いぬぶし秀一の激辛活動日誌

2004年01月18日(日) いぬぶし秀一、厨房に立つ

 随分前の日記に書いたと思うが、一昨年、20年以上経営していた旅行会社を、ある大手旅行会社の理不尽な要求により廃業して以来、議員専業で数ヶ月過ごした。ところが、リース会社から、個人保証していたリース料のため、議員報酬を全額差し押さえをくってしまった。さてさて、困った、ということで、ファーストフ−ド風居酒屋のおやじを始めた。

 これは、以前、明治サンテオレという、ハンバーガー店のFCを2店舗経営していたことがあり、その業態と、居酒屋をミックスしたもので、ほとんどのメニューは280円以内という格安。

 メニュー開発には、妻が協力してくれ、メニューのプリントは娘が、皿洗いは長男が、そして、なんと、料理は、この私が作っていたのだ。それでも、人間必死になれば、なんとかなるもので、それなりの売り上げを確保し、再建への一歩となった。現在では、このお店は、リストラになった方を店長にして、私が厨房にたつことは、ほとんどないが、あの冬空のもと、一杯140円のチュウハイを作った経験は、得がたいものだった。

 現場第一主義、すべては能書きではなく、現場から。さらには、どんな苦境になっても、笑顔は無料。そんなことを、居酒屋の経営から学んだ。

 その後、昨年2月には、苦境に陥った洋食レストランの代替経営者を探して欲しい、との要望に、結局、探しきれずに、友人の出資と協力を仰いで、この店も引き継ぐことになった。

 流石に、洋食のシェフは出来ないので、いきおい「能書き」だけになる。すると、職人であるショフからすれば「何言ってんだ、素人のくせに」という気持ちが、必ず出てくる。その奢りが怖いことは、なかなか職人気質には理解されない。本当は、この「素人」の意見が、最もお客様の意見に近いのだが‥

 我が、引き継いだ店も、その悪循環を開始しようとしていた。コンサルを入れたものの、人の気持ちは、そう簡単に変わるものではない。そこで、日曜日に私が厨房に入ることにした。

 居酒屋が出来たのだから、洋食だってなんとかなるだろう。と、先週からコックの格好をして厨房にたつ。いやはや、見えないことが現場に入ると見えてくる、見えてくる。従業員の、外面ではない一面がよく見える。

 何をやったか?ハンバーグの仕込み(うまいもんですよ!)、ニンニクのスライス、イカ墨ピザの仕込み、お掃除、チラシ配り等等。現場に入れば、普段は社長でも、一キッチンヘルパーに徹するべきだと思うから、言いたいことは我慢してシェフの指示に従う。

 慣れない仕事は、結構きついけれど、「お客様第一主義」の原点を、今一度思い起こしてくれる。小さなニンニクをスライスしながら、「このニンニクを美味しく食べていただけますように」と、念じながら作業するのだ。

 お役人でも、経営者でも、議員でも経験を積むに従って、段々と現場から乖離してしまうことが往々にしてある。結果、現場の人間は、管理職と相反する行動を取り、組織がおかしくなる。

 実るほど首を垂れる稲穂かな。すべからく、人間こうなりたいものだ。その意味でも、厨房は、修練の場でもある。

 あ、痛い!しまった、オニオンスライスしていて、フィンガースライスしちまった!


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