いぬぶし秀一の激辛活動日誌

2004年12月01日(水) 平成16年第四回定例会 一般質問 

 本日の区議会定例会での、私の質問は以下のとおりである。

 未来の民主・自由犬伏秀一でございます。
 政府与党は先週末、国と地方の税財政を見直す三位一体改革において平成17,18年度で二兆8390億円の国庫補助負担金削減を柱とする全体像を決定いたしました。地方への税源委譲は一兆7600億円となり、16年度分とあわせた総額は二兆4160億円。税源委譲総額と補助金削減総額には4200億円もの委譲不足額が生じる、というなんとも不安なものとなりました。また、懸案でありました義務教育費削減については、二年間で8500億円を削減することとなったようであります。これは、自民党文教族の反対を『地方六団体の対案を真摯に受け止めた』と小泉総理が押し切った結果だとも報道されておりました。

 これは大問題であります。財政改革の掛け声のもと国家百年の大計である教育を地方に任せようという愚行は、とうてい認める訳にはいきません。地方六団体の提案も、地方の総意とは思えないのであります。
 国会においては、GHQの占領政策により策定された現行教育基本法改正がやっと議論の遡上に上り、地方議会からの改正の意見書提出も33都県、336区市町村となり、請願署名は400万人に迫る勢いであります。さ
一昨日は、日比谷公会堂において、中山文部科学大臣、安倍自民党幹事長代理などが出席され『教育基本法改正を求める国民大会』が開催されました。この席には、自民党全国47都道府県代表や、私をはじめ、多くの地方議員も参加し、2000名を超える参加者とともに、次期通常国会での改正を求める決議をいたしました。
 
 このような教育が重要問題とされている時期に、義務教育費の国庫負担削減は、到底許し難く、また理解できないのであります。十月上旬に松原仁代議士など数人の国会議員がイギリスにおける、教育改革の視察に出かけ報告書を提出されました。それによると、イギリスでは初等中等教育の地方分権化により、1980年代には、まるで我が国の話かと思われる様な「偏向教育」が行われており、サッチャー政権以降、教育財政の負担率を段階的に地方から国へ移し、国の教育監督権限を強化した、というのです。歴史教育には国定カリキュラムの導入すらも実行し、この改革によって初等中等教育の水準は著しく向上したそうです。この成功に自信を得た現ブレア政権は、2006年度を期して義務教育予算の全額を国庫負担にする、というのです。まさにわが国が犯そうとしている愚行と正反対のことをイギリスにおいては『教育改革』として行っているのです。教育は、なんとしても国家の責任において行うべきであります。

 そこで、今まさに佳境を迎えている現行教育基本法の問題点、また、三位一体改革が大田区の教育に及ぼす影響につきお考えをおうかがいいたします。
 
 次に、学校現場の支援についておうかがいいたします。区内には、学校運営に志を持っていながら、学級崩壊、授業崩壊、素行問題などの対応で、精神的にも肉体的にも相当のストレスを感じて意気消沈している、心ある教員が数多くいらっしゃるものと思われます。また、一部生徒の授業妨害により、まともな教育を受ける権利を侵害されている児童生徒の存在も見過ごすことはできません。
 このような問題を、学校長や当該学校教員だけで解決させるには、もはや限界にきております。勿論、現在でも指導室が支援をされているようですが、生徒、児童の問題行動の根源には、間違いなく、問題を秘めた保護者、家庭の存在があります。残念ながら、現在の学校の要員では、そこまで入り込むことは不可能であります。結果、対症療法しかしえない、結局、一時凌ぎになってしまう、という悪循環となり、志ある教員は挫折感を感じ、労働者を標榜する教員は『われ関せず』となっていくのです。

 そこで、この際、区内全公立学校を対象とした、教育センターを母体とした機動力ある支援組織を設置し、問題行動を教育委員会主導で解決すべきであると考えますが、いかがでしょうか。お考えをおうかがいいたします。

 次に、PFIによるまちづくりについておうかがいいたします。本日、蒲田保健所跡地に、商業施設『シーバップ』がオープンいたしました。私は、この区有地400坪余りを定期借地権で賃借するという平成15年1月15日の都市整備委員会発表から、その手続の公明性を要求してまいりました。同年5月28日の委員会では、あまりに内容の公開を拒む担当理事者に対し、斎藤助役が『明らかにすることが何が問題なのか、なぜ、出てこないのか私にはわからない』とまで答弁されたのです。結局、この件については4回の委員会で説明がおこなわれました。
 
 その内容を簡単に述べると、大田区はプロポーザルの結果、醍醐グループと20年間の定期借地契約を締結し、同グループは同地に、6階建てのビルを建て、スーパーのオリンピックとフィットネスクラブのテイップネスに賃貸する、というものでした。

