相手の平野貞夫(前参議院議員)氏が民主党との合流を決める常任幹事会で「得るは捨つるにあり(捨我得全)」と、あなたの心境を合流を渋る常任幹事に説明し合流支持を促したと聞いています。 これは、社団法人倫理研究所創始者の丸山敏雄先生の言葉です。『一切をなげうって捨ててしまう。地位も、名誉も、財産も、生命も、この時どういう結果が生まれるであろうか。まことに思いもよらぬ好結果が、突如としてあらわれる』と。 小沢さん、神は必要な時に必要な人を与える、という言葉があります。今あえて「政権奪取」のために、国家意識を捨てる決断をしないようお願いします。本当に民主党が政権を担当できる「マトモな政党」になるためには、今こそ、大久保利通のような「有司専制」、あなたの強力なリーダーシップが必要なのです。 長々と戯言を書いてしましました。今更何を言っているんだと思われるかもしれませんが、私は今日も、妻に「もう、その旗はいいでしょう」と反対されながらも、「自由党」の幟をかかげて「日本一新」の日を夢見ています。どうか、お身体をお大事に、国家のためにご活躍ください。 敬具
(本文は、産経新聞社 月刊正論10月号に掲載されたものを、同社編集部の許可を得て、HPに転載するものである)
|