パラダイムチェンジ

2004年10月05日(火) F1でBARホンダが強いわけ

Number612号は、F1日本GP直前特集である。
スポーツ雑誌Numberで、F1が巻頭特集になるのは、久々なんじゃない
のかな。
そしてその人気を支えているのが、ホンダエンジンを搭載するBARチー
ムと、そこに所属する日本人ドライバー、佐藤琢磨の好調ぶりだろう。

佐藤琢磨は、3年前のイギリスF3チャンピオンであり、昨年はテスト
ドライバーとして過ごし、今年よりF1に本格復帰、マシントラブル、
リタイアも多いものの、アメリカGPでは日本人としては14年ぶりに
3位表彰台に上り、その走りのスタイルのファンも多い注目株なので
ある。

そんなBARホンダチームの好調ぶりについて、ホンダの福井威夫社長の
インタビューが面白い。
以下、少しだけ引用すると、


海老沢 なるほど、それでわかりました。F1というのは技術力だけで
    勝てる世界じゃありませんからね。たとえば、いい車体を作ら
    せるにしても、結局はそういう交渉の力がものをいう。本気で
    それをやりはじめたという事なんですね。

福井  そのとおりです。一番大事なのは、価値観が同じになること
    なんですよ。1年目に1位は無理でも、3年目に1位を争うように
    ならなきゃしょうがないだろうとホンダは思っていました。
    だから、その目標を共有しようというところから始めたんです
    が、2年目、3年目になって、これはどうやら共有できていない
    ということがわかったわけです。

    それで散々議論をして。さっき言ったような価値観が一緒に
    ならない限り、もう来年で終わりですとチーム側にもいいま
    した。もうホンダは撤退しますと。そうすると、じゃあどう
    すればいいんだと聞いてくるから、(3本指をだして)これだと

海老沢 トップスリー?

福井  トップスリーです。そうすると彼らは、それはインポッシブル
    だと言うんだよね。だけどこっちとしては、インポッシブルも
    ヘチマもあるかと。そうならなきゃやめるぞと。結局、追い詰
    めたわけです。タイヤも、ドライバーもBARで選んでいいと。
    自分たちで選ぶということは、言い訳できないということです
    からね。

    言い訳なしで追い詰めて、それでようやく目標というか、価値
    観を共有できた。そこからスタートしたのが今年なんです。そ
    れで2戦目にバトンが表彰台に上った。

    去年に比べると、そういう意識の違いは大きいでしょうね。こ
    れまでは3位になって大喜びしているチームだったのが、やっ
    と3位になって悔しがるチームになりました(笑)。(略)

海老沢 それはますますすばらしい。実際、ヨーロッパグランプリなん
    かの琢磨の走りはすごかったですからね。2位を走っていたバ
    リチェロを抜こうとコーナーに突っ込んで弾き飛ばされた―。
    あのとき3位になれるチャンスがあったのにわざわざ突っ込ん
    で行ってフイにしたのか、というようなことを言っている人が
    結構いたんですよ。信じられなかったですね。わかってないな
    と。

福井  私もそう思います。あの走りはよくやったと思いますよ。

海老沢 あそこで3位を狙いに行くようでは第一級のF1ドライバーにな
    る資格はない。

福井  そうなんです。私も現場でそれを言い続けています。もちろん
    ポイントを獲ることも大事ですから、最後は自分の判断でどう
    するか決める。でも、琢磨は唯一のチャンスでも狙っていくん
    だという姿勢を見せましたしね。



ここで興味深かったのは、ホンダ側があくまで勝利を望む姿勢を崩さな
かったことが、トップ3以内は不可能だったと思っていたイギリスの
BARF1チームを変えたということと、もう一つ、最後は自分の判断でど
うするか決める、という事をドライバーの佐藤琢磨にも要求していたと
いうことだろう。

そして実は同じ事を、現場のプロジェクトリーダーも語っているので
ある。


「ホンダ流のやり方で取り組んだ結果です」と、ホンダF1プロジェクト
リーダーの木内健雄は言う。"ホンダ流のやり方"。懐かしい言葉だ。
これまで本田技研工業トップの座に就いて来た人達の多くは、若い頃に
レースを体験してきた。(略)彼等がレース時代を振り返って頻繁に口に
するのが、「ホンダ流」という言葉である。では、「ホンダ流」とは一体
なんだろう。

「がむしゃらにやれ、ということかもしれません。周りや上司の顔色を
見ないで、自分のやることに信念を持って突き進め、ということでしょ
う」と、木内。木内は第2期F1グランプリ挑戦で、アイルトン・セナの
エンジニアを務めたベテラン技術者だ。エンジンのエキスパートでも
ある彼だが、現在は第3期F1プロジェクトの総帥として、"ホンダ流"の
やり方を貫き、結果を残し始めた。



結局は、自分の信念を貫き、最終的な判断は自分が下すと責任者が自覚
しているかどうかっていうのが大きいんだろうなあ、と思うのだ。
もちろん、同じように自分の信念を貫き、最終的な判断を自分で下す人
全てが成功をおさめているわけではない。

そこには、間違った信念や判断も沢山あると思う。
でも、成功を自分の元に呼び込むためには、まずは自分の信念をつくる
ということは大事なんだと思うのである。そしてそれがどこか間違って
いるんだったら、そこで修正していけばいいんだし。

そして、同じ雑誌の中で似たような事を、今年からNBAのフェニックス
サンズに所属するバスケットボールプレイヤー、田臥勇太も、NIKEの
広告上で語っているのである。
以下、引用して終わる。


昨年、アメリカではプレイできないという通告はショックでした。
でもすぐにアタマを切り替えないとだめだった。
でも「絶対戻って来てやる」と思った。だから落とされてすぐ練習をはじめた。
日本に帰って来てこちらでトレーニングやってきて
一日一日を頑張んなきゃいけないと自分に言い聞かせた。

自分のこだわっているとこなんですけど、この日が大事だからこの日は
一生懸命やろうではなくて、やっぱり毎日おなじように努力し続ける
ことが自分のテーマ。
「結果より過程が大事」ってずっと思っている。やれば結果はついてくる
ということが、自分に対して証明できたことはうれしい。間違ってなか
ったんだと思う。
まわりからは、けなされ「無理だ」って、言われてた。

でも、他人に自分の限界を決めさせたくなかった。

だから、そこは、耳を塞いだ。強い信念を持って、自分を信じてやるだ
けだった。
小さいからディフェンスの面では、一生懸命プレッシャーかけてやんな
きゃと思ったんだけど、去年はシュートいくのが消極的だった。今年は
それが吹っ切れた。
というかシュートにいかないと、ダメなんです。

身長のことには、こだわらなくなった。身長うんぬんより
「どうやってコートで生きてゆくのか」というのが、わかった。
デンバーで僕より身長の低いポイントガードともプレイできたのも
勉強になった。いろんなヒントが得られた。

大事なのは、身長ではなく、気持ちの大きさだった。

彼らは自信を持ってやっていた。見習わなければいけないなという点
だった。
いまの目標は、ユニフォーム着てワンシーズンプレイすること。
アメリカのプロバスケット選手になることが夢だった。
いざなってみると今度は、次を考えなきゃって、気持ちになって来た。
だから「終わりはないな」と実感しました。
僕はとにかく日本人第一号になりたかった。あとに続くみんなは、

田臥ができたんだから、自分もできると思ってほしい。

どんどんあとから続いて、とにかく日本のバスケットのレベルを上げる
ためのこれはひとつの手段だと思います。一緒にがんばろう。僕もがん
ばるから。

先に、アメリカ、行ってます。田臥勇太


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