今回は映画ネタ。見てきたのは映画「レイ」。 昨年2004年6月に他界した、レイチャールズの自伝的映画。 亡くなる寸前までレイチャールズ本人が監修に立会い、主役の ジェイミーフォックスもレイ本人の指名で決まったらしい。
さて、この映画を一言でいうなら、「見るなら絶対劇場で見るべき」 である。 つまりそれほどまでに音楽シーンの迫力があるのである。 それは私がまるでタイムマシーンに乗って時代をさかのぼり、レイ本人 が演奏しているライブ会場にもぐりこんでしまったかのような印象さえ うける。
そしてもう一つ驚かされたのは、彼の大ヒットナンバーの歌詞が、 そのまま彼の人生とぴったり重なり合うこと。 レイチャールズというと、なんか懐メロってイメージがあったんだけど (失礼)、ちゃんと歌詞を聞いているとその歌の端々に彼の思いがのって いることに心を打たれる。
だって、不倫でつきあっているバックコーラスの彼女との別れ際に、 「もう二度と返ってくんな」(Hit The Road Jack)とか歌わせて いるんだよ(多分に映画の脚色はあるのかもしれないけれど)?
「ジョージア・オン・マイマインド」にしても、結果的にこの歌にこめら れた思いっていうのはすごいんだなあ、と思うし。その辺は実際に映画 をみてもらうとして。
この映画の中のレイは、人生に成功したタフさとその裏返しの弱い部分 を余すことなく私たちに見せてくれる。 そしてその背景には、彼の幼児体験と目が見えないことのハンデと、 ドラッグや女性がそばにないといられないというさびしさが潜んでいる とこの映画は語っている。
でも、そんなレイを内側で支えていたのは二人の女性だと思う。 強い視線を持ち、決してレイを甘やかさず、働きすぎで死んでいった 母親と、レイに対して唯一?きつい事を言うことのできた妻、ビー。 特に奥さんに関しては、彼女がいたからこそ、レイはなんとかバランス をとってこられたのかもしれない。 だからちゃんとした家庭生活はできなくても、彼女とは別れなかった のかもしれない。
この映画の中で特に印象に残ったシーンは、 レイ役のジェイミーフォックスが照れながら?女性の手首をさわって 美人かどうかを判断するシーン(レイ本人がそうやって判断していた らしい)と、今までずーっと世話になっていたアトランティック レコードから去るとき、今まで一心同体で頑張ってきたプロデューサー アーメットとの別れのシーン。
この映画に出てくる登場人物すべてがまるで本物もそうであったかの ような迫力と、説得力に満ちた演技をしていると思うのだ。 つまり本物になりきっているように見えるのである。 ジェイミーフォックスにいたっては、ピアノの演奏も含めてまるで レイチャールズが乗り移ったかのようであるし。
もしも、彼がこの映画の完成まで生きていたとしても、盲目の彼に この映画を観る事はできなかったかもしれない。でも、彼の魂は確実に このフィルムの上で息づいていると思うのである。
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