今回は映画ネタ。見に行ったのは「隠し剣 鬼の爪」。 山田洋次監督、主演永瀬正敏、松たか子のこの映画。 一言でいうなら、「ラストサムライの100倍面白い」である。
ラストサムライも、昔の日本の情景を忠実に再現しようとしていた と思うんだけど、やはりどこか借りてきた印象があったのに対して、 この「隠し剣〜」では、さらにその時代考証がしっかりとして、板に ついている感じとでもいえばいいんだろうか。
たとえば、宮崎アニメを見たときに、ストーリーテラーの宮崎駿が この登場人物は何を食べ、どんな生活をしているのかという所から 物語を組み立てていくのと同様に、細部にまできちんと目のゆきと どいた映画になっていると思うのである。
これは予算の問題もあるだろうけど、TV時代劇ではこうはいかない だろう。 今まで見てきた時代劇が、時代劇(のようなもの)なんだなあ、と思い 知らされるのである。
物語のクライマックスにあたる永瀬正敏と小沢征悦の殺陣は、さすが にザ・時代劇の真田広之にはかなうべくもないが、前作にも登場した 田中泯と永瀬の師弟稽古のくだりは、それだけでご飯をお代わりした くなるようないいシーンだったと思う。
物語の登場人物としては、嫌味な親戚の大叔父、ちょっとボケたおばあ ちゃん、ちょっと頭の足りない小者(従者)、ききわけのない上司あたり は、前作の「たそがれ清兵衛」とかぶるが、そこは山田洋次の様式美の 世界だともいえるわけで。
それに加え吉岡秀隆、田畑智子の夫婦などの多彩な脇役、更に魅力を 増した悪役などにより、物語の深みが増していると思う。 それになにより、松たか子の働き者っぷりがかわいくていいんである。
こういう水準の時代劇が、今後もたくさん見られたら幸せなのになー という作品でした。 もう一回映画館に見に行ってもいいかもしれない。
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