パラダイムチェンジ

2005年04月22日(金) 中国オタク化計画

以下の話は、単なる思いつきの与太話である。
前回のエントリーを書いた後、なぜ私を含めた現代の若者は、政治的に
盛り上がらないのか考えてみた。

さすがに生まれたか生まれてないかの頃の学生運動の事はよくわから
ないが、一つのヒントになりそうな事がある。
私が中学校に入る2、3年前、日本全国の中学校で「校内暴力」の嵐が
吹き荒れた。
TVドラマ「3年B組金八先生」第2シリーズの「くさったミカンの方程式」
のようなことが、多くの中学校で起きていたのである。

そして今や高級住宅街扱いされている、私の地元の世田谷区の片田舎も
例外ではなく、小学校5、6年の頃はランドセルを背負いながら、「今度
は○○中が荒れたらしいぜ」なんて噂話をしていたのである。

しかしその後、私が中学に入学する頃には多少の緊張感はまだ残って
いたが、いわゆる「校内暴力ブーム」はすっかり治まっていた。
たった2、3年の違いなのに、である。

校内暴力がなくなった理由について、当時の大人たちは「学校の管理
教育が功を奏したからだ」なんて胸を張っていたけれど、理由はそれ
だけではないと思う。

今、どうして私たち前後の世代から校内暴力が無くなったのか考えて
みると、それは「オタク化」したからなんじゃないのかな、と思うの
である。

ただし、私たちが中坊だった頃にはまだ、オタクという言葉は浸透して
いなかったし、またその言葉は一部のコアなアニメファンを指した言葉
だった。
だから別の言い方をすれば、オタクが生まれてくるほど、社会が急速に
「情報社会化」された時代だったと思うのだ。

皆が情報誌「ぴあ」「シティロード」を手にとり、「POPEYE」「anan」
などの若者ライフスタイル提唱マガジンが定着し、DCブランドブームが
始まり、レンタルレコード店が急速に広まった時代。
そういえばファミコンが普及しだしたのも、この頃である。

そのことによって何が一番変わったのかといえば、腕力にものを言わせ
ていた番長より、より多くの情報を持っている奴の方が尊敬される時代
になった、という事である。
すなわち、当時の中学生の意識が「身体」から「情報化=脳化」が
始まったのが、ちょうど80年代の初めだったのかもしれない。

その結果として皆一致団結して社会を変革しようという運動が一切
盛り上がらなくなったのか、それともそういう運動に限界を感じたり、
魅力を感じなくなったからなのかはわからないが、政治的に盛り上がる
ことは、一部を除いてはほとんど見られなくなった。

私が大学生の頃まで、一部の大学に立て看板は残っていたが、そんな
事よりも皆どの授業が簡単に「優」をくれるのか、という情報を手に
することに必死だったのである。

そして社会が高度情報社会化した結果、一人一人が消費者に解体され、
皆で共同幻想に盛り上がることは少なくなったんじゃないのかな、と
思うのだ。
だって、趣味嗜好が全く違う相手と盛り上がることさえ難しい世の中に
なってしまったわけだし。

それは同じような刺激的なネットの書き込みに対して、かたや中国では
何万人もの動員がなされるのに対し、日本のネット右翼がいかに刺激的
な文章を書こうとも、そこで動員には結びつかず、実際の行動にはなっ
ていかないこととも、対応しているような気がするのだ。

また、日本−韓国間の「竹島−独島」問題についても、韓国で反日デモ
があっても中国ほどには韓国の若者が盛り上がっていないように見える
のは、韓国社会も相当に「情報化=オタク化」が進んでいるからなのか
もしれない。
まあ本当の所はどうなのかは知らないんだけど。


という事で表題の「中国で反日デモをやめさせる方法」の一つは、
「中国の若者をオタク化」してしまえばいいんじゃないかと思うのだ。
つまり、「燃え」より「萌え」である。

でも、おそらくは上海などの大都会は近いうちにそうなっていくような
気もするのである。
だってもうすでに、上海にはニートも引きこもりもいるらしいし。

だから彼らの割合が一定以上に増えていけば、少なくとも大都会でデモ
は起こりにくくなるのではないか。

そしてそのことにより、一大「萌え産業輸出国」である日本にとっては
日本の何倍もの大きさのマーケットを手にする事ができるのかもしれ
ない。
ただしコピー天国の中国のことだから、思ったほどの利益は上げられな
いのかもしれないけれど。

でもおそらくは中国政府にとっても、若者たちを「オタク化=情報格差
社会化」してしまった方が、政治的に盛り上がることはなくなり、
一人一人の消費主体に解体することにより、富裕層の継続的な欲望を
刺激し、内需拡大による経済発展が行えるという「ポスト資本主義社会
化」されるということになり。
そうすれば少なくとも都市部においては反政府活動を押さえ込むコスト
も安くできるわけだし。

という事で、何かいい事ずくめに見える「中国オタク化計画」である
が、一つ問題があるとすれば、社会全体がオタク化=情報化していく
ための条件として、社会全体にもうすでにモノが行き渡ってしまい、
なおかつある程度の経済的余裕がなければならない、という事であり。

だって、人間食うや食わずでオタク化するのは難しいわけだし。
パンより娯楽を求める位社会が爛熟しなければ、なかなかオタク化は
難しいのかもしれない。

中国国内に都会と田舎の、富める者と貧しい者の差という対立構造を
抱え込む限り、社会全体がオタク化するのは難しいだろうし、もし仮に
そうなった時には、中国が人件費の安さという利点をなくすだけでは
なく、日本はエネルギーや食糧問題で中国とすさまじいパイの奪い合い
をしなくてはいけない可能性もあるのである。

また最悪の場合、彼らが情報化しても反日という共同幻想を手から離さ
ず、そういうときだけ一つにまとまり続ける可能性もあるわけだ。
人間が「脳化」するということは、そういうリスクもあるのかもしれ
ない。

でもおそらく、今後中国がオタク化=脳化していく潮流は止まらないん
じゃないのかな、と思うのだ。


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