 ところが、先月25日の同ビルのオープンハウスに出かけてビックリ!構図は、委員会で説明されたものとまったく違うのです。定期借地権契約を締結した相手先は、みずほ信託銀行であり、テナントと賃貸契約を結んだのも、この銀行であります。建物を建設した会社はSPC、つまりPFIで言うところの特定目的会社である有限会社五丁目開発、そして、この会社に出資しているのが、五丁目開発ホールデイングス。さらに匿名出資者が醍醐ビル株式会社を筆頭とした醍醐グループなのです。建物は、みずほ信託銀行に信託され、テナント収入などから大田区に支払った地代の残りが、信託配当としてSPCにはいる、という仕組みです。
 
 これは、まさに、公有地を土地信託して運用するPFIそのものではないでしょうか。なぜ、そのことを今日まで都市整備委員会においては、醍醐グループと賃貸契約を結んだ、などと答弁されていたのか理解に苦しみます。この仕組みのほうが、余程、公明正大であり、今後の大田区の街づくりに使える手法であると思います。ただ、ひとつひっかかるのは、SPCを関与させることにより、大田区が直接の土地信託をしたことにはなっておりませんが、地方自治法第238条の5、2により、土地(その定着物)は地方公共団体を受益者として信託することが出来る、と定められており、同法第237条3においては、議会の議決なくして信託してはならない、と規定されております。私は、民間活力を利用した今回のような再開発事業には諸手をあげ賛成するものでありますが、所管委員会にまで実態を報告せず、また、SPCを介在させることにより、信託として議会の議決を回避する、とも受け止められるような構図には釈然としないものがあるのであります。

 経過および、お考えにつきおうかがいいたします。大田区には、羽田空港跡地、大田体育館、旧運転免許試験場予定地など、PFI手法により、素晴らしい街づくりが実現できる場所が多く存在したします。どうか、今回の民間活力導入の手法を参考に、これらの土地についても積極的に取り組んでいただきたいと要望いたします。
 
 次に、京浜急行連続立体交差事業のために立ち退きを余技なくされた方々への支援につきおうかがいいたします。本事業は、渋滞緩和と、周辺の防災上の観点からも早期完成が望まれておりますが、そのためには、多くの区民の協力が必要であります。とくに、周辺道路や線路敷などのため立ち退きをされる方々のご協力は不可欠であります。
 
 立ち退きの結果、長い間のご商売を廃業され、ご子息がサラリーマンに転業される方。譲渡権利付賃借権という民間では普通に取引されている権利を、認めてもらえず苦慮している商業者、宣伝効果抜群の政治事務所を移転した区議会議員など、多くの区民、事業者の痛みの上に、この事業が成り立っていることを忘れてはなりません。
 
 ただ、買収するのではなく、区や他の行政が持ちうる力を総動員して、これら協力してくださる区民、事業者の生活再建、事業再構築にあたるべきであると思います。事業をやめ、再就職される方には、区が関係する社会福祉法人の就職情報の提供、ハローワークとの連携などが考えられます。また、移転で転業や、事業再構築を目指す事業者には、産業振興協会のビジネスサポーターを派遣したり、制度融資の紹介をするなど、現状の仕組みを変えなくても出来ることは、いくらでもあります。
 
 現在の、移転者への支援状況と、一層のサポート体制構築につきお考えをおうかがいいたします。立体交差事業が完成したときに、協力いただいたすべたの方々が「大田区に協力してよかった」と思えるような、工夫と心ある立ち退き支援を強く要望いたします。
 
 最後に、大田区の物品購入、役務提供、工事などについておうかがいいたします。長引く不況も影響してか、区内中小企業者や、創業間もない方々から「区の仕事が欲しい」とのご相談を受けます。どうしたらいいか、と経理管財課にうかがうと、区内での小さな発注で実績をつけたり、他の自治体で実績を積んで欲しい、と言われます。

 ところが、所謂、赤紙発注といわれる小規模なものも、既存業者が持っていってしまうし、また、他の自治体での実績は、大田区と同様の理由でとる事が出来ません。これでは、中小企業育成といっても、既存業者保護にしかなりえません。
 
 そこで、新規参入業者や創業者につき、赤紙発注の極一部を「新規枠」として設定することを提案いたします。そのことにより、新規創業を促したり、転業新規参入も可能になり、結果、区内既存業者の競争力をつけることにも寄与するものと思われます。お考えをお伺いいたします。

 あと1ケ月で、わが申年も終わり、新しい鳥年がやってまいります。私の猿知恵を参考に、大きくはばたく鳥年の大田区政であるよう期待し、私の質問を終わります。


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