雪さんすきすき日記
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2020年12月10日(木) 「They Bleed Pixels」のこと

 「They Bleed Pixels」(Spooky Squid Games)の感想を。
 問題のある女の子のための「ラフカディオアカデミー」に入学した少女が、図書館で手にした魔導書の呪いにより、夜な夜な両腕が鉤爪に変化して異界で異形に襲われる悪夢を見る羽目になってしまう。魔導書を見つけ出して呪いを打ち砕かなければ、悪夢が現実となってしまう。

 両腕が変化した鉤爪を武器として異界を戦い抜く2Dアクションゲーム。物語にはクトゥルフ神話の要素が組み込まれている。
 操作は移動と攻撃、ジャンプ。攻撃は方向入力と長押しの組み合わせにより多様に変化する。各面とも少女が夜な夜な見る悪夢を表しており、異形を倒しながら先に進み、どこかに存在する魔導書に到達するとクリアとなる。体力制で、3回ダメージを受けたり、即死の罠に触れるとミスとなりチェックポイントから再開。敵を倒したりアイテムを入手することでゲージが溜まり、ゲージが一杯になった状態で敵の妨害が無い場所で静止するとチェックポイントを作成できる。
 敵を倒すとコンボが増え、得点に倍率がかかる。さらに、敵を串刺しにしたり回転のこぎりに巻き込んだりと残酷な方法で倒すと倍率がさらに倍になる。

 非常に高難易度のアクションゲームで、初見の面をクリアするのに1時間以上掛かったことも珍しくなかった。敵の種類も罠の種類もそれほど多くないのに、その組み合わせがプレイヤーを苦しめる意図に満ち溢れており、簡単に先には行かせないという製作者の執念を至る場所で感じることができた。
 地形に関しては、即死の罠の上をジャンプで飛び越えて小さな足場にしがみ付いたり、回転のこぎりの間を針の穴を通すように移動したりとまるで容赦なし。敵も、特にナイフを持ったナイフ・インプと、タコのような姿の敵(名称不明)が体が小さい上に機動力が高く大きな脅威であり、複数に囲まれると翻弄されてダメージを受け続けてそのままミスにつながることが少なく、実際にそういう登場の仕方が多かった。
 さらに、操作も方向入力と長押しによる変化を適切に使い分けないと敵に打ち勝つことができないような調整となっている。敵をまとめるキックは方向入力無しで攻撃だが、うっかり方向入力をしてしまうとただの攻撃になって反撃を喰らったり、攻撃を長押しで敵を蹴り上げる際も長押しの時間が足りなくて単なるキックに変化してしまったりと、それぞれの操作を正確に出すには細心の注意を持って入力をしなければならなかった。操作の誤爆でミスをした回数は数えきれないほどである。

 というわけで、初見の面をクリアするころには満身創痍で疲労困憊であったが、うっかりスコアアタックとタイムアタックの実績に挑戦してみたところ、この作品を見る目が大きく変化した。どちらも初見クリア時の時点では非常に高い目標に思えたのだが、スコアアタックに関してはしっかりと稼ぎどころやコンボの繋ぎどころが用意してあり、そこを押さえることで初見プレイ時では想像もつかないほど面白いようにスコアが上昇していった。また、タイムアタックも前半の面はノーミス必須ながらも近道が用意してあり、後半の面は数回のミスなら許容される程度の余裕が持たされており、その慈悲によって心が折られることなく挑戦することができた。そして、これらの実績に挑戦すると、各面ともに敵や仕掛けの配置に関して、プレイヤーを単に苦しめることを目的とした乱暴で理不尽な場面がほとんどなく、高難易度ながらも緻密で正確な操作をもって挑めばしっかりと大きな手応えとなって返ってくるようにとてつもなく丁寧に調整されていることを身をもって感じることができて、感心させられること頻りであった。今では、これほど難易度が丁寧に調整されたアクションゲームには滅多にお目にかかれないと心底思っている次第である。この調整の妙にすっかり魅了されてしまい、それまでこの苦行を早く終わらせたいという印象が、高難易度の実績大歓迎に一変した。
 ただし、この魅力を理解するには、やはり相応の技量が必要なのも事実である。特にアクションゲーム初心者には理不尽な難易度の作品と捉えられても仕方ない。楽しむための敷居はかなり高いが、そこを超えると非常に奥深い楽しさが待ち構えていた作品であった。

 物語の元になっているクトゥルフ神話については知識が浅いので、どのように関わっているのかは理解が及ばなかった。ただ、悪夢から目覚める度に枕元に現れる魔導書を埋めたり沈めたり焼いたりするのは、最早ホラーを通り越してギャグの域であった。あと、残虐描写も作品の売りのようだが、解像度の低いドット絵なので血しぶきが上がったところでおぞましさはほとんど感じなかった。むしろ、残虐描写が高得点につながるので、積極的に敵を串刺しにしたり回転のこぎりに蹴り込んだりしていた。

 52時間ほどで本編の全実績を達成。現在、5面ほどあるボーナスステージの実績に挑戦中だが、こちらは本編ほど難易度は高くなさそうで落ち着いて挑戦している。
 本編の実績に挑戦中は「あーなんでこんなめんどくさいことやってるんだろう不毛すぎる時間がもったいない他のゲームプレイした方が遥かに有意義なのに早くつながれめんどくさいめんどくさいめんどくさい」という思いで一杯だったのが、達成すると「うむ、良かった」に変化するところは、やはり絶妙な調整の成せる業なのであろう。


氷室 万寿 |MAIL
